一億円の花嫁

藤谷 郁

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ロマンス小説!?

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「なるほど、想像以上に優れた容姿をしておる。由比殿はおそらく、会社のトップであると同時に、ブランドイメージなのだな。特に、おなごの客に対して」
「お、おなご……?」

 私は、そうかと思った。
 三保コンフォートのCEOがどんな人なのか、私は知らなかった。でも、もし知っていたら、確実にファンになっている。
 由比さんのイメージは、高級ホテルのブランドに相応しい。美しく、上品で、どこまでも優雅な空気感……

女子おなごのファンが多いゆえ、見合いの情報が漏れたら、経営に影響が出るのだろう。株で言えば、大暴落よ」
「そ、そんなに?」

 だけど由比さんなら、有り得なくもない。何しろ彼は、創業者一族の御曹司にして会社のトップ。容姿端麗で、経営の才覚にも恵まれている。しかも独身とくれば、多くの女性が魅力を感じるはずだ。

 私だって、そうだったもの。彼が独り身と聞いて、どれだけほっとしたか。
 芸能界でも、推しの結婚でファン離れが加速する現象が、多々あるではないか。

「経営者というのは、いっときのことでも暴落を避けたいのじゃ。投資に詳しい仲間が、前に言っておった」
「そっか。由比さんのプライベートが株価に関わるのは、確かなのね」
 
 由比さんは、実はかなりの有名人で、人気者なのだ。そんな彼がお見合い、ましてや相手が私みたいな女とバレたらイメージが傷付き、さらに株価がダダ下がりになるのでは?

 さっきまで舞い上がっていたのに、今度はプレッシャーに押しつぶされそうだ。

「そう考えると、手放しでは喜べない話だよね。ロマンス小説みたいに、上手くいかないかも」
「ロマンス小説ねえ」

 花ちゃんがフフンと笑った。

「事実は小説よりも奇なりと言うではないか。予想もつかない奇跡が起きるだろうて」

 奇跡。
 ロマンス小説を上回るような、驚きの展開……という意味かしら。
 よく分からないが、いろんな意味でドキドキしてきた。

「奈々子はまったく、小心者よのう。そもそも、見合い相手が由比殿と決まったわけではない。父君のヒントも、曖昧なものじゃ。会ってみなければ分からんわ」
「う、うん。それは、そうだけど」

 由比さんの他に、当てはまる人はいない。私は、ほとんど確信している。

「それで、奈々子はどうするのだ。由比殿が相手であったなら、結婚するのか?」

 そんなの、考えるまでもない。彼と釣り合わないのは承知してるけど、プレッシャーに負けそうだけど、もし、彼が望んでくれるのなら……

「私、奇跡を信じる」
「うむ。それならわしも、全力で応援するぞ。頑張れ、奈々子!」

 花ちゃんのエールに、笑顔で応えた。

 お見合いは明後日。
 こんな私でも、ヒロインに……なれますように!
 
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