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政略結婚なんてお断り!
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利希は呆然としている。取引先の社長が唐突に発した言葉の意味を理解できないのだ。
希美は友光の表情を観察した。嘘をついているようには見えない。
しかし、母からそのような話は一度も聞いたことがないし、父も同様のはずだ。
親睦会の和やかさから一転、不穏なムードになる。沈黙を破ったのは、さっきから一人笑っている幸一だった。
「本当だそうですよ、北城さん。僕も初めて聞いた時は驚きました」
父親の隣でぺらぺらと喋り出した。
「二人は芸術や文学を語り合うサークルに所属していたそうです。好きな作家が共通したり、とても気が合ったとか。美術館や博物館でデートするうち、交際に発展したんですよね?」
「おいおい、よさないか幸一。昔のこととはいえ、北城さんがお気を悪くなされる」
と言いながら友光はニヤリとして、まんざらでもない様子。挑戦的な笑みだった。
「そ、そうなんですか。は、ははは……世間は狭いですなあ」
利希は友光の話を理解したものの相当驚いたようで、困惑を隠しきれずにいる。希美には、その反応が意外だった。
「仕事には関係の無い話ゆえ黙っていたのですが、お嬢さんにお会いして、懐かしさが込み上げてきました。希美さんは一見お父さん似のようで、麗子さんに実によく似ておられる。そこいらの女優やモデルなぞ話にならないほど、お美しい」
友光がまぶしげに見つめてくる。彼の潤んだ瞳には母が映っているのだと、希美には分かった。
しかし、母に恋人がいたなど、やはり解せない。娘時代は内気で、男性とお付き合いの経験も無いまま父と見合い結婚したと聞いている。
ましてや友光のような洋風顔、気障なタイプはあまり好きではないと思われるが。
「そこで、私は良いことを閃いたのです」
「はあ」
利希は心ここにあらずという様子で、妻の元カレを眺める。まだ混乱しているのかもしれない。
「どうでしょう、北城さん。せっかくのご縁です。息子と希美さんは同年代の独身同士。後日あらためて、お見合いしてみると言うのは」
「……」
利希は返事ができずにいる。希美も口を開けたまま、その場で固まった。
今、何と仰いました?
お見合いとか、聞こえましたけど
誰と誰が――
ガタンと音がした。壮二が立ち上がり、細野親子に強い視線を向けている。
希美はハッとして、小さな声でたしなめた。
「ダメよ、座って」
壮二は仕方ないように腰を下ろす。
彼は希美以上に動揺したようだ。しかし、その彼よりも反応したのが利希である。
「お、お見合いですと?」
椅子を立ち、妻の元カレを見下ろす。これまでになく険しい表情だった。
緊迫したムードの中、幸一がニヤニヤしながら希美にウインクを投げた。ゾッとした希美は、壮二のハンカチをぎゅっと握りしめる。
「希美さん……」
「大丈夫よ」
心配して声をかける壮二に、短く応えた。
(ここで私が取り乱してはいけない。そんなこと、絶対にあり得ないんだから)
「ちょっとお待ちください、細野さん。それこそ仕事とは無関係な話ではありませんか?」
ピリピリしながらも、利希が冷静に返事をした。
すると友光も椅子を立ち、何ごとか考えるふうに顎をなぜる。
「……いや、これは仕事に関わることです。なぜなら、二人が結婚し両家が親戚となれば、より強固な信頼関係を結べるでしょう。悪い話では無いと思いませんか?」
希美は友光の表情を観察した。嘘をついているようには見えない。
しかし、母からそのような話は一度も聞いたことがないし、父も同様のはずだ。
親睦会の和やかさから一転、不穏なムードになる。沈黙を破ったのは、さっきから一人笑っている幸一だった。
「本当だそうですよ、北城さん。僕も初めて聞いた時は驚きました」
父親の隣でぺらぺらと喋り出した。
「二人は芸術や文学を語り合うサークルに所属していたそうです。好きな作家が共通したり、とても気が合ったとか。美術館や博物館でデートするうち、交際に発展したんですよね?」
「おいおい、よさないか幸一。昔のこととはいえ、北城さんがお気を悪くなされる」
と言いながら友光はニヤリとして、まんざらでもない様子。挑戦的な笑みだった。
「そ、そうなんですか。は、ははは……世間は狭いですなあ」
利希は友光の話を理解したものの相当驚いたようで、困惑を隠しきれずにいる。希美には、その反応が意外だった。
「仕事には関係の無い話ゆえ黙っていたのですが、お嬢さんにお会いして、懐かしさが込み上げてきました。希美さんは一見お父さん似のようで、麗子さんに実によく似ておられる。そこいらの女優やモデルなぞ話にならないほど、お美しい」
友光がまぶしげに見つめてくる。彼の潤んだ瞳には母が映っているのだと、希美には分かった。
しかし、母に恋人がいたなど、やはり解せない。娘時代は内気で、男性とお付き合いの経験も無いまま父と見合い結婚したと聞いている。
ましてや友光のような洋風顔、気障なタイプはあまり好きではないと思われるが。
「そこで、私は良いことを閃いたのです」
「はあ」
利希は心ここにあらずという様子で、妻の元カレを眺める。まだ混乱しているのかもしれない。
「どうでしょう、北城さん。せっかくのご縁です。息子と希美さんは同年代の独身同士。後日あらためて、お見合いしてみると言うのは」
「……」
利希は返事ができずにいる。希美も口を開けたまま、その場で固まった。
今、何と仰いました?
お見合いとか、聞こえましたけど
誰と誰が――
ガタンと音がした。壮二が立ち上がり、細野親子に強い視線を向けている。
希美はハッとして、小さな声でたしなめた。
「ダメよ、座って」
壮二は仕方ないように腰を下ろす。
彼は希美以上に動揺したようだ。しかし、その彼よりも反応したのが利希である。
「お、お見合いですと?」
椅子を立ち、妻の元カレを見下ろす。これまでになく険しい表情だった。
緊迫したムードの中、幸一がニヤニヤしながら希美にウインクを投げた。ゾッとした希美は、壮二のハンカチをぎゅっと握りしめる。
「希美さん……」
「大丈夫よ」
心配して声をかける壮二に、短く応えた。
(ここで私が取り乱してはいけない。そんなこと、絶対にあり得ないんだから)
「ちょっとお待ちください、細野さん。それこそ仕事とは無関係な話ではありませんか?」
ピリピリしながらも、利希が冷静に返事をした。
すると友光も椅子を立ち、何ごとか考えるふうに顎をなぜる。
「……いや、これは仕事に関わることです。なぜなら、二人が結婚し両家が親戚となれば、より強固な信頼関係を結べるでしょう。悪い話では無いと思いませんか?」
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