121 / 179
トラップ
2
しおりを挟む
希美が倒されたのは絨毯の上。反射的に立ち上がると、幸一に対して防御の体勢をとった。とんでもないことが起きたのだ。
今、自分が引きずられてきたのは、鏡の裏に隠された秘密の通路。
そして、ぼんやりと薄暗いこの部屋は――
「ようこそ、お嬢さん。我々の愛の世界に」
ぞっとするほど不快な響き。それは目の前の幸一が発したのではなく、横から聞こえた。
見ると、幸一の父友光がベッドに腰かけている。ゴールドのベッドカバーに覆われた、超キングサイズの天蓋付きベッド。広いとはいえないこの部屋の、ほとんどのスペースを占めている。
「ほ、細野社長?」
衝撃の連続に息が止まりそうになるが、さらなる驚きが希美を襲う。
「お母様!」
友光の傍らに、母麗子が横たわっていた。手足をベルトで縛られ、怯えた顔で、震えながらこちらを見ている。
「……希美い」
「どうして、お母様がここに……あっ」
友光の勝ち誇った顔を見て、希美は覚った。
この親子、正攻法では女を誘えないからとトラップを仕かけたのだ。女性用トイレに男は入って来ない。つまり、ボディガードに邪魔されず女をさらえる。
麗子も希美も、その罠に嵌ってしまったのだ。
「はっはっは。今夜のために、幸一が隠し通路を作ったのだよ。化粧室の奥に設置したのは、マジックミラーの出入り口。希美さんを捕らえるための罠だが、麗子さんが素直じゃないから一緒にお招きした。素晴らしいアイデアだと思わんかね」
まるで映画の悪役のように、芝居がかったセリフを吐く。片手で麗子の髪を撫でながら希美を見据える友光の眼は、狂気をはらんでいた。
(いくらなんでも、ここまでする?)
常軌を逸した行為に、希美は戦慄した。
「ほ、細野社長……正気ですか。こんなの、犯罪ですよ!」
震え声で訴える希美を、幸一が後ろから羽交い絞めにする。
「何をするの。放して!」
「大人しくしろよ、お嬢様」
全力でもがくが、女の身体は悲しいほど自由にならない。
「やめてっ、誰かーっ!!」
「叫んでも無駄ですよ、お嬢さん。この部屋は奥まった場所にある。それに、マジックショーの賑やかさが、悲鳴をかき消してしまうでしょう」
友光の言葉に愕然とする。そのためのイベントだったのか。
「タイミングも計算ずく。それに、気が付かなかったのかな? 父は麗子さんをマークし、僕は君のことをずっと見つめていた。たとえば、グラットンの社長に媚びるところも目撃済みさ」
幸一の息が首筋にかかる。
(このストーカー男!)
と、思いきり罵ってやりたいが、不気味すぎて声が出ない。
今、自分が引きずられてきたのは、鏡の裏に隠された秘密の通路。
そして、ぼんやりと薄暗いこの部屋は――
「ようこそ、お嬢さん。我々の愛の世界に」
ぞっとするほど不快な響き。それは目の前の幸一が発したのではなく、横から聞こえた。
見ると、幸一の父友光がベッドに腰かけている。ゴールドのベッドカバーに覆われた、超キングサイズの天蓋付きベッド。広いとはいえないこの部屋の、ほとんどのスペースを占めている。
「ほ、細野社長?」
衝撃の連続に息が止まりそうになるが、さらなる驚きが希美を襲う。
「お母様!」
友光の傍らに、母麗子が横たわっていた。手足をベルトで縛られ、怯えた顔で、震えながらこちらを見ている。
「……希美い」
「どうして、お母様がここに……あっ」
友光の勝ち誇った顔を見て、希美は覚った。
この親子、正攻法では女を誘えないからとトラップを仕かけたのだ。女性用トイレに男は入って来ない。つまり、ボディガードに邪魔されず女をさらえる。
麗子も希美も、その罠に嵌ってしまったのだ。
「はっはっは。今夜のために、幸一が隠し通路を作ったのだよ。化粧室の奥に設置したのは、マジックミラーの出入り口。希美さんを捕らえるための罠だが、麗子さんが素直じゃないから一緒にお招きした。素晴らしいアイデアだと思わんかね」
まるで映画の悪役のように、芝居がかったセリフを吐く。片手で麗子の髪を撫でながら希美を見据える友光の眼は、狂気をはらんでいた。
(いくらなんでも、ここまでする?)
常軌を逸した行為に、希美は戦慄した。
「ほ、細野社長……正気ですか。こんなの、犯罪ですよ!」
震え声で訴える希美を、幸一が後ろから羽交い絞めにする。
「何をするの。放して!」
「大人しくしろよ、お嬢様」
全力でもがくが、女の身体は悲しいほど自由にならない。
「やめてっ、誰かーっ!!」
「叫んでも無駄ですよ、お嬢さん。この部屋は奥まった場所にある。それに、マジックショーの賑やかさが、悲鳴をかき消してしまうでしょう」
友光の言葉に愕然とする。そのためのイベントだったのか。
「タイミングも計算ずく。それに、気が付かなかったのかな? 父は麗子さんをマークし、僕は君のことをずっと見つめていた。たとえば、グラットンの社長に媚びるところも目撃済みさ」
幸一の息が首筋にかかる。
(このストーカー男!)
と、思いきり罵ってやりたいが、不気味すぎて声が出ない。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる