66 / 179
親公認の二人
2
しおりを挟む
話は決まった。
利希は臼井秘書を呼ぶと車を用意するよう言いつけ、帰り支度をするため部屋に引き揚げていく。
「お前達も今日は帰ってよし。仕事については明日からだ」
「はい、社長」
二人が声を合わせて返事をすると、利希は後ろ姿のまま肩をすくめた。
駐車場に戻って車の前に立つと、希美はホッと息をついて壮二と向き合う。彼のリラックスした顔を見て、無事に終わったのだという実感が湧いてきた。
「まったく、どうなることかと思った。でも結果は上々よ。デキる営業部員の演技も完璧だったし、あなたって意外な才能の持ち主ね」
「いえ、そんな」
壮二は恐縮した。
もしかしたら、こういった素直な反応がよかったのかもしれない。
調子を狂わされながらも、利希は壮二を信用し始めている。希美がそうであるように。
「とにかく、これで仕事は終わりよ。お疲れ様でした」
「はい、希美さんも」
壮二は嬉しそうに笑うと、じっと見つめてきた。さっきまでとは少し違う目つきになのを、希美は敏感に感じ取る。
仕事が終わったということは、ここから先はフリータイム。どこへ行こうと、何をしようと二人の自由であり、誰にじゃまされることもない。
何しろ親公認の、『結婚を前提にした恋人』になったのだから。
「え……っと、まだ空は明るいわねえ」
「はい。午後三時を回ったばかりです」
壮二の口調は弾んでいる。分かりやすすぎて、それとなく誘うつもりの希美は、噴き出しそうになった。
ここに来るまで、圧迫面接をうまく切り抜けられるかハラハラしてたのに、逆に事態は好転した。壮二を運転手にと指名した利希に、今は感謝したい気分だ。
「壮二、これからの予定は?」
「何もありません。僕は自由の身です」
あなたの自由にしてくださいと、希美には聞こえた。
熱っぽい眼差しが、昨夜の交わりを彷彿とさせる。
「それじゃ、帰りがてらドライブデートしましょ。きれいな景色を見て、美味しいものでも食べて、それから……」
唇を閉じて、あとの言葉は呑み込む。鈍感な壮二にも、ここは察してほしい。
「僕も、そのプランに賛成です」
今すぐにでも、この野暮なスーツを脱がせて、逞しくも美しいカラダを堪能したい。
怖いくらいの衝動に駆られ、希美は一人で熱くなった。
利希は臼井秘書を呼ぶと車を用意するよう言いつけ、帰り支度をするため部屋に引き揚げていく。
「お前達も今日は帰ってよし。仕事については明日からだ」
「はい、社長」
二人が声を合わせて返事をすると、利希は後ろ姿のまま肩をすくめた。
駐車場に戻って車の前に立つと、希美はホッと息をついて壮二と向き合う。彼のリラックスした顔を見て、無事に終わったのだという実感が湧いてきた。
「まったく、どうなることかと思った。でも結果は上々よ。デキる営業部員の演技も完璧だったし、あなたって意外な才能の持ち主ね」
「いえ、そんな」
壮二は恐縮した。
もしかしたら、こういった素直な反応がよかったのかもしれない。
調子を狂わされながらも、利希は壮二を信用し始めている。希美がそうであるように。
「とにかく、これで仕事は終わりよ。お疲れ様でした」
「はい、希美さんも」
壮二は嬉しそうに笑うと、じっと見つめてきた。さっきまでとは少し違う目つきになのを、希美は敏感に感じ取る。
仕事が終わったということは、ここから先はフリータイム。どこへ行こうと、何をしようと二人の自由であり、誰にじゃまされることもない。
何しろ親公認の、『結婚を前提にした恋人』になったのだから。
「え……っと、まだ空は明るいわねえ」
「はい。午後三時を回ったばかりです」
壮二の口調は弾んでいる。分かりやすすぎて、それとなく誘うつもりの希美は、噴き出しそうになった。
ここに来るまで、圧迫面接をうまく切り抜けられるかハラハラしてたのに、逆に事態は好転した。壮二を運転手にと指名した利希に、今は感謝したい気分だ。
「壮二、これからの予定は?」
「何もありません。僕は自由の身です」
あなたの自由にしてくださいと、希美には聞こえた。
熱っぽい眼差しが、昨夜の交わりを彷彿とさせる。
「それじゃ、帰りがてらドライブデートしましょ。きれいな景色を見て、美味しいものでも食べて、それから……」
唇を閉じて、あとの言葉は呑み込む。鈍感な壮二にも、ここは察してほしい。
「僕も、そのプランに賛成です」
今すぐにでも、この野暮なスーツを脱がせて、逞しくも美しいカラダを堪能したい。
怖いくらいの衝動に駆られ、希美は一人で熱くなった。
1
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる