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三通の招待状
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出席したくない。
だが、海山商事は重要な取引先であり、今後付き合っていく相手だ。個人的な感情で会社間の関係を悪くするわけにいかない。
(だけど、この招待状は……)
希美は三通の封筒を手に、壮二をちらりと見やる。穏やかな黒い瞳が、勇気を奮い立たせてくれた。
「はい、ぜひ出席させていただきます」
「それは良かった」
当然といった態度。
これはビジネスなのだと、希美は心中で繰り返す。
「それでは、僕はこれで失礼いたします。社長と奥様によろしくお伝えください」
「……あっ」
素早い動きで、手の甲にキスしてきた。悲鳴を上げそうになるが、かろうじて堪える。
(動揺しちゃダメ。壮二が心配する)
クールを装い、静かに手を引っ込めた。
「しかし、せっかくお会いできたのに、名残惜しいなあ。やはりドライブでもしませんか? ついでに夜食でもいかがです。夜景のきれいな店にご案内しますよ」
「……」
どこまでもふざけたやつ! あまりの図々しさに、ひっぱたいてやりたい衝動に駆られる。
「失礼ですが、細野専務。今夜はお引き取りください」
壮二がいきなり割り込んだ。丁寧だが、どこか有無を言わせぬ口調に希美はドキッとする。
「そ、壮二?」
「大丈夫です。希美さんは家の中へ」
「でも……」
「言ったでしょう。任せてくださいって」
希美にだけ聞こえるように囁く。
よく分からないが、婚約者の手に口付けた不埒な男を成敗する……という雰囲気ではない。
「おい、帰れとは何だ。秘書見習いの分際で、じゃまする気か」
希美は一応玄関に入るが、ドアの隙間から彼らを窺う。幸一がどんな因縁をつけてくるか分からない。
「ええ、私は秘書見習いです。しかし希美さんの婚約者でもあります」
「ふん、だからどうした。婚約したくらいで、北城家の一員になったつもりか? 残念ながらお前は部外者だ。パーティーの招待状をもらえない身分なんだよ」
三通の招待状を握りしめ、希美は震えた。幸一の言い分に屈するわけではないが、壮二と結婚していないという事実が悔しい。
「なるほど。でも今は、そんなこと問題じゃありません」
「あ……? どういうことだ」
幸一の頭越しに、壮二が視線を投げた。
幸一が振り返った。
塀に沿って赤いライトが移動するのが見える。門扉の外、派手な外国車の後ろに停まったのは警察のパトロールカーだ。
「げっ、嘘だろ」
「この辺りは駐車禁止区域です。派手な車は目立ちますから、誰かが通報したんでしょう」
壮二はいかにも残念そうに言い、幸一の肩をぽんと叩いた。
「運が悪かったですね」
「駐禁区域だなんて知らないよ。どうしてもっと早く教えないんだ!」
幸一が壮二に迫ろうとしたが、なぜか怯んだ。
希美には、こちらに背中を向けた壮二がどんな表情をしているのか分からない。
「くっ、いまいましい」
幸一は捨て台詞を吐くと、その場から逃げるように門扉へと小走りした。
その後、警察官に抗議する声が聞こえたが、長くは続かない。やがて声は止み、パトカー、そして外国車の順に、北城家の前からいなくなった。
だが、海山商事は重要な取引先であり、今後付き合っていく相手だ。個人的な感情で会社間の関係を悪くするわけにいかない。
(だけど、この招待状は……)
希美は三通の封筒を手に、壮二をちらりと見やる。穏やかな黒い瞳が、勇気を奮い立たせてくれた。
「はい、ぜひ出席させていただきます」
「それは良かった」
当然といった態度。
これはビジネスなのだと、希美は心中で繰り返す。
「それでは、僕はこれで失礼いたします。社長と奥様によろしくお伝えください」
「……あっ」
素早い動きで、手の甲にキスしてきた。悲鳴を上げそうになるが、かろうじて堪える。
(動揺しちゃダメ。壮二が心配する)
クールを装い、静かに手を引っ込めた。
「しかし、せっかくお会いできたのに、名残惜しいなあ。やはりドライブでもしませんか? ついでに夜食でもいかがです。夜景のきれいな店にご案内しますよ」
「……」
どこまでもふざけたやつ! あまりの図々しさに、ひっぱたいてやりたい衝動に駆られる。
「失礼ですが、細野専務。今夜はお引き取りください」
壮二がいきなり割り込んだ。丁寧だが、どこか有無を言わせぬ口調に希美はドキッとする。
「そ、壮二?」
「大丈夫です。希美さんは家の中へ」
「でも……」
「言ったでしょう。任せてくださいって」
希美にだけ聞こえるように囁く。
よく分からないが、婚約者の手に口付けた不埒な男を成敗する……という雰囲気ではない。
「おい、帰れとは何だ。秘書見習いの分際で、じゃまする気か」
希美は一応玄関に入るが、ドアの隙間から彼らを窺う。幸一がどんな因縁をつけてくるか分からない。
「ええ、私は秘書見習いです。しかし希美さんの婚約者でもあります」
「ふん、だからどうした。婚約したくらいで、北城家の一員になったつもりか? 残念ながらお前は部外者だ。パーティーの招待状をもらえない身分なんだよ」
三通の招待状を握りしめ、希美は震えた。幸一の言い分に屈するわけではないが、壮二と結婚していないという事実が悔しい。
「なるほど。でも今は、そんなこと問題じゃありません」
「あ……? どういうことだ」
幸一の頭越しに、壮二が視線を投げた。
幸一が振り返った。
塀に沿って赤いライトが移動するのが見える。門扉の外、派手な外国車の後ろに停まったのは警察のパトロールカーだ。
「げっ、嘘だろ」
「この辺りは駐車禁止区域です。派手な車は目立ちますから、誰かが通報したんでしょう」
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「運が悪かったですね」
「駐禁区域だなんて知らないよ。どうしてもっと早く教えないんだ!」
幸一が壮二に迫ろうとしたが、なぜか怯んだ。
希美には、こちらに背中を向けた壮二がどんな表情をしているのか分からない。
「くっ、いまいましい」
幸一は捨て台詞を吐くと、その場から逃げるように門扉へと小走りした。
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