夫のつとめ

藤谷 郁

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護りの指輪

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「壮二にボディガードを頼むって言うの?」
「はい。パーティーの間じゅう、守っていただくのです」

 私に妙案があります――と、武子は言った。希美と利希が顔を見合わせ、首を傾げる。

「でも、彼は招待状を持ってないし、会場に入れないわよ」
「ふふ……その辺りは心配ご無用。ともかく、私にお任せください。お嬢様をきっちりとお守りしますので、旦那様も安心してお出かけくださいませ」
「うん、まあ……武子さんがそこまで言うなら大丈夫だとは思うが」

 利希もよく分からないといった表情だ。

(どういうことだろ。会場に入れないのに、どうやって?)



 翌日、希美はそれとなく『武子さんから何か頼まれた?』と壮二に訊いてみた。
 彼は『はい』と素直にうなずくが、やはり詳しいことは口止めされたようで、返事を濁す。
 ただ、彼の顔が少し恥ずかしそうに見えたのは……気のせいだろうか。

(ますます気になるけど、無理やり答えさせたら壮二が武子さんに怒られちゃうわね)

 そうなったら気の毒なので、希美はもう追及しない。
 結局、武子の"作戦"を知らされないまま、パーティー当日を迎えるのだった。



「お母さん、希美。そろそろ出かけるぞ」
「はい、お父様」

 リビングで母と待機していた希美は、玄関から声をかけた利希に返事した。

 6月10日 土曜日――

 今夜、海山商事の社長細野友光の誕生パーティーが、細野家の所有する山梨の別荘で開かれる。

 外に出ると、希美は夕暮れの空を仰いだ。パーティーが始まるのは午後7時。向こうに到着する頃には、太陽が隠れて月が輝き始めるだろう。

「旦那様、こちら細野様への贈り物でございます」

 門扉まで見送りに出た武子が、化粧箱が入った紙袋を車のトランクに入れた。

「ありがとう武子さん。割れ物だからな、しっかり固定しておいてくれ」
「かしこまりました」

 箱の中身はフランス産の高級ワインだ。友光の生まれ年のワインだが、その年の葡萄がどんな出来栄えだったのか、そこまで吟味していない。

「適当でいいんだよ。あの男のことだ、有名ワイナリーのラベルを見れば満足するさ」

 利希には、憎き相手の誕生日を祝う気持ちなど微塵もなかった。

「ところで武子さん、壮二はどうしたんだ。今夜はあいつも来るんじゃないのか」

 麗子が先に車に乗り込むのを確認してから、利希は訊ねた。希美もずっと気になっていたことだ。
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