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独身最後の贅沢
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一人になりたいとき、私はふらりと旅に出る。
といっても、近場のリーズナブルな温泉ホテルに一泊するだけのショートトリップだ。仕事帰りにバスで直行し、大きなお風呂に浸かって心身にたまった疲れを癒すのが、地味に生きる私の楽しみである。
「でも、今回は特別だもんね」
特急電車に乗り、アルプスを望むリゾート地へとたどり着いた。
ようやく秋らしくなってきた東京と異なり、標高1500mの高原は早くも冬の世界である。
私はタクシーを降りると、白い景色のなか静かにたたずむ宿を見上げた。
三年前にオープンしたばかりの高級ホテル「まゆき」――日本の美しい四季をコンセプトに、各地の温泉地にハイグレードなホテルを展開する三保コンフォートの最新施設である。
旅行雑誌の記事で知り、いつか訪れたいと思っていた。
だけど、平日素泊まりですら一泊五万円という宿泊料が予約をためらわせた。しかも私が泊まりたいのはさらに高額のスイートルームである。
そんな贅沢をすれば身のほど知らずだと家族に叱られるし、自分でもそう思う。いつかなんて日は一生来ないだろうと、ほとんどあきらめていた。
憧れのホテルを前に、複雑な感情がこみあげてくる。
「私に自由なんてない。せめて最後に、思いっきり贅沢しよう」
瞼を拭い、憧れの宿へと足を進めた。
といっても、近場のリーズナブルな温泉ホテルに一泊するだけのショートトリップだ。仕事帰りにバスで直行し、大きなお風呂に浸かって心身にたまった疲れを癒すのが、地味に生きる私の楽しみである。
「でも、今回は特別だもんね」
特急電車に乗り、アルプスを望むリゾート地へとたどり着いた。
ようやく秋らしくなってきた東京と異なり、標高1500mの高原は早くも冬の世界である。
私はタクシーを降りると、白い景色のなか静かにたたずむ宿を見上げた。
三年前にオープンしたばかりの高級ホテル「まゆき」――日本の美しい四季をコンセプトに、各地の温泉地にハイグレードなホテルを展開する三保コンフォートの最新施設である。
旅行雑誌の記事で知り、いつか訪れたいと思っていた。
だけど、平日素泊まりですら一泊五万円という宿泊料が予約をためらわせた。しかも私が泊まりたいのはさらに高額のスイートルームである。
そんな贅沢をすれば身のほど知らずだと家族に叱られるし、自分でもそう思う。いつかなんて日は一生来ないだろうと、ほとんどあきらめていた。
憧れのホテルを前に、複雑な感情がこみあげてくる。
「私に自由なんてない。せめて最後に、思いっきり贅沢しよう」
瞼を拭い、憧れの宿へと足を進めた。
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