夫のつとめ

藤谷 郁

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男同士の約束

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「今のグラットンがあるのは、お前のおかげと言っても過言じゃない。社員も役員も、誰も反対なんてしやしないよ」

 そうだ、それがいい。我ながら素晴らしい思い付きだと壮太は興奮してきた。

「だけど壮太。もしお前が結婚して子どもが生まれたらどうする。その子を後継ぎにすべきだろう」

 仙一が冷静に問いかけるのを、壮太はまったく問題ないとかわす。

「俺は結婚なんかしないぜ。したがって後継ぎ問題など発生しない。壮二がグラットンを継いで、社長になるんだ!」

 南村親子は、一人昂ぶる壮太を呆然と眺めた。こうなったら誰が何を言おうと聞かないだろう。

「な、壮二。いつかの指きりげんまんに、この約束を付け加えてくれ。お前はグラットンの一員になり、将来は俺の後を継いで社長になる。このとおりだ、頼む」
「う、うん……でも」

 いまや大企業の社長である男に頭を下げられ、壮二は困惑する。両親に助けを求めるが、彼らもどうしようもなかった。
 一度決めたら、それが通るまで引かないのが南村壮太である。

「わかったから、壮太さん。とにかく頭を上げてくれよ」
「なに、わかってくれたか!」

 思わず壮二の手を握りしめると、彼は苦笑しながらも頷いてくれた。

「約束するけど……もし僕が社長として相応しくないと思ったら、その時は遠慮なく言ってよね。まだ先の話だし、状況が変わるかもしれないだろ?」
「ああ、大丈夫だ。臨機応変に対応するよ」

 約束をとりつけ、壮太は心からホッとした。そして、必ず壮二を社長にしてみせると自分に誓う。

「いやあ、楽しみだ。グラットンは未来永劫安泰だぞ」

 南村夫妻は何も言わず、二人のやり取りを見守った。そんなに上手くいくだろうかと、ポジティブすぎる壮太に呆れてもいた。

「まあ、とにかく4年後だ。大学でしっかり勉強して、ちゃんと卒業しろよ」
「そうだね。まずは勉強を頑張るよ」

 瞳を輝かせる彼に、壮太は手のひらを差し出す。
 指きりげんまんではなく、がっしりと握手する。それは男同士の約束だった。
 
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