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王子様の未来
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両家の顔合わせという一大イベントを終えた私は、リラックスした気分で織人さんと過ごした。
ブティックで結婚指輪を選ぶ時も、いつもより自然な感じで彼に寄り添えたと思う。
二人で決めたのはシンプルなデザインのプラチナリング。
婚約指輪も嬉しかったけれど、それとはまた違うときめきを覚えた。
私はいつの間にか、前よりもずっと織人さんを好きになっている。彼が「キング」だと知っていても……
はっきりとした自覚があった。
「指輪の受け取りは2週間後か。楽しみだな」
「はい」
笑顔で返事する私を見て、織人さんが目尻を垂らす。多分彼も、私の『自覚』に気づいている。
ブティックを出たあと、街を歩いた。ブランドショップが並ぶ通りを抜けて駅前広場に着く。中央に飾られたクリスマスツリーの前で、織人さんがふいに立ち止まった。
「ま……まだ夕飯には早い時間だな。これからどうする? 今日は忙しかったし、もし疲れてるなら、マンションに帰ってもいいんだぞ?」
繋いだ手に力をこめて、私の顔を覗き込んでくる。目をキラキラと輝かせる彼に、思わず噴き出した。
「なんで笑うんだ?」
「うふっ……だって、目がすごく光ってるから」
「ええっ、そ、そんなことないだろ」
ごまかすようにまぶたをこする。
「俺は別に、変なこと考えてるわけじゃねーし。ただ、奈々子と早く二人きりになりたいなあとか……じゃなくてだな!」
「わかってます」
織人さんの目の輝き。キラキラではなく、ギラギラと言ったほうが良い。
野性的なこの輝きが、ちょっと前までは怖かったはずなのに、今は平気。
これも私の、『自覚』のせいだろう。
「外食はやめにして、何か買って家で食べましょうか」
「へっ? あ、ああ、いいね。早く帰って、のんびりしようぜ」
私の提案に、嬉しそうに返事する。
本当に分かりやすい人だ。
お義父さんは子供のようだと言うが、こんなところが織人さんの魅力だと思う。
素直で、正直で、かわいい。
「ん? なんか言ったか」
「いいえ。さ、早く行きましょう」
私が手を引っ張ると、照れた顔になる。
(かわいい……)
やっぱり私は、前よりずっと彼のことを好きになっているのだ。
「あっ、ちょっと待ってくれ」
駅ビルのデパ地下へと向かう途中、織人さんが靴を止めた。方向を変えて、エレベーター横に設置されたモニター前に進んで行く。
「へえ、スパイアクションの新作か。面白そうだな」
見ると、映画の予告編が流れている。そういえば、このビル内には映画館があった。
「スタントなしで有名なシリーズだよ。やっぱ生身の演技は迫力が違うよなあ。ガチのアクションは役者の気迫がビシビシ伝わってくるんだ」
好きなシリーズなのか、ワクワクした様子で見入っている。
「おっと、夕飯を買うんだったな。待たせてすまない」
「いえ、そんな。急がなくても大丈夫ですよ」
織人さんはアクション映画が本当に好きなのだ。
ふと、彼とお義父さんとのやり取りを思い出す。
「織人さんが好きなのは、タイガー・ウォン……という役者さんでしたよね?」
「えっ? ああ、そうだけど」
思わぬことを訊かれたという反応。
考えてみれば、これまで興味を持って質問することがなかった。
「その人が主演の映画って、やっぱりすごい迫力なんですか?」
織人さんがアクションスターに憧れるきっかけになった作品である。なぜか今、ちょっと気になっていた。
「奈々子……」
驚いた表情になり、ぐっと近づいてきた。私を見つめる眼差しは真剣そのもの。
怒った顔にも見える。
まずいことを訊いてしまったのかしらと、思わずたじろいだ。
「あ、あの、織人さん?」
「上映会するか」
「じょ……上映会?」
ぽかんとする私に、こくりと頷く。
「VHSビデオもDVDも持ってる。シアタールームでいつでも上映可能だ。実は、奈々子にずっと観てもらいたかったんだ」
「そ、そうなんですね」
「ああ。だけどな……」
織人さんはふっと目を逸らし、今度は困った顔になる。
一体、どうしたというのか。
感情の振り幅に、私は戸惑うばかり。
「なんか恥ずかしくてさ。照れるって言うか……奈々子と一緒に観たくて、でもなかなか言い出せなくてさ」
「はあ」
恥ずかしい? 照れる?
