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正義の使者〈Last Report〉
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今日は梅雨の晴れ間。
明るすぎる太陽を避けて、木陰のベンチに座った。
昼寝する会社員。犬を散歩させる老人。走り回る小さな子どもたち。目の前には平和な光景が広がる。
捜査本部の解散から二ヶ月。
事件の解決後、俺は再び通常業務に戻り、忙しい日々を送っている。
「遅いな」
ここは緑署と県警本部の中間にある公園。指定された正午を15分ほど過ぎたところだ。
しばらく待つと、ぱたぱたと足音を鳴らして瀬戸さんが駆けてきた。
「悪い悪い。電車に乗り遅れちゃった」
「お疲れ様です」
瀬戸さんが隣に座ると、俺はコンビニ袋を差し出す。忙しい先輩に昼飯のプレゼントだ。
「わあ、助かる。朝から何も食べてないのよ」
「忙しそうですね」
「まあね。そっちは?」
「俺も、いつもどおりです」
瀬戸さんはアハハと笑い、あっという間に握り飯を平らげた。相変わらずの食欲である。
「今日はどうしたんですか? 俺に用事でも」
「ああ……うん。昨日ね、山賀さんに会ったのよ。街中で、ばったり」
「山賀さんに?」
山賀小百合。水樹や三国に利用されたことで、彼女は警察の取調べを受けた。
被疑者に協力はしたが、どちらかといえば被害者であり、罪状も軽微ということですぐに釈放された。
本人は深く反省し、現在は通院しながら学業に勤しんでいるとのこと。
「今日の午前中、一条さんに会うと言ってたわ」
「そうなんですか」
「でね、ちょこっとだけ彼女の近況を聞いたから、あんたに教えてあげようと思って」
「……別にいいですよ、そんな」
俺が一条さんと最後に話したのは、一ヶ月以上前。事件の聴取であり、プライベートな話題は一切なかった。
「私が話したいだけだから。聞きたくないなら、耳を塞ぎなさい」
「分かりました。どうぞ」
どうやら瀬戸さんは、俺の気持ちを知っている。おせっかいだなと思うが、せっかくなので素直に拝聴した。
「一条さんは今、他県で暮らしてるそうよ。でも、それは一時的なことで、いずれまた引っ越すみたい。『家族に迷惑をかけたくないから』と、電話で言ってたって」
「ああ……」
なんとなく察した。一条さんは水樹の関係者として世間の注目を浴び、プライバシーの侵害を受けている。
かなり下火になってきたものの、ネットに上がった噂は消えることなく、どこまでもつきまとうだろう。
家族を巻き込みたくないのだ。
「警察にも責任があるわ。彼女を頼りすぎた」
「俺もそう思います」
「最後に大変な思いをさせてしまったし」
「……」
一条さんは警察に協力し、水樹を説得しようとした。必死になって、連れ帰ろうとしてくれたのだ。
だが水樹は……
「水樹は最初、一条さんを道連れにするつもりだったんでしょ?」
「ええ。三国が迎えにくると言って、崖っぷちに彼女を誘導しました。ナイフを持っていたのは、警察と遭遇した場合の自決用です」
「警察が踏み込んでくる可能性を考えていたのね」
「はい。だからこそ、あれほど素早い動きができたわけです」
水樹は心中しようとしていた。しかし最後になって、一人で逝くことに決めた。一条さんは勘違いしていたが、彼は最初からああするつもりではなかったのだ。
二ヶ月前を思い出す。
あの夜、一条さんが水樹とともに崖崩れに巻き込まれ、行方不明になった。現場に居合わせた誰もが、二人は助からないと思ったという。
二次災害の恐れがあるため、雨が止んだ明け方から捜索が開始された。そして、遺体が見つからないまま数時間が過ぎた頃、土地の警察署に一人の男が出頭する。
三国仁志だった。
明るすぎる太陽を避けて、木陰のベンチに座った。
昼寝する会社員。犬を散歩させる老人。走り回る小さな子どもたち。目の前には平和な光景が広がる。
捜査本部の解散から二ヶ月。
事件の解決後、俺は再び通常業務に戻り、忙しい日々を送っている。
「遅いな」
ここは緑署と県警本部の中間にある公園。指定された正午を15分ほど過ぎたところだ。
しばらく待つと、ぱたぱたと足音を鳴らして瀬戸さんが駆けてきた。
「悪い悪い。電車に乗り遅れちゃった」
「お疲れ様です」
瀬戸さんが隣に座ると、俺はコンビニ袋を差し出す。忙しい先輩に昼飯のプレゼントだ。
「わあ、助かる。朝から何も食べてないのよ」
「忙しそうですね」
「まあね。そっちは?」
「俺も、いつもどおりです」
瀬戸さんはアハハと笑い、あっという間に握り飯を平らげた。相変わらずの食欲である。
「今日はどうしたんですか? 俺に用事でも」
「ああ……うん。昨日ね、山賀さんに会ったのよ。街中で、ばったり」
「山賀さんに?」
山賀小百合。水樹や三国に利用されたことで、彼女は警察の取調べを受けた。
被疑者に協力はしたが、どちらかといえば被害者であり、罪状も軽微ということですぐに釈放された。
本人は深く反省し、現在は通院しながら学業に勤しんでいるとのこと。
「今日の午前中、一条さんに会うと言ってたわ」
「そうなんですか」
「でね、ちょこっとだけ彼女の近況を聞いたから、あんたに教えてあげようと思って」
「……別にいいですよ、そんな」
俺が一条さんと最後に話したのは、一ヶ月以上前。事件の聴取であり、プライベートな話題は一切なかった。
「私が話したいだけだから。聞きたくないなら、耳を塞ぎなさい」
「分かりました。どうぞ」
どうやら瀬戸さんは、俺の気持ちを知っている。おせっかいだなと思うが、せっかくなので素直に拝聴した。
「一条さんは今、他県で暮らしてるそうよ。でも、それは一時的なことで、いずれまた引っ越すみたい。『家族に迷惑をかけたくないから』と、電話で言ってたって」
「ああ……」
なんとなく察した。一条さんは水樹の関係者として世間の注目を浴び、プライバシーの侵害を受けている。
かなり下火になってきたものの、ネットに上がった噂は消えることなく、どこまでもつきまとうだろう。
家族を巻き込みたくないのだ。
「警察にも責任があるわ。彼女を頼りすぎた」
「俺もそう思います」
「最後に大変な思いをさせてしまったし」
「……」
一条さんは警察に協力し、水樹を説得しようとした。必死になって、連れ帰ろうとしてくれたのだ。
だが水樹は……
「水樹は最初、一条さんを道連れにするつもりだったんでしょ?」
「ええ。三国が迎えにくると言って、崖っぷちに彼女を誘導しました。ナイフを持っていたのは、警察と遭遇した場合の自決用です」
「警察が踏み込んでくる可能性を考えていたのね」
「はい。だからこそ、あれほど素早い動きができたわけです」
水樹は心中しようとしていた。しかし最後になって、一人で逝くことに決めた。一条さんは勘違いしていたが、彼は最初からああするつもりではなかったのだ。
二ヶ月前を思い出す。
あの夜、一条さんが水樹とともに崖崩れに巻き込まれ、行方不明になった。現場に居合わせた誰もが、二人は助からないと思ったという。
二次災害の恐れがあるため、雨が止んだ明け方から捜索が開始された。そして、遺体が見つからないまま数時間が過ぎた頃、土地の警察署に一人の男が出頭する。
三国仁志だった。
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