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秘書課の壮二
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「私の婚約者だからといって、お気遣いは無用です。吉田さんも皆さんも、秘書課の先輩として厳しく接してください。南村さんはその覚悟で、ここに来たのですから」
「はあ、でも……」
「お喋りはおしまい。さあさあ、仕事に戻ってくださいね~」
彼女達が知りたいのは、希美が彼を選んだ理由。
でも、ありのまま答えても、誰一人として理解できないだろう。理解されなくてもいいと希美は思う。
何もかもひっくるめて、壮二は最高の婚約者なのだ。
朝の業務を速攻で済ませると、希美は社長室に移動した。オフィスにいないとなれば、壮二の居場所は決まっている。なぜ最初に確認しなかったのだろう。
「あっ、北城さん。おはようございます」
社長室のドアを開けると、爽やかな挨拶が飛んできた。
やはり壮二は、ここにいたのだ。ワイシャツ姿で、手にぞうきんを持って――??
「ちょ……何やってんの、壮二」
「見て分からんのか。壮二は掃除をしておる」
デスクにふんぞり返った利希がダジャレで答えた。脱力する希美を見て、さも愉快そうに笑う。
(ったく……こんなことだろうと思った)
利希は今朝、朝礼のスピーチを練習すると言って、希美より早く家を出た。それはもちろん口実で、先に出社して壮二を捕まえ、掃除を命じたのだ。
どうやらこの社長は、秘書見習いをこき使う気満々である。
「社長。南村さんの上司は私です。勝手に仕事を与えられては困りますね」
「出勤したら、まず掃除をする。新入りなら当然の仕事だろう。それに、私は最高位の上司だぞ。なっ、南村」
「はい、社長」
壮二は素直に応え、せっせとデスクを拭いている。隅から隅まで、なかなか手際が良い。
「じゃなくて……南村さん、あなたの仕事は私が割り振ります。いくら社長命令でも、何もかも引き受けないでください」
厳しめの声で言うと、壮二は「すみません」と詫びた。
「掃除くらい、いいじゃないか。怖い先輩だなあ」
「社長っ」
キッと睨むと、利希は経済紙を広げて顔を隠した。子どもっぽいやり方に、希美は苛立ちを覚える。
しかし肝心の壮二が利希の嫌がらせに気づかず、にこやかな顔。鈍感なのか豪胆なのか、よく分からないオトコだ。
「とにかく、今日が新たな一歩よ。気を引きしめて、頑張ってね」
「はい、頑張りますっ」
頑張ると言ったら、必ず頑張る男。それが南村壮二だ。彼の明るい表情を見ると、苛立ちなど忘れてしまう。
「今日も快晴ですね。幸先がいいなあ」
「そうね。まぶしすぎるくらい」
壮二のワイシャツに、窓の光が反射する。希美だけが知る『魅力』が透けて見えそうで、思わず目を逸らした。
(私こそ、気を引きしめなくては!)
逞しくも美しい身体を意識しながら、ドキドキする胸を押さえた。
「はあ、でも……」
「お喋りはおしまい。さあさあ、仕事に戻ってくださいね~」
彼女達が知りたいのは、希美が彼を選んだ理由。
でも、ありのまま答えても、誰一人として理解できないだろう。理解されなくてもいいと希美は思う。
何もかもひっくるめて、壮二は最高の婚約者なのだ。
朝の業務を速攻で済ませると、希美は社長室に移動した。オフィスにいないとなれば、壮二の居場所は決まっている。なぜ最初に確認しなかったのだろう。
「あっ、北城さん。おはようございます」
社長室のドアを開けると、爽やかな挨拶が飛んできた。
やはり壮二は、ここにいたのだ。ワイシャツ姿で、手にぞうきんを持って――??
「ちょ……何やってんの、壮二」
「見て分からんのか。壮二は掃除をしておる」
デスクにふんぞり返った利希がダジャレで答えた。脱力する希美を見て、さも愉快そうに笑う。
(ったく……こんなことだろうと思った)
利希は今朝、朝礼のスピーチを練習すると言って、希美より早く家を出た。それはもちろん口実で、先に出社して壮二を捕まえ、掃除を命じたのだ。
どうやらこの社長は、秘書見習いをこき使う気満々である。
「社長。南村さんの上司は私です。勝手に仕事を与えられては困りますね」
「出勤したら、まず掃除をする。新入りなら当然の仕事だろう。それに、私は最高位の上司だぞ。なっ、南村」
「はい、社長」
壮二は素直に応え、せっせとデスクを拭いている。隅から隅まで、なかなか手際が良い。
「じゃなくて……南村さん、あなたの仕事は私が割り振ります。いくら社長命令でも、何もかも引き受けないでください」
厳しめの声で言うと、壮二は「すみません」と詫びた。
「掃除くらい、いいじゃないか。怖い先輩だなあ」
「社長っ」
キッと睨むと、利希は経済紙を広げて顔を隠した。子どもっぽいやり方に、希美は苛立ちを覚える。
しかし肝心の壮二が利希の嫌がらせに気づかず、にこやかな顔。鈍感なのか豪胆なのか、よく分からないオトコだ。
「とにかく、今日が新たな一歩よ。気を引きしめて、頑張ってね」
「はい、頑張りますっ」
頑張ると言ったら、必ず頑張る男。それが南村壮二だ。彼の明るい表情を見ると、苛立ちなど忘れてしまう。
「今日も快晴ですね。幸先がいいなあ」
「そうね。まぶしすぎるくらい」
壮二のワイシャツに、窓の光が反射する。希美だけが知る『魅力』が透けて見えそうで、思わず目を逸らした。
(私こそ、気を引きしめなくては!)
逞しくも美しい身体を意識しながら、ドキドキする胸を押さえた。
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