恋愛じゃなくて、アクション映画だよね。
なんだかよく分からなかった。
「そうか……ついに興味を持ってくれたか。奈々子がそこまで望むなら、ぜひ観てもらおう」
「え? いえあの、そこまでというほどでは」
「決まり! 今夜は家で上映会だ」
私の声が聞こえないようだ。
どういうわけか、ものすごく興奮している。
「となれば、ジャンクなメニューがふさわしいな。よし、ハンバーガーとかチキンとか、山ほど買っていこうぜ!」
「お、織人さん、落ち着いて……あわわ」
突如として決まった今夜の予定。
織人さんに手を引かれ、デパ地下からファーストフードへと方向転換する私だった。
ブティックで結婚指輪を選ぶ時も、いつもより自然な感じで彼に寄り添えたと思う。
二人で決めたのはシンプルなデザインのプラチナリング。
婚約指輪も嬉しかったけれど、それとはまた違うときめきを覚えた。
私はいつの間にか、前よりもずっと織人さんを好きになっている。彼が「キング」だと知っていても……
はっきりとした自覚があった。
「指輪の受け取りは2週間後か。楽しみだな」
「はい」
笑顔で返事する私を見て、織人さんが目尻を垂らす。多分彼も、私の『自覚』に気づいている。
ブティックを出たあと、街を歩いた。ブランドショップが並ぶ通りを抜けて駅前広場に着く。中央に飾られたクリスマスツリーの前で、織人さんがふいに立ち止まった。
「ま……まだ夕飯には早い時間だな。これからどうする? 今日は忙しかったし、もし疲れてるなら、マンションに帰ってもいいんだぞ?」
繋いだ手に力をこめて、私の顔を覗き込んでくる。目をキラキラと輝かせる彼に、思わず噴き出した。
「なんで笑うんだ?」
「うふっ……だって、目がすごく光ってるから」
「ええっ、そ、そんなことないだろ」
ごまかすようにまぶたをこする。
「俺は別に、変なこと考えてるわけじゃねーし。ただ、奈々子と早く二人きりになりたいなあとか……じゃなくてだな!」
「わかってます」
織人さんの目の輝き。キラキラではなく、ギラギラと言ったほうが良い。
野性的なこの輝きが、ちょっと前までは怖かったはずなのに、今は平気。
これも私の、『自覚』のせいだろう。
「外食はやめにして、何か買って家で食べましょうか」
「へっ? あ、ああ、いいね。早く帰って、のんびりしようぜ」
私の提案に、嬉しそうに返事する。
本当に分かりやすい人だ。
お義父さんは子供のようだと言うが、こんなところが織人さんの魅力だと思う。
素直で、正直で、かわいい。
「ん? なんか言ったか」
「いいえ。さ、早く行きましょう」
私が手を引っ張ると、照れた顔になる。
(かわいい……)
やっぱり私は、前よりずっと彼のことを好きになっているのだ。
「あっ、ちょっと待ってくれ」
駅ビルのデパ地下へと向かう途中、織人さんが靴を止めた。方向を変えて、エレベーター横に設置されたモニター前に進んで行く。
「へえ、スパイアクションの新作か。面白そうだな」
見ると、映画の予告編が流れている。そういえば、このビル内には映画館があった。
「スタントなしで有名なシリーズだよ。やっぱ生身の演技は迫力が違うよなあ。ガチのアクションは役者の気迫がビシビシ伝わってくるんだ」
好きなシリーズなのか、ワクワクした様子で見入っている。
「おっと、夕飯を買うんだったな。待たせてすまない」
「いえ、そんな。急がなくても大丈夫ですよ」
織人さんはアクション映画が本当に好きなのだ。
ふと、彼とお義父さんとのやり取りを思い出す。
「織人さんが好きなのは、タイガー・ウォン……という役者さんでしたよね?」
「えっ? ああ、そうだけど」
思わぬことを訊かれたという反応。
考えてみれば、これまで興味を持って質問することがなかった。
「その人が主演の映画って、やっぱりすごい迫力なんですか?」
織人さんがアクションスターに憧れるきっかけになった作品である。なぜか今、ちょっと気になっていた。
「奈々子……」
驚いた表情になり、ぐっと近づいてきた。私を見つめる眼差しは真剣そのもの。
怒った顔にも見える。
まずいことを訊いてしまったのかしらと、思わずたじろいだ。
「あ、あの、織人さん?」
「上映会するか」
「じょ……上映会?」
ぽかんとする私に、こくりと頷く。
「VHSビデオもDVDも持ってる。シアタールームでいつでも上映可能だ。実は、奈々子にずっと観てもらいたかったんだ」
「そ、そうなんですね」
「ああ。だけどな……」
織人さんはふっと目を逸らし、今度は困った顔になる。
一体、どうしたというのか。
感情の振り幅に、私は戸惑うばかり。
「なんか恥ずかしくてさ。照れるって言うか……奈々子と一緒に観たくて、でもなかなか言い出せなくてさ」
「はあ」
恥ずかしい? 照れる?
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なんだかよく分からなかった。
「そうか……ついに興味を持ってくれたか。奈々子がそこまで望むなら、ぜひ観てもらおう」
「え? いえあの、そこまでというほどでは」
「決まり! 今夜は家で上映会だ」
私の声が聞こえないようだ。
どういうわけか、ものすごく興奮している。
「となれば、ジャンクなメニューがふさわしいな。よし、ハンバーガーとかチキンとか、山ほど買っていこうぜ!」
「お、織人さん、落ち着いて……あわわ」
突如として決まった今夜の予定。
織人さんに手を引かれ、デパ地下からファーストフードへと方向転換する私だった。
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