夫のつとめ

藤谷 郁

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あなたを守ります

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「奥様は別の人間がマークしていました」
「やっぱり配膳係の人?」
「はい。僕一人では限界がありますから」

 パーティーに派遣された配膳係のうち数人は、武子が雇った潜入者である。細野家御用達の派遣会社を前もって調査し、壮二ともども登録してあったという。

「奥様が化粧室から消えたのは、マジックショーが始まって間もなくでした」

 女性しか入れない場所に罠を仕掛けるのはよくあること。武子はだから壮二に女装させたのだという。

「そこまで読んでるなんて、すごいわ。情報部のエージェントみたい」
「そうですね。武子さんって何者なんだろうって、僕も思います」

 鏡に仕掛けがあるのは、協力者からの情報でわかっていた。
 壮二は隠し通路を通って二人がさらわれた部屋まで進み、タイミングを見計らって姿を現したのだ。

「希美さんがベッドに倒された時、怒りで目がくらんで……だから、突入後に怒りを爆発させて、細野幸一を床にたたきつけたってわけです」
「うん、凄い迫力だった。あの男、完全にのびてたもの」
「親父のほうもやっつけてやろうと思ったけど、相手はご老体ですから。あの世に送ってしまいそうなんで、やめときました」

 壮二は友光を追いかけず、あえて逃した。その後、武子に作戦完了を報告し、素早く別荘を脱け出したのだ。

 希美の髪を撫でながら、壮二が今夜の救出劇を語った。希美はうっとりしながら、一つだけ質問する。

「壮二って、格闘技の経験があったの? 高校時代の部活は確か……演劇部だったわよね」
「それは……」

 一瞬、戸惑った表情になる。だがすぐに微笑み、

「大学時代のバイト先に柔道家の人がいて、少し習ったんです。とっさにあの技が出たのは、身体が覚えてたんでしょうね」
「ふうん」

 肉体労働の職場なら、格闘技経験者がいても不思議ではない。
 それに、壮二は運動神経がよさそうだし、少し習っただけであるていど身に付いたのだろう。
 と、希望は納得した。

「とまあ、今夜の件はこんな感じです……希美さん」
「え? あっ……」

 突然、情熱的なキスに襲われる。
 希美の身体はたちまち解され、壮二の思うままになる。

「これからも、僕があなたを守ります。何があっても、そばにいて……」
「ん……」

 熱い囁きが希美の身体を蕩けさせる。逞しい腕に包まれ、もう何も考えられず、すべてを受け入れるのだった。
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