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大物かもしれない
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意気投合した二人は立食用テーブルに移動して、料理の感想を交わした。
食材や味付けの好みが似通っているので、なかなか楽しい。それに、男が大食いであるというのも、希美に親近感を持たせる大きな要素だった。
「会話が弾むと喉も渇く。そこの君、カクテルをくれないか」
男は野太い声で、すぐ近くにいた配膳係を呼んだ。
「あ、はーい。少々お待ちください」
「あら?」
先ほど広間で見かけた、ビン底眼鏡に三つ編みの女性だ。トレイにロングカクテルを載せ、近づいてくる。
「君もどうかね」
「ええ、いただきます」
希美は男にすすめられ、トレイからカクテルを選んだ。
配膳係がにこりと笑い、女性にしては大柄な身体を曲げてお辞儀をした。近くで見ると、かなり化粧が濃い。分厚い眼鏡といい、まるで素顔を隠しているかのようだ。
「ごゆっくりどうぞー」
逞しい後ろ姿を、希美はなんとなく目で追った。父の言葉どおり、武子の若い頃はあんな感じだったのかもしれない。
「あのメイドさん、妙だな」
男が不思議そうな口ぶりで言った。メイドさんというのは、今の配膳係のことだ。
「さっきから、我々のそばをウロウロしてたぞ。他のメイドさんとは雰囲気が違うし、どうも気になるな……」
うーんと唸り、太い首をひねった。
「飲み物をすすめるタイミングを見計らっていたのでは? 仕事に慣れていない様子でしたから」
大人数のパーティーでは臨時アルバイトが雇われたりする。希美は思いついたことを口にした。
「ふむ……まあいいか。ところで、お嬢さん。申し遅れましたが、私はこういうものです」
テーブルにグラスを置くと、男は内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚差し出した。
「あ、恐れ入ります」
明らかに立場が上の人物が、先に自己紹介してきた。希美は恐縮しながらそれを受け取り、小さく声を上げた。
「えっ? 株式会社グラットン。代表取締役社長……」
「南村壮太と申します。どうぞよろしく!」
ほぼ強引に握手された。グローブのように厚い手のひらは、力強さに満ちている。
「たっ、大変失礼いたしました」
希美もバッグから名刺を取り出し、自己紹介した。焦ってしまい、舌を噛みそうになる。
「おお、ノルテフーズさんの……ほう、北城希美さんといわれると、もしかして社長のお嬢さんかな?」
「はい。北城利希の長女です。社長付第一秘書を務めております」
噂どおりの豪快な男を前に、今さらながら膝が震えた。
(この人が、グラットンの南村社長。どうりで見たことがあると思った)
ヒット商品を連発するグラットンの社長は、メディアにたびたび登場する。実際に会うのは初めてなので、ぴんとこなかったのだ。
「いやあ、ノルテフーズさんとは、いつかお近づきになりたいと思ってたんだ。こんなに嬉しい巡り合わせはないよ」
「は、はい。こちらこそ」
社交辞令だろうが、好意的な空気が伝わってくる。希美は圧倒されながらも、彼の姿をあらためて観察した。
顔も身体もごつく、噂以上の豪傑ぶり。
この人が壮二の親戚であるはずがないと、はっきりと確信した。
「北城社長には、後ほどご挨拶させていただこう。今は中においでかな?」
「はい。でもあの、北城からご挨拶するようにいたしますので……」
「いやいや、こちらから声をかけさせてもらうよ。熊のような大男がいきなり行けば、びっくりされるだろうがね。わっははは」
どこまでもざっくばらんな人だ。
希美が思わず微笑むと、彼はいたずらっぽく片目をつむった。
食材や味付けの好みが似通っているので、なかなか楽しい。それに、男が大食いであるというのも、希美に親近感を持たせる大きな要素だった。
「会話が弾むと喉も渇く。そこの君、カクテルをくれないか」
男は野太い声で、すぐ近くにいた配膳係を呼んだ。
「あ、はーい。少々お待ちください」
「あら?」
先ほど広間で見かけた、ビン底眼鏡に三つ編みの女性だ。トレイにロングカクテルを載せ、近づいてくる。
「君もどうかね」
「ええ、いただきます」
希美は男にすすめられ、トレイからカクテルを選んだ。
配膳係がにこりと笑い、女性にしては大柄な身体を曲げてお辞儀をした。近くで見ると、かなり化粧が濃い。分厚い眼鏡といい、まるで素顔を隠しているかのようだ。
「ごゆっくりどうぞー」
逞しい後ろ姿を、希美はなんとなく目で追った。父の言葉どおり、武子の若い頃はあんな感じだったのかもしれない。
「あのメイドさん、妙だな」
男が不思議そうな口ぶりで言った。メイドさんというのは、今の配膳係のことだ。
「さっきから、我々のそばをウロウロしてたぞ。他のメイドさんとは雰囲気が違うし、どうも気になるな……」
うーんと唸り、太い首をひねった。
「飲み物をすすめるタイミングを見計らっていたのでは? 仕事に慣れていない様子でしたから」
大人数のパーティーでは臨時アルバイトが雇われたりする。希美は思いついたことを口にした。
「ふむ……まあいいか。ところで、お嬢さん。申し遅れましたが、私はこういうものです」
テーブルにグラスを置くと、男は内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚差し出した。
「あ、恐れ入ります」
明らかに立場が上の人物が、先に自己紹介してきた。希美は恐縮しながらそれを受け取り、小さく声を上げた。
「えっ? 株式会社グラットン。代表取締役社長……」
「南村壮太と申します。どうぞよろしく!」
ほぼ強引に握手された。グローブのように厚い手のひらは、力強さに満ちている。
「たっ、大変失礼いたしました」
希美もバッグから名刺を取り出し、自己紹介した。焦ってしまい、舌を噛みそうになる。
「おお、ノルテフーズさんの……ほう、北城希美さんといわれると、もしかして社長のお嬢さんかな?」
「はい。北城利希の長女です。社長付第一秘書を務めております」
噂どおりの豪快な男を前に、今さらながら膝が震えた。
(この人が、グラットンの南村社長。どうりで見たことがあると思った)
ヒット商品を連発するグラットンの社長は、メディアにたびたび登場する。実際に会うのは初めてなので、ぴんとこなかったのだ。
「いやあ、ノルテフーズさんとは、いつかお近づきになりたいと思ってたんだ。こんなに嬉しい巡り合わせはないよ」
「は、はい。こちらこそ」
社交辞令だろうが、好意的な空気が伝わってくる。希美は圧倒されながらも、彼の姿をあらためて観察した。
顔も身体もごつく、噂以上の豪傑ぶり。
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「北城社長には、後ほどご挨拶させていただこう。今は中においでかな?」
「はい。でもあの、北城からご挨拶するようにいたしますので……」
「いやいや、こちらから声をかけさせてもらうよ。熊のような大男がいきなり行けば、びっくりされるだろうがね。わっははは」
どこまでもざっくばらんな人だ。
希美が思わず微笑むと、彼はいたずらっぽく片目をつむった。
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