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14歳の頃
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「えっ、倒産!?」
莉央のお父さんが経営する和菓子の会社が経営の危機だと初めて知った。売上げが低迷しており、しかも近年の物価高で経費が嵩み、深刻な状態らしい。
「今すぐってわけじゃないよ? でも、余裕がないのは確かだし、かなりヤバいみたい。社員さんが営業を頑張ってるけど、なかなか売上げが伸びなくて。あと、お姉ちゃんが……」
莉央のお姉さんは「かのう屋」の後継ぎである。結婚が決まっていたが、状況が状況なので婚約破棄を考えているという。
「とにかく今、家が大変なんだ。だから、のんきに旅行してる場合じゃなくて。ただでさえ高い学費を払ってもらってるのに、遊びのお金まで要求できないよ。そんなこと気にせず友達付き合いしろって、お父さんは言ってくれるけど……今度は海外なんて、ホント無理」
莉央は力なくつぶやき、うなだれた。
「そんな事情があったんだね」
「うん。だけどみんなには言えなくて、成績のせいにして旅行を断ったの。特に綾華には、お金がないなんて知られたくない。惨めすぎるもん」
なんとなく分かる気がした。
綾華は本物のお嬢様であり、私たちとは金銭感覚が違う。
友達だからこそコンプレックスを感じてしまうのだ。
「ごめん。私、なにも知らなくて……」
「ううん、謝らないで。それどころか、奈々子に話して胸のつかえが取れたっていうか、聞いてくれて感謝してるよ!」
莉央の言葉に、私が慰められる。
初めて会った日と同じ屈託のない笑顔が、そこにあった。
「綾華も夏樹も好きだけど、やっぱり奈々子がいちばんの親友だなって思う」
「莉央……」
「あはっ、なんか照れちゃうな」
いちばんの親友。
花ちゃん以外でそんなことを言ってくれたのは、莉央が初めてだ。
思いもよらぬほどの深い感動を覚える。
明日、綾華と話そう。莉央のために、私がなんとかする!
どんどん勇気がわいてくる。その源泉は間違いなく『友情』だった。
次の日、私はいつもより早く登校した。
朝陽が差し込む教室は生徒が数人いるだけで、とても静かである。
「なんかドキドキしてきた」
私がなんとかすると莉央に約束した。しかしいざとなると緊張し、うまく説得できるか自信がなくなってくる。
「綾華は意地になってるだけだから、私が橋渡しをしなくちゃ。大丈夫、大丈夫。きっと分かってくれる」
綾華と仲直りがしたいという莉央の気持ちを、率直に伝えるのだ。そして、旅行に行けない理由も。『事情がバレるのは恥ずかしいけど、仲直りのためなら正直になる』と、彼女も覚悟を決めている。
友達だもの、きっと分かってくれるはず。
昨日打ち合わせたとおり、莉央はホームルームが始まるギリギリで教室に入る予定だ。それまでに綾華と話さなければならない。
「おはよう、奈々子。えらく早いじゃん」
「わっ!」
いきなり肩を叩かれ、ビクッとした。
振り向くと夏樹がいて、その隣で綾華がクスクス笑っている。
「もう、夏樹ってば力強すぎ。奈々子は繊細なんだから気をつけてよね」
「ははっ、悪い悪い」
二人のいつもの調子といつものやり取りを見て、緊張がほぐれた。
よしっ、今が一番のチャンス。
彼女たちが椅子に座るのを待ち、私は切り出した。
「綾華、あのね……ちょっと、話があるんだけど」
「なあに? あらたまって」
「えっと……そろそろ莉央と」
「あっ、そうだ!!」
莉央と仲直りしようよ。
と言おうとしたところに、綾華の声が被さる。思いもよらぬほどの強い響きに、言葉が引っ込んだ。
「莉央といえば、奈々子にも言っておかなくちゃ。ねっ、夏樹?」
「あー、うん。そうだったな」
綾華が目を輝かせて、私のほうへ身を乗り出す。夏樹が複雑そうに笑うのを見て、嫌な予感がした。
