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強引なお誘い
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「ああ……よく眠った」
私は体を起こすと、大きく伸びをしてから窓に目をやる。
「もう真っ暗……」
部屋を明るくして時計を見ると、午後6時を過ぎていた。
少し肌寒く感じる。
「ちょっと寝すぎたかな」
でも、頭がすっきりとして体も軽い。これなら温泉に入れるし、レストランで食事もできる。
ディナーは午後7時の予約だ。
私は部屋だけでなく、ホテル自慢の温泉と料理を楽しみにしていた。
変態男に水を差され、気分も時間もロスしたが、旅はまだまだ続く。
気を取り直して、贅沢な時間を堪能しよう。
うきうきしながらベッドを出ようとしたところに、サイドテーブルの電話が鳴った。
そういえば、関根さんが食事について相談させてくださいと言っていた。おそらくその電話だと思い、受話器を取る。
『お休みのところ申しわけございません。大月様、おかげんはいかがでしょうか』
やはり関根さんだった。
「今ちょうど起きたところです。ぐっすり眠って、元気になりました」
体調が戻ったことを話すと、彼女は「良かったです」と安堵したのち、食事の件について切り出す。
私はもちろん、予定どおりレストランで食事すると答えたが……
『実は、先ほどCEOに大月様の意向をお伝えしたのですが、やはりどうしても、お詫びがしたいとのことで……』
「えっ?」
食事をともにしたいという、再度のお誘いだった。
しかも関根さんによると、CEOはすでにディナーをセッティングして、私の返事を待っているとのこと。
(な、なぜそこまで)
せっかくのお誘いだが、自由を満喫したい私にとって、少しばかり迷惑な話だった。
三保コンフォートのトップは、かなり強引なタイプらしい。
正直、そういう人はあまり好きではない。
だけど私は、断ったらどうなるのか考えてしまう。
昔を思い出して……
「分かりました。じゃあ、少しだけなら……」
『そうですか、ありがとうございます!』
関根さんが助かったというように声を上げた。良い返事をもらってこいと厳命されたのだろう。
CEOの性格を想像し、私はますます嫌な気持ちになる。
『重ね重ね、申しわけございません。それでは、七時にお迎えに上がりますので、お部屋でお待ちください』
「はい。よろしくお願いします」
受話器を置いて、ため息をつく。
楽しみにしていた食事が、なんてことだろう。
「でも、重ね重ね……って?」
変態男の件は、ホテルが悪いわけじゃないのに。そもそもCEOが直接お詫びなんて大げさな気がする。
とにかくやっぱり、変態男のせいだ。
猿のマスクを思い出して不愉快になりながら、身支度を始めた。
私は体を起こすと、大きく伸びをしてから窓に目をやる。
「もう真っ暗……」
部屋を明るくして時計を見ると、午後6時を過ぎていた。
少し肌寒く感じる。
「ちょっと寝すぎたかな」
でも、頭がすっきりとして体も軽い。これなら温泉に入れるし、レストランで食事もできる。
ディナーは午後7時の予約だ。
私は部屋だけでなく、ホテル自慢の温泉と料理を楽しみにしていた。
変態男に水を差され、気分も時間もロスしたが、旅はまだまだ続く。
気を取り直して、贅沢な時間を堪能しよう。
うきうきしながらベッドを出ようとしたところに、サイドテーブルの電話が鳴った。
そういえば、関根さんが食事について相談させてくださいと言っていた。おそらくその電話だと思い、受話器を取る。
『お休みのところ申しわけございません。大月様、おかげんはいかがでしょうか』
やはり関根さんだった。
「今ちょうど起きたところです。ぐっすり眠って、元気になりました」
体調が戻ったことを話すと、彼女は「良かったです」と安堵したのち、食事の件について切り出す。
私はもちろん、予定どおりレストランで食事すると答えたが……
『実は、先ほどCEOに大月様の意向をお伝えしたのですが、やはりどうしても、お詫びがしたいとのことで……』
「えっ?」
食事をともにしたいという、再度のお誘いだった。
しかも関根さんによると、CEOはすでにディナーをセッティングして、私の返事を待っているとのこと。
(な、なぜそこまで)
せっかくのお誘いだが、自由を満喫したい私にとって、少しばかり迷惑な話だった。
三保コンフォートのトップは、かなり強引なタイプらしい。
正直、そういう人はあまり好きではない。
だけど私は、断ったらどうなるのか考えてしまう。
昔を思い出して……
「分かりました。じゃあ、少しだけなら……」
『そうですか、ありがとうございます!』
関根さんが助かったというように声を上げた。良い返事をもらってこいと厳命されたのだろう。
CEOの性格を想像し、私はますます嫌な気持ちになる。
『重ね重ね、申しわけございません。それでは、七時にお迎えに上がりますので、お部屋でお待ちください』
「はい。よろしくお願いします」
受話器を置いて、ため息をつく。
楽しみにしていた食事が、なんてことだろう。
「でも、重ね重ね……って?」
変態男の件は、ホテルが悪いわけじゃないのに。そもそもCEOが直接お詫びなんて大げさな気がする。
とにかくやっぱり、変態男のせいだ。
猿のマスクを思い出して不愉快になりながら、身支度を始めた。
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