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女神降臨
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午後からは、とある屋敷の古い家具を回収し、アンティークショップの倉庫へ運ぶ仕事だった。
高台の閑静な住宅街を、トラックがゆっくりと進んで行く。
「実は、その家の家政婦が俺の女房なんだ。割引がきくからって、俺が指名されたわけよ」
「なるほど。あ、さっきの武子さんというのが……」
「そう。女房と言っても、籍を入れてねえから内縁の妻ってやつだな」
住宅街の中でも際立って大きな邸宅の裏に、トラックは停止した。
壮二は車を降りると、屋敷をぐるりと囲む高い塀を見上げる。裏口の門扉に、『北城』という札が掛かっていた。
「おっ、武子だ」
門扉が開いて、中から人が出てきた。紺地のワンピースにエプロンを着けたその人を見て、壮二はちょっと驚く。
「早かったね、寛人。おや、新人さんと一緒かい?」
男のように逞しい体格と、低い声。しかし彼女は女性のはずだ。
今、池田が『武子』と呼んだ。
「今日入ったばかりのアルバイトだよ。大学1年生の南村壮二君だ」
「へえ、可愛いじゃないか。アタシは寛人の女房で、山際武子っていうんだ。よろしくね」
池田の名前は寛人というらしい。武子が手を差し出したので、握手した。池田に負けず劣らずの握力に、壮二は度肝を抜かれる。
(二人ともガチマッチョだ……すごい夫婦だなあ)
「それじゃ、運んじまうか。壮二、荷台の扉を開けてくれ」
「あ、はい」
池田は門の中に入ると、すぐに出てきた。アンティーク調の家具を一人で担ぎ、ひょいと荷台に載せる。
「このチェスト、デザインが洒落てるな。お嬢様の家具か?」
「ああ、そうだよ。小学校まで使われていたのを、奥様が記念にとっておいたんだ。でもお嬢様は拘りがなくて、さっさと整理しちゃいましょうって」
「わはは……希美のぞみさんらしいな」
どうやらこの屋敷には、『奥様』『お嬢様』と呼ばれる人たちが住んでいるようだ。自分には縁のない世界だなと、壮二は思った。
「希美さんも大学4年生か。早いもんだな」
「ええ、本当に。あんなにお小さかったお嬢様が、ご立派になられて」
武子は嬉しそうに言うと、柔らかな笑みを浮かべた。外見はごついが、意外と優しい人なのかもしれない。
「武子さーん、どこにいるの?」
若い女性の声。5月の澄んだ空気に響きわたる、美しい声が聞こえた。
壮二はハッとして、裏口に顔を向ける。
「おや、お嬢様だ。はーい、ただいま参ります!」
武子が門扉に歩いて行くと、彼女を待ちきれないように、一人の女性が飛び出してきた。
「ねえ、大学に行く前におやつを食べたいわ。お腹すいちゃった」
先ほどの声の主だ。
壮二はトラックの荷台に手をかけたまま、動けなくなる。突然現われたその人に、目を奪われていた。
高台の閑静な住宅街を、トラックがゆっくりと進んで行く。
「実は、その家の家政婦が俺の女房なんだ。割引がきくからって、俺が指名されたわけよ」
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「そう。女房と言っても、籍を入れてねえから内縁の妻ってやつだな」
住宅街の中でも際立って大きな邸宅の裏に、トラックは停止した。
壮二は車を降りると、屋敷をぐるりと囲む高い塀を見上げる。裏口の門扉に、『北城』という札が掛かっていた。
「おっ、武子だ」
門扉が開いて、中から人が出てきた。紺地のワンピースにエプロンを着けたその人を見て、壮二はちょっと驚く。
「早かったね、寛人。おや、新人さんと一緒かい?」
男のように逞しい体格と、低い声。しかし彼女は女性のはずだ。
今、池田が『武子』と呼んだ。
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「へえ、可愛いじゃないか。アタシは寛人の女房で、山際武子っていうんだ。よろしくね」
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「それじゃ、運んじまうか。壮二、荷台の扉を開けてくれ」
「あ、はい」
池田は門の中に入ると、すぐに出てきた。アンティーク調の家具を一人で担ぎ、ひょいと荷台に載せる。
「このチェスト、デザインが洒落てるな。お嬢様の家具か?」
「ああ、そうだよ。小学校まで使われていたのを、奥様が記念にとっておいたんだ。でもお嬢様は拘りがなくて、さっさと整理しちゃいましょうって」
「わはは……希美のぞみさんらしいな」
どうやらこの屋敷には、『奥様』『お嬢様』と呼ばれる人たちが住んでいるようだ。自分には縁のない世界だなと、壮二は思った。
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「ええ、本当に。あんなにお小さかったお嬢様が、ご立派になられて」
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「武子さーん、どこにいるの?」
若い女性の声。5月の澄んだ空気に響きわたる、美しい声が聞こえた。
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「おや、お嬢様だ。はーい、ただいま参ります!」
武子が門扉に歩いて行くと、彼女を待ちきれないように、一人の女性が飛び出してきた。
「ねえ、大学に行く前におやつを食べたいわ。お腹すいちゃった」
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