「私、決めたの。今日から本格的に莉央を外そうって」
莉央のお父さんが経営する和菓子の会社が経営の危機だと初めて知った。売上げが低迷しており、しかも近年の物価高で経費が嵩み、深刻な状態らしい。
「今すぐってわけじゃないよ? でも、余裕がないのは確かだし、かなりヤバいみたい。社員さんが営業を頑張ってるけど、なかなか売上げが伸びなくて。あと、お姉ちゃんが……」
莉央のお姉さんは「かのう屋」の後継ぎである。結婚が決まっていたが、状況が状況なので婚約破棄を考えているという。
「とにかく今、家が大変なんだ。だから、のんきに旅行してる場合じゃなくて。ただでさえ高い学費を払ってもらってるのに、遊びのお金まで要求できないよ。そんなこと気にせず友達付き合いしろって、お父さんは言ってくれるけど……今度は海外なんて、ホント無理」
莉央は力なくつぶやき、うなだれた。
「そんな事情があったんだね」
「うん。だけどみんなには言えなくて、成績のせいにして旅行を断ったの。特に綾華には、お金がないなんて知られたくない。惨めすぎるもん」
なんとなく分かる気がした。
綾華は本物のお嬢様であり、私たちとは金銭感覚が違う。
友達だからこそコンプレックスを感じてしまうのだ。
「ごめん。私、なにも知らなくて……」
「ううん、謝らないで。それどころか、奈々子に話して胸のつかえが取れたっていうか、聞いてくれて感謝してるよ!」
莉央の言葉に、私が慰められる。
初めて会った日と同じ屈託のない笑顔が、そこにあった。
「綾華も夏樹も好きだけど、やっぱり奈々子がいちばんの親友だなって思う」
「莉央……」
「あはっ、なんか照れちゃうな」
いちばんの親友。
花ちゃん以外でそんなことを言ってくれたのは、莉央が初めてだ。
思いもよらぬほどの深い感動を覚える。
明日、綾華と話そう。莉央のために、私がなんとかする!
どんどん勇気がわいてくる。その源泉は間違いなく『友情』だった。
次の日、私はいつもより早く登校した。
朝陽が差し込む教室は生徒が数人いるだけで、とても静かである。
「なんかドキドキしてきた」
私がなんとかすると莉央に約束した。しかしいざとなると緊張し、うまく説得できるか自信がなくなってくる。
「綾華は意地になってるだけだから、私が橋渡しをしなくちゃ。大丈夫、大丈夫。きっと分かってくれる」
綾華と仲直りがしたいという莉央の気持ちを、率直に伝えるのだ。そして、旅行に行けない理由も。『事情がバレるのは恥ずかしいけど、仲直りのためなら正直になる』と、彼女も覚悟を決めている。
友達だもの、きっと分かってくれるはず。
昨日打ち合わせたとおり、莉央はホームルームが始まるギリギリで教室に入る予定だ。それまでに綾華と話さなければならない。
「おはよう、奈々子。えらく早いじゃん」
「わっ!」
いきなり肩を叩かれ、ビクッとした。
振り向くと夏樹がいて、その隣で綾華がクスクス笑っている。
「もう、夏樹ってば力強すぎ。奈々子は繊細なんだから気をつけてよね」
「ははっ、悪い悪い」
二人のいつもの調子といつものやり取りを見て、緊張がほぐれた。
よしっ、今が一番のチャンス。
彼女たちが椅子に座るのを待ち、私は切り出した。
「綾華、あのね……ちょっと、話があるんだけど」
「なあに? あらたまって」
「えっと……そろそろ莉央と」
「あっ、そうだ!!」
莉央と仲直りしようよ。
と言おうとしたところに、綾華の声が被さる。思いもよらぬほどの強い響きに、言葉が引っ込んだ。
「莉央といえば、奈々子にも言っておかなくちゃ。ねっ、夏樹?」
「あー、うん。そうだったな」
綾華が目を輝かせて、私のほうへ身を乗り出す。夏樹が複雑そうに笑うのを見て、嫌な予感がした。
「私、決めたの。今日から本格的に莉央を外そうって」
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