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秘書課の壮二
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月曜日の朝。
希美はウキウキしながら出勤したが、あれっと思う。隣に設置した壮二のデスクに本人がいない。
「北城さん、おはようございます」
希美がきょろきょろしていると、役員秘書の吉田が話しかけてきた。彼女は入社5年目の26歳。秘書課では中堅社員であり、希美のサポートを務めることが多い。
「先ほどT社の伊藤様からお電話がありました。午後1時頃に、もう一度連絡をくださるそうです」
「ありがとう。あっ、吉田さん」
自席に戻ろうとする彼女を、慌てて引き止めた。
「今日から配属の南村さん、まだ出勤してない?」
「南村さんなら先ほど出勤されましたけど……あれっ? そういえば、いませんね」
他の秘書課員に訊いても、それぞれ首を傾げる。出勤したのは確かだが、誰も居所を知らなかった。
(さすが営業二課の幻影と呼ばれた男。この存在感のなさ、半端ないわ)
新人は普通、注目されるもの。それなのに、壮二の幽霊っぷりはもはや才能である。
希美は感心するとともに、少しホッとした。
地味で目立たぬ壮二も一応は男であり、彼に興味を持つ女性がいないとは限らない。
何しろ、管理職を含め15名からなる秘書課の男女比は3:12――
女性が大半を占めている。そこに壮二が加わり4:12になるが、やはり圧倒的に女の世界だ。
こういった環境では、平凡な男でもモテたりする。そこのところを、希美はほんのちょっぴり懸念したのだが……
オフィスの女性社員は誰一人として、壮二に興味を引かれないらしい。
「あのう、北城さん」
「はい?」
吉田がまだ横にいて、他の課員もこちらに注目していた。
「えっ、なに。どうしたの?」
「そのう、南村さんは本当に、北城さんの婚約者なんですか?」
「……」
この質問は、もう何度も受けている。吉田だけでなく、周りの人間がことあるごとに確かめようとするのだ。
希美がなぜ壮二を選んだのか、納得できないらしい。
ちなみに、希美が営業部まで押しかけて壮二にプロポーズした件は、全社に広まっている。
「そうよ。だから彼は、秘書課に配属されたの」
「未来のお婿さんとして、社長のお仕事がどんなものか、間近で見るために……?」
「ええ」
答えが分りきった質問を繰り返すのは失礼だ。
しかし吉田は真面目そのもの。とにかく、不思議でたまらないのだろう。
希美はウキウキしながら出勤したが、あれっと思う。隣に設置した壮二のデスクに本人がいない。
「北城さん、おはようございます」
希美がきょろきょろしていると、役員秘書の吉田が話しかけてきた。彼女は入社5年目の26歳。秘書課では中堅社員であり、希美のサポートを務めることが多い。
「先ほどT社の伊藤様からお電話がありました。午後1時頃に、もう一度連絡をくださるそうです」
「ありがとう。あっ、吉田さん」
自席に戻ろうとする彼女を、慌てて引き止めた。
「今日から配属の南村さん、まだ出勤してない?」
「南村さんなら先ほど出勤されましたけど……あれっ? そういえば、いませんね」
他の秘書課員に訊いても、それぞれ首を傾げる。出勤したのは確かだが、誰も居所を知らなかった。
(さすが営業二課の幻影と呼ばれた男。この存在感のなさ、半端ないわ)
新人は普通、注目されるもの。それなのに、壮二の幽霊っぷりはもはや才能である。
希美は感心するとともに、少しホッとした。
地味で目立たぬ壮二も一応は男であり、彼に興味を持つ女性がいないとは限らない。
何しろ、管理職を含め15名からなる秘書課の男女比は3:12――
女性が大半を占めている。そこに壮二が加わり4:12になるが、やはり圧倒的に女の世界だ。
こういった環境では、平凡な男でもモテたりする。そこのところを、希美はほんのちょっぴり懸念したのだが……
オフィスの女性社員は誰一人として、壮二に興味を引かれないらしい。
「あのう、北城さん」
「はい?」
吉田がまだ横にいて、他の課員もこちらに注目していた。
「えっ、なに。どうしたの?」
「そのう、南村さんは本当に、北城さんの婚約者なんですか?」
「……」
この質問は、もう何度も受けている。吉田だけでなく、周りの人間がことあるごとに確かめようとするのだ。
希美がなぜ壮二を選んだのか、納得できないらしい。
ちなみに、希美が営業部まで押しかけて壮二にプロポーズした件は、全社に広まっている。
「そうよ。だから彼は、秘書課に配属されたの」
「未来のお婿さんとして、社長のお仕事がどんなものか、間近で見るために……?」
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