132 / 198
幼なじみ襲来!(続)
3
しおりを挟む
「『月刊史跡探訪』の記事、毎回楽しく拝読しています。戦国時代から江戸末期にかけての史跡を分かりやすく、面白く紹介されてますよね。写真も掲載されていて、でもぱっと見てご本人とは気づかず……いや、失礼しました」
翼さんが両手を差し出し、花ちゃんと握手した。
「はっはっは。なんと羽根田殿はわしをご存知であったか。しかしブログは読まれていないようじゃな」
「す、すみません」
花ちゃんの指摘に、少し罰が悪そうにする。
「時々は拝見していますが、毎日は追いきれず。もともとブログやSNSは見ないほうなので」
「いやいや、雑誌を読んでもらえるだけでもありがたいこと。また、読者から直に感想を聞けるのは筆者として最上の喜びでござる。こうして羽根田殿にお会いできて、本日はまことによき日じゃ!」
花ちゃんも興奮してきたのか、かなりの早口だ。記事を褒められて、とても嬉しそう。
「こちらこそ、お会いできて光栄です。しかし、二刀先生がまさか奈々子さんの幼なじみとは……驚きました!」
「ちょっと待ってくれよ」
盛り上がる翼さんを遮り、織人さんが疑問を向けた。
「花ちゃんの専門は時代劇と大河ドラマだよな。翼が歴史ファンだなんて知らなかったぞ」
「ああ、それは」
翼さんが、さもありなんという風に答える。
「『月刊史跡探訪』は歴史を扱っているが、ジャンルは旅雑誌なんだ。旅行に関する本は大体網羅してるから、二刀先生の記事を発見することができた。連載1回目から凄く面白くて、毎回楽しみにしてるんだよ」
なるほど、翼さんの興味は歴史というより旅行にあったのだ。
それにしても、さっきから花ちゃんの鼻息が荒い。目の前で読者に褒められ、興奮してきたのか。
「なるほどねえ。でもまあ、二人気が合いそうで良かったぜ。なっ、奈々子」
「はい」
私は花ちゃんも翼さんも好きだ。二人が友達になってくれたらすごく嬉しい。
「二刀先生、サインをいただけますか」
「先生はよしてくだされ。花ちゃんでおっけーでござるよ、翼殿」
楽しげなやり取りを見てホッとする。織人さんと目を合わせ、思わず微笑んでしまった。
「ところで翼、今日はまたどうしたんた。奈々子に直接礼を言いたいなんて、今さらだろう」
「ああ、それは……」
花ちゃんとひとしきり盛り上がった後、翼さんがかしこまった態度で私たちに向き合う。
本来の用事を思い出したのだ。
「この前の、見合いのことで、ちょっとな」
「何かあったのか」
「うん。実は昨日……」
彼は言いかけるが、隣に座る花ちゃんをチラリと見た。事情を知らない人の前で、用件を切り出して良いのか迷っているのだ。
「翼殿。もしよければ、遠慮なく話してくだされ。わしも西野綾華についてはよう知っておるし、情報があるなら教えていただきたい。見合いされた件も承知しておるゆえ」
「えっ、そうなんですか?」
驚く翼さんに、織人さんが簡単に説明した。花ちゃんが綾華に抱く感情と、その理由も。
「そうだったんですか。それなら、二刀先……花さんにもぜひお聞かせしたいですね。なぜ俺があらためて、奈々子さんにお礼を言いたくなったのか」
翼さんが手元のバッグからタブレットを取り出し、テーブルに置いた。
「とりあえず、これを見てください。織人、そして奈々子さんも」
「ん? なんだよこれ、写真?」
開かれたのは写真アプリ。翼さんがサムネイルから一枚を選んで表示する。
「あっ……」
ドキッとした。
そこに写っているのは、見覚えのある空間。何組かのカップルが寄り添い合い、一方を見つめている。
「なんだか薄暗い場所じゃのう……おや、日付と時間が表示されておるな。もしや、防犯カメラの写真か?」
「ええ、花さん。そのとおりです」
織人さんと顔を見合わせた。
「おい、これってもしかして……」
「そうだ。横浜のビルの、お前たちがデートした日の展望フロアだよ」
翼さんが両手を差し出し、花ちゃんと握手した。
「はっはっは。なんと羽根田殿はわしをご存知であったか。しかしブログは読まれていないようじゃな」
「す、すみません」
花ちゃんの指摘に、少し罰が悪そうにする。
「時々は拝見していますが、毎日は追いきれず。もともとブログやSNSは見ないほうなので」
「いやいや、雑誌を読んでもらえるだけでもありがたいこと。また、読者から直に感想を聞けるのは筆者として最上の喜びでござる。こうして羽根田殿にお会いできて、本日はまことによき日じゃ!」
花ちゃんも興奮してきたのか、かなりの早口だ。記事を褒められて、とても嬉しそう。
「こちらこそ、お会いできて光栄です。しかし、二刀先生がまさか奈々子さんの幼なじみとは……驚きました!」
「ちょっと待ってくれよ」
盛り上がる翼さんを遮り、織人さんが疑問を向けた。
「花ちゃんの専門は時代劇と大河ドラマだよな。翼が歴史ファンだなんて知らなかったぞ」
「ああ、それは」
翼さんが、さもありなんという風に答える。
「『月刊史跡探訪』は歴史を扱っているが、ジャンルは旅雑誌なんだ。旅行に関する本は大体網羅してるから、二刀先生の記事を発見することができた。連載1回目から凄く面白くて、毎回楽しみにしてるんだよ」
なるほど、翼さんの興味は歴史というより旅行にあったのだ。
それにしても、さっきから花ちゃんの鼻息が荒い。目の前で読者に褒められ、興奮してきたのか。
「なるほどねえ。でもまあ、二人気が合いそうで良かったぜ。なっ、奈々子」
「はい」
私は花ちゃんも翼さんも好きだ。二人が友達になってくれたらすごく嬉しい。
「二刀先生、サインをいただけますか」
「先生はよしてくだされ。花ちゃんでおっけーでござるよ、翼殿」
楽しげなやり取りを見てホッとする。織人さんと目を合わせ、思わず微笑んでしまった。
「ところで翼、今日はまたどうしたんた。奈々子に直接礼を言いたいなんて、今さらだろう」
「ああ、それは……」
花ちゃんとひとしきり盛り上がった後、翼さんがかしこまった態度で私たちに向き合う。
本来の用事を思い出したのだ。
「この前の、見合いのことで、ちょっとな」
「何かあったのか」
「うん。実は昨日……」
彼は言いかけるが、隣に座る花ちゃんをチラリと見た。事情を知らない人の前で、用件を切り出して良いのか迷っているのだ。
