夫のつとめ

藤谷 郁

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ブランドイメージの回復

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 ネット炎上が続く中、ノルテフーズは対策本部を設け、苦情のメールや電話に対応した。
 
 しかし異物混入については現在調査中だと答えるほかなく、消費者が納得する説明はできない。
 その結果、対応そのものにクレームが付き、火の勢いが増すばかり。消火剤が燃料になるのだからどうしようもなかった。
 役員から社員まで、一度炎上すると手に負えなくなるネットの恐ろしさを味わわされた。


「ふう……あれから1週間か。長かったな」

 午後10時。会議から戻ってきた利希は、深いため息をついた。その顔には疲労が滲んでいる。
 そばで働く秘書も同様だ。特に第一秘書の希美は、この1週間多忙を極めた。壮二のフォローがなければ、パニックに陥っただろう。

「明日は経営会議で今後について話し合う。これからが大変だぞ」

 社長室には利希と希美、そして壮二の三人だけがいる。ガラス張りの窓は暗く、静かすぎる部屋には重い空気が漂う。

「異物混入は事実であり、ネット炎上の原因を作ったのはノルテの社員だ。覚悟しなければ」

 ネット炎上の翌日、異物混入を写真投稿した本人が、問題の商品を携えノルテフーズ本社に乗り込んできた。
 都内の大学に通う若い男で、年齢は21歳。意外に落ち着いた態度だったという。

 お客様窓口の担当者は平謝りしたが、「あんたに詫びてもらっても仕方ない」と彼は突っぱね、「原因を究明し、誠実な対応をしてください」と要望を述べた。

 現物は商品検査室で分析が行われ、異物は関東工場の製造ラインで使われる洗浄ブラシの毛だと断定された。
 工場での検分も行われ、ブラシの毛が製品に混入する可能性があったと明らかになる。

 ノルテフーズは事実関係を確認後、記者会見を開いた。
 異物混入があったことを認め、その報告と同時に、社員によるSNSでの無責任かつ傲慢な発言を謝罪。今後、全社を上げて商品管理を徹底し、社員の責任意識を高めるため努力すると約束した。

 対応の速さと、経営者が製造現場に責任を丸投げせず全面的に謝罪したのが、世間には評価されたようだ。
 現在、炎上は収まりつつある。

 しかし、利希の言うように大変なのはこれからだ。
 問題が起きたのはノルテフーズの主力商品『椀麺シリーズ』である。商品の回収、生産中止、販売の機会損失、再発防止のための設備投資……ありとあらゆる費用を合わせれば数億に上るだろう。
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