夫のつとめ

藤谷 郁

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親公認の二人

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 話は決まった。
 利希は臼井秘書を呼ぶと車を用意するよう言いつけ、帰り支度をするため部屋に引き揚げていく。

「お前達も今日は帰ってよし。仕事については明日からだ」
「はい、社長」

 二人が声を合わせて返事をすると、利希は後ろ姿のまま肩をすくめた。



 駐車場に戻って車の前に立つと、希美はホッと息をついて壮二と向き合う。彼のリラックスした顔を見て、無事に終わったのだという実感が湧いてきた。

「まったく、どうなることかと思った。でも結果は上々よ。デキる営業部員の演技も完璧だったし、あなたって意外な才能の持ち主ね」
「いえ、そんな」

 壮二は恐縮した。
 もしかしたら、こういった素直な反応がよかったのかもしれない。
 調子を狂わされながらも、利希は壮二を信用し始めている。希美がそうであるように。

「とにかく、これで仕事は終わりよ。お疲れ様でした」
「はい、希美さんも」

 壮二は嬉しそうに笑うと、じっと見つめてきた。さっきまでとは少し違う目つきになのを、希美は敏感に感じ取る。
 仕事が終わったということは、ここから先はフリータイム。どこへ行こうと、何をしようと二人の自由であり、誰にじゃまされることもない。

 何しろ親公認の、『結婚を前提にした恋人』になったのだから。

「え……っと、まだ空は明るいわねえ」
「はい。午後三時を回ったばかりです」

 壮二の口調は弾んでいる。分かりやすすぎて、それとなく誘うつもりの希美は、噴き出しそうになった。
 ここに来るまで、圧迫面接をうまく切り抜けられるかハラハラしてたのに、逆に事態は好転した。壮二を運転手にと指名した利希に、今は感謝したい気分だ。

「壮二、これからの予定は?」
「何もありません。僕は自由の身です」

 あなたの自由にしてくださいと、希美には聞こえた。
 熱っぽい眼差しが、昨夜の交わりを彷彿とさせる。

「それじゃ、帰りがてらドライブデートしましょ。きれいな景色を見て、美味しいものでも食べて、それから……」

 唇を閉じて、あとの言葉は呑み込む。鈍感な壮二にも、ここは察してほしい。

「僕も、そのプランに賛成です」

 今すぐにでも、この野暮なスーツを脱がせて、逞しくも美しいカラダを堪能したい。
 怖いくらいの衝動に駆られ、希美は一人で熱くなった。
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