一億円の花嫁

藤谷 郁

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幼なじみ襲来!(続)

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「なんと礼儀正しく、律儀なおとこなのじゃ!」

 私たちのやり取りをじっと見守っていた花ちゃんが、急に立ち上がった。
 キラキラと瞳を輝かせている。

「お主こそ立派なサムライでごさる。今に良縁が訪れるであろうこと、わしが保証するぞ!」
「ど、どうもありがとうございます」

 花ちゃんに励まされ、照れくさそうに笑う翼さん。なんだか微笑ましい光景だった。

「あ、そうだ。もう一つ、伝えておくことがあった」

 翼さんがタブレットを仕舞おうとして、手を止めた。テーブルに置き直してアプリを開き、さっきの写真を表示する。

「なんだ、まだ何かあるのか」
「ああ、ちょっとな。この男について、親父が気になることを言ってたんだ。どうでもいい情報かもしれんが」

 皆で額を寄せ合い、タブレットを覗き込む。
 翼さんが指差したのは、綾華の恋人であろう男性だ。

「こいつがどうした。九郎さんの知ってるやつなのか」
「いいや。知り合いではないが、とある女社長が連れてるのを、パーティーで見かけたとかなんとか」
「女社長?」

 翼さんは、「親父の記憶が確かなら」と前置きしてから言った。

 それは、各界の有力者が集まる慈善パーティーでのこと。多くの招待客が伴侶などパートナーを伴っていたが、一際目を引く存在があった。
 世界的に有名な情報通信企業のトップである女社長が、写真の人物によく似た男を連れていたという。彼女は50代の独身であり、男は恋人か婚約者か……と、周囲の注目を浴びる。
 ただ、ずいぶん年下で、いかにもこなれた雰囲気の美青年である。事情通の間から、高級ナイトクラブのオーナーとの噂が流れてきた。

「ナイトクラブ……」

 織人さんと私が同時につぶやく。
 この頃綾華はクラブで遊んでいるようだと、夏樹が話していた。

「どうやら女社長の愛人らしい」
「それが、この男だったのか」
「ああ。親父が言うには」

 もしそうなら、綾華はその『愛人』と付き合っている。恋人として……?

「九郎さんの記憶力は信用できる。おそらくそいつは、写真の男と同一人物だ。だとしたら、西野綾華も恋人ではなく愛人関係かもしれないぞ」
「そうかもしれんな」

 翼さんがため息まじりに返事する。もはや興味がなさそうだった。

「以上、西野綾華に関する情報だ。写真のデータが必要なら渡すぞ」
「サンキュー。送ってくれ」

 織人さんが翼さんのタブレットからデータをもらう。早速セキュリティチームと共有すると言った。

「セキュリティーチーム? 何の話だ」

 翼さんが怪訝そうに訊ねる。そういえば、『怪しい男』の件を彼は知らない。織人さんが詳細を教えると、険しい顔になった。

「じゃあ、この男が西野に頼まれて奈々子さんの実家周りをうろついてたってことか」
「いや、まだ推測の域だが、西野がナイトクラブのオーナーと付き合ってるとなると、信ぴょう性が増す。いろんな伝手が使えるだろうし、こいつは金で動くタイプと見た」
「女社長の愛人になるくらいだからのう」

 織人さんの言葉に、花ちゃんもうなずく。すると、翼さんもなるほどと納得した。

「まさかとは思うが、何か仕掛けてくるとしたら奈々子さんが危険だ。俺にできることがあれば協力するから、いつでも連絡をください」
「あ、ありがとう。翼さん……」

 本当に彼は義に厚い人だ。
 花ちゃんの言うとおり、まさにサムライである。





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