「翼殿。もしよければ、遠慮なく話してくだされ。わしも西野綾華についてはよう知っておるし、情報があるなら教えていただきたい。見合いされた件も承知しておるゆえ」
「えっ、そうなんですか?」
驚く翼さんに、織人さんが簡単に説明した。花ちゃんが綾華に抱く感情と、その理由も。
「そうだったんですか。それなら、二刀先……花さんにもぜひお聞かせしたいですね。なぜ俺があらためて、奈々子さんにお礼を言いたくなったのか」
翼さんが手元のバッグからタブレットを取り出し、テーブルに置いた。
「とりあえず、これを見てください。織人、そして奈々子さんも」
「ん? なんだよこれ、写真?」
開かれたのは写真アプリ。翼さんがサムネイルから一枚を選んで表示する。
「あっ……」
ドキッとした。
そこに写っているのは、見覚えのある空間。何組かのカップルが寄り添い合い、一方を見つめている。
「なんだか薄暗い場所じゃのう……おや、日付と時間が表示されておるな。もしや、防犯カメラの写真か?」
「ええ、花さん。そのとおりです」
織人さんと顔を見合わせた。
「おい、これってもしかして……」
「そうだ。横浜のビルの、お前たちがデートした日の展望フロアだよ」
13
あなたにおすすめの小説
You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】
てらだりょう
恋愛
高身長・イケメン・優しくてあたしを溺愛する彼氏はなんだかんだ優しいだんなさまへ進化。
変態度も進化して一筋縄ではいかない新婚生活は甘く・・・はない!
恋人から夫婦になった尊とあたし、そして未来の家族。あたしたちを待つ未来の家族とはいったい??
You Could Be Mine【改訂版】の第2部です。
↑後半戦になりますので前半戦からご覧いただけるとよりニヤニヤ出来るので是非どうぞ!
※ぱーといちに引き続き昔の作品のため、現在の状況にそぐわない表現などございますが、設定等そのまま使用しているためご理解の上お読みいただけますと幸いです。
【完】ソレは、脱がさないで
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング2位
パッとしない私を少しだけ特別にしてくれるランジェリー。
ランジェリー会社で今日も私の胸を狙ってくる男がいる。
関連物語
『経理部の女王様が落ちた先には』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高4位
ベリーズカフェさんにて総合ランキング最高4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
『FUJIメゾン・ビビ~インターフォンを鳴らして~』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高11位
『わたしを見て 触って キスをして 恋をして』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高25位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『ムラムラムラモヤモヤモヤ今日も秘書は止まらない』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高32位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
網代さんを怒らせたい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。
しかし彼曰く、これは練習なのらしい。
それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。
それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。
それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。
和倉千代子(わくらちよこ) 23
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
デザイナー
黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟
ただし、そう呼ぶのは網代のみ
なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている
仕事も頑張る努力家
×
網代立生(あじろたつき) 28
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
営業兼事務
背が高く、一見優しげ
しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く
人の好き嫌いが激しい
常識の通じないヤツが大嫌い
恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
わたしの愉快な旦那さん
川上桃園
恋愛
あまりの辛さにブラックすぎるバイトをやめた。最後塩まかれたけど気にしない。
あ、そういえばこの店入ったことなかったな、入ってみよう。
「何かお探しですか」
その店はなんでも取り扱うという。噂によると彼氏も紹介してくれるらしい。でもそんなのいらない。彼氏だったらすぐに離れてしまうかもしれないのだから。
店員のお兄さんを前にてんぱった私は。
「旦那さんが欲しいです……」
と、斜め上の回答をしてしまった。でもお兄さんは優しい。
「どんな旦那さんをお望みですか」
「え、えっと……愉快な、旦那さん?」
そしてお兄さんは自分を指差した。
「僕が、お客様のお探しの『愉快な旦那さん』ですよ」
そこから始まる恋のお話です。大学生女子と社会人男子(御曹司)。ほのぼのとした日常恋愛もの
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる