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スイートホーム
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婚姻届の提出は、驚くほどあっさりしていた。不備があれば後日連絡が来るらしい。ちなみに、届出日の日付が婚姻日になるとのこと。
とにかく私と由比さんは正式に結婚し、無事夫婦となった。
「うおお、嬉しい!! 俺と奈々子はついに結婚したぞー!!!」
駐車場にとめた車の前で、由比さんが雄たけびを上げた。夜の街に大きく響き、私はちょっと慌てる。
「ゆ、由比さん。あの、もう少し小さな声で……」
「結婚記念日は12月4日。毎年盛大にお祝いしような、奈々子!」
「はい……そうしましょう」
ダメだ、何を言っても届きそうにない。
私はそそくさと車に乗り込み、シートベルトを締めた。由比さんも運転席に座るが、エンジンをかけてもすぐに出ようとしない。
こちらを不満そうに見ている。
「えっと……由比さん?」
「なんだよ、もっと一緒に喜ぼうぜ。それに、由比さんじゃなくて織人だろ? 夫を苗字で呼ぶなんて変だよ」
「あっ、ああ……そうですね、確かに」
まだ全然夫婦になった実感がないので、曖昧な返事になる。そのせいか、彼はますます不満そうに詰め寄ってきた。
「奈々子は嬉しくないのか。俺たちは夫婦になったんだぞ。ふ、う、ふ!」
「もちろん、分かってますけど」
由比さんは興奮すると押しが強くなる。彼のことをかなり理解したつもりだし、慣れたけれど、やはり戸惑ってしまう。
「織人さんって呼んでみな?」
「今ですか!?」
「そう、今。『織人さんと結婚して、私シアワセ!』とか言ってさあ。ほら、抱きついてくるとか?」
「な、何を言って……」
「なあなあ奈々子、恥ずかしがらずに呼んでみてくれよ。俺の目を見つめて」
「そんなこと言われても。ちょっと……あ、あの」
グイグイ迫ってくる。目をキラキラさせて、一生懸命に。
この人はきっと大真面目なのだ。私を困らせようとしているのではない。
恥ずかしくても、応えてあげなければ。
(そうよね。夫婦になったんだもの)
私はうなずくと、まっすぐに彼を見返した。大真面目になって。
「織人さん」
彼が一瞬、ハッとする。そしてすぐに目尻を下げて、デレデレの顔になった。
「そうそう、その調子。俺たちは夫婦なんだからな」
「はい、織人さん。私も、あなたと結婚できて嬉しい。とても、幸せです」
「奈々子……」
格好をつけず、ありのままの気持ちをあふれさせる。本当に、子どもみたいな人だ。
こんなに逞しい大人の男性なのに、可愛いとすら思える。
「これからの人生、よろしくな。いつも、どんな時も二人は一緒だ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
きちんと返すと、由比さん……織人さんは満足そうに微笑み、前を向いた。ゆっくりとアクセルを踏み、雪の降る街へと滑り出す。
「すっかり遅くなっちまったな。でも安心しろ。奈々子と俺の帰る場所は同じだし、誰に気兼ねすることなく、ずっとずーっと、くっついていられる」
「……?」
何を言ったのか、よく分からなかった。
聞き間違いだろうか。
「帰る場所が、同じ?」
「そうだよ。新居を用意したって、言わなかったっけ」
「新居……」
「そうそう、今日から俺たちが暮らす新築マンション。スイートホームってやつだ」
「……」
返事ができない。
想像を超える押しの強さと、わがままな策略に驚きすぎて。
ウキウキする彼の隣で、私はまたしても戸惑うのだった。
とにかく私と由比さんは正式に結婚し、無事夫婦となった。
「うおお、嬉しい!! 俺と奈々子はついに結婚したぞー!!!」
駐車場にとめた車の前で、由比さんが雄たけびを上げた。夜の街に大きく響き、私はちょっと慌てる。
「ゆ、由比さん。あの、もう少し小さな声で……」
「結婚記念日は12月4日。毎年盛大にお祝いしような、奈々子!」
「はい……そうしましょう」
ダメだ、何を言っても届きそうにない。
私はそそくさと車に乗り込み、シートベルトを締めた。由比さんも運転席に座るが、エンジンをかけてもすぐに出ようとしない。
こちらを不満そうに見ている。
「えっと……由比さん?」
「なんだよ、もっと一緒に喜ぼうぜ。それに、由比さんじゃなくて織人だろ? 夫を苗字で呼ぶなんて変だよ」
「あっ、ああ……そうですね、確かに」
まだ全然夫婦になった実感がないので、曖昧な返事になる。そのせいか、彼はますます不満そうに詰め寄ってきた。
「奈々子は嬉しくないのか。俺たちは夫婦になったんだぞ。ふ、う、ふ!」
「もちろん、分かってますけど」
由比さんは興奮すると押しが強くなる。彼のことをかなり理解したつもりだし、慣れたけれど、やはり戸惑ってしまう。
「織人さんって呼んでみな?」
「今ですか!?」
「そう、今。『織人さんと結婚して、私シアワセ!』とか言ってさあ。ほら、抱きついてくるとか?」
「な、何を言って……」
「なあなあ奈々子、恥ずかしがらずに呼んでみてくれよ。俺の目を見つめて」
「そんなこと言われても。ちょっと……あ、あの」
グイグイ迫ってくる。目をキラキラさせて、一生懸命に。
この人はきっと大真面目なのだ。私を困らせようとしているのではない。
恥ずかしくても、応えてあげなければ。
(そうよね。夫婦になったんだもの)
私はうなずくと、まっすぐに彼を見返した。大真面目になって。
「織人さん」
彼が一瞬、ハッとする。そしてすぐに目尻を下げて、デレデレの顔になった。
「そうそう、その調子。俺たちは夫婦なんだからな」
「はい、織人さん。私も、あなたと結婚できて嬉しい。とても、幸せです」
「奈々子……」
格好をつけず、ありのままの気持ちをあふれさせる。本当に、子どもみたいな人だ。
こんなに逞しい大人の男性なのに、可愛いとすら思える。
「これからの人生、よろしくな。いつも、どんな時も二人は一緒だ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
きちんと返すと、由比さん……織人さんは満足そうに微笑み、前を向いた。ゆっくりとアクセルを踏み、雪の降る街へと滑り出す。
「すっかり遅くなっちまったな。でも安心しろ。奈々子と俺の帰る場所は同じだし、誰に気兼ねすることなく、ずっとずーっと、くっついていられる」
「……?」
何を言ったのか、よく分からなかった。
聞き間違いだろうか。
「帰る場所が、同じ?」
「そうだよ。新居を用意したって、言わなかったっけ」
「新居……」
「そうそう、今日から俺たちが暮らす新築マンション。スイートホームってやつだ」
「……」
返事ができない。
想像を超える押しの強さと、わがままな策略に驚きすぎて。
ウキウキする彼の隣で、私はまたしても戸惑うのだった。
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