152 / 179
カリスマ社長
2
しおりを挟む
社長室は天井が高く、半吹き抜けの構造になっていた。
白い壁に、エスニック調のインテリア。来客用ソファセットも、革張りではなく、赤やピンクや黄色といった布地に覆われている。
天窓から落ちる自然光に照らされた部屋は、色彩もデザインもイメージが統一されていて、派手でありながら家庭的な落ち着きを感じさせた。
「趣味はいいわね。あの社長、大食漢でエスニック料理が好きで、性格も私にちょっと似てる気がするし……」
でも、恋愛や結婚の対象ではない。希美が求めるのは、ハイスペックでもなく、ガチマッチョでもなく、自分に似た人でもない。
気づかせてくれたのは、この世界でたった一人の男性。
「なんて、余計なことを考えてる場合じゃないわね。それより、社長が来たら言うべきことをおさらいしておこう。まず大切なのは、ノルテフーズの買収に関する約束事。これをしっかり確認してから、結婚の返事を……」
ソファに座らず、部屋の中を何となく歩き回る。
ふと、ローチェストに並べられた写真立てに目が留まった。どれも古く、昭和の日付もある。小さな工場や旧社屋など、グラットンの歴史をそのまま映し込む写真ばかりだった。
(え……?)
端から順に眺めていた希美は、途中で見覚えのある顔を見つけた。
二人の人物が映っている。
一人は南村壮太だ。ヘアスタイルが五分刈りで、今よりも10歳ほど若い。
そしてもう一人は学生服を着た高校生くらいの男子。
南村社長と親子にも見える親しげな様子で、微笑んでいる。
希美は目を見開き、食い入るようにその人物を見つめた。
見覚えがあるどころか、とてもよく知っている。一見地味で、どこにでもいそうな男子だが、意志の強そうな眉と、印象的な黒い瞳が一途な性格を表していた。
「まさか、そんな……どうして……彼がここに?」
背後でドアの開く音が聞こえた。
だけど、希美は写真の人物に釘付けになり、振り向くことができない。
ドアが閉まり、部屋に静寂が下りた。足音がゆっくりと近づいて来る。やがてそれは、希美のすぐ後ろで止まった。
「お待たせいたしました。北城希美さん」
驚きのあまり、息が止まりそうになる。
高校生だった彼が、写真の中からこちらを見つめ、優しく微笑んでいた。
「どうして、なぜ、あなたがここにいるの……」
信じられない思いのまま、後ろを振り返った。写真の彼よりも大人で、学生服ではなくスーツを纏った男性がそこにいる。
「どうして?」
震える唇で問う希美に、彼は低く落ち着いた声で答えた。
「株式会社グラットン社長の、南村壮二です。あなたを私の妻として、お迎えいたします」
白い壁に、エスニック調のインテリア。来客用ソファセットも、革張りではなく、赤やピンクや黄色といった布地に覆われている。
天窓から落ちる自然光に照らされた部屋は、色彩もデザインもイメージが統一されていて、派手でありながら家庭的な落ち着きを感じさせた。
「趣味はいいわね。あの社長、大食漢でエスニック料理が好きで、性格も私にちょっと似てる気がするし……」
でも、恋愛や結婚の対象ではない。希美が求めるのは、ハイスペックでもなく、ガチマッチョでもなく、自分に似た人でもない。
気づかせてくれたのは、この世界でたった一人の男性。
「なんて、余計なことを考えてる場合じゃないわね。それより、社長が来たら言うべきことをおさらいしておこう。まず大切なのは、ノルテフーズの買収に関する約束事。これをしっかり確認してから、結婚の返事を……」
ソファに座らず、部屋の中を何となく歩き回る。
ふと、ローチェストに並べられた写真立てに目が留まった。どれも古く、昭和の日付もある。小さな工場や旧社屋など、グラットンの歴史をそのまま映し込む写真ばかりだった。
(え……?)
端から順に眺めていた希美は、途中で見覚えのある顔を見つけた。
二人の人物が映っている。
一人は南村壮太だ。ヘアスタイルが五分刈りで、今よりも10歳ほど若い。
そしてもう一人は学生服を着た高校生くらいの男子。
南村社長と親子にも見える親しげな様子で、微笑んでいる。
希美は目を見開き、食い入るようにその人物を見つめた。
見覚えがあるどころか、とてもよく知っている。一見地味で、どこにでもいそうな男子だが、意志の強そうな眉と、印象的な黒い瞳が一途な性格を表していた。
「まさか、そんな……どうして……彼がここに?」
背後でドアの開く音が聞こえた。
だけど、希美は写真の人物に釘付けになり、振り向くことができない。
ドアが閉まり、部屋に静寂が下りた。足音がゆっくりと近づいて来る。やがてそれは、希美のすぐ後ろで止まった。
「お待たせいたしました。北城希美さん」
驚きのあまり、息が止まりそうになる。
高校生だった彼が、写真の中からこちらを見つめ、優しく微笑んでいた。
「どうして、なぜ、あなたがここにいるの……」
信じられない思いのまま、後ろを振り返った。写真の彼よりも大人で、学生服ではなくスーツを纏った男性がそこにいる。
「どうして?」
震える唇で問う希美に、彼は低く落ち着いた声で答えた。
「株式会社グラットン社長の、南村壮二です。あなたを私の妻として、お迎えいたします」
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる