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マスク
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「ほーら、出てきた。バカ正直のお人よしが、絶対に出てくると思った! ていうか、お前と勝負なんかするわけないだろ、ばーか!!」
綾華の笑い声が響き渡る。男たちは困惑し、どうすべきか分からない様子。
キングは私を見上げて、なぜかジッと動かずにいる。
私は余計なことをしたのだろうか。
でも、このままでは彼が死んでしまう。そんなのは絶対に嫌だ!
「ほら、あんたたち、なにぼんやりしてるのさ。早く捕まえて、ここまで引きずり下ろすんだよ。バケザルとまとめて処刑してやる!」
男たちは一瞬戸惑うが、意を決したように走り出した。壁に設置された梯子を使い、2階に上がろうとして……
「待ちやがれ!!」
キングが叫んだ。
私までビクッとするような、激しい叫びだった。
「勝手に仕切ってんじゃねえよ、クソ女。まだ俺は降参してねーし、むしろこれからが本番だろ?」
「……!」
キングがマスクを掴んだ。
「まさか……だめです……私のために、そんな」
「奈々子さん!?」
倒れそうになる私をエミさんが支えた。手を握り合い、彼を見下ろす。
「あら、マスクを取るの? いまさら無駄なんじゃない? 奈々子を人質にするし、あんたの負けはもう確定でしょ」
「だから仕切るなって言ってんだよ、このドブス」
「……はあ!?」
男たちがギョッとする。
綾華の顔が歪み、みるみる真っ赤になるのが分かった。
「わ、私がドブスですって?」
「ああ、そうだよ。お前ほど醜い女を見たことがねえ。それに比べて、俺の花嫁の美しさといったら……たとえようのないほど、清らかな女性だぜ」
ぽかんとする綾華。
私はもう、今にも気絶しそうだ。
「なにが会社のイメージだ。なにがトップシークレットだよ。惚れた女一人守れねえでヒーローと言えるか? なあ、そうだろ、奈々子!!」
キングが雄叫びを上げ、マスクをむしり取った。怪我をしたほうの腕を振り上げ、綾華に向かって投げつける。
「きゃあ!!?」
まともに顔に当たり、綾華はバランスを崩して尻餅をつく。
猿のマスクが床に転がった。
「な、奈々子さん。あの人は」
「……うん」
本当に、なんて人だろう。いつもいつも私を驚かせてばかり。
こんなこと、思いもよらなかった。
「イヤッホウ!! 奈々子、俺は解放されたぜえ!」
私を見上げ、サムアップ。
堂々と胸を張るキング……素顔の由比織人を、皆が注目した。
綾華の笑い声が響き渡る。男たちは困惑し、どうすべきか分からない様子。
キングは私を見上げて、なぜかジッと動かずにいる。
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でも、このままでは彼が死んでしまう。そんなのは絶対に嫌だ!
「ほら、あんたたち、なにぼんやりしてるのさ。早く捕まえて、ここまで引きずり下ろすんだよ。バケザルとまとめて処刑してやる!」
男たちは一瞬戸惑うが、意を決したように走り出した。壁に設置された梯子を使い、2階に上がろうとして……
「待ちやがれ!!」
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「……!」
キングがマスクを掴んだ。
「まさか……だめです……私のために、そんな」
「奈々子さん!?」
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「あら、マスクを取るの? いまさら無駄なんじゃない? 奈々子を人質にするし、あんたの負けはもう確定でしょ」
「だから仕切るなって言ってんだよ、このドブス」
「……はあ!?」
男たちがギョッとする。
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「わ、私がドブスですって?」
「ああ、そうだよ。お前ほど醜い女を見たことがねえ。それに比べて、俺の花嫁の美しさといったら……たとえようのないほど、清らかな女性だぜ」
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「きゃあ!!?」
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「な、奈々子さん。あの人は」
「……うん」
本当に、なんて人だろう。いつもいつも私を驚かせてばかり。
こんなこと、思いもよらなかった。
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