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8 糾弾
しおりを挟む人生最後に見る夢がこんな悲しいものだなんて自分の人生はどうにもうまくいかない事ばかりだなとぽつりと思う。
その光景は丁度、つい数時間前の出来事。私が家族に見捨てられた時の出来事だった。
重苦しい表情をしているお父さまとお母さまがいて、その向かいには、兄のジャレッドと妹のミリアムの姿がある。
彼らは両親とは違って、明らかに私に向かって敵意を向けていた。
事情は伝わっているらしく、戻ってきた私を加えてすぐに話し合いの場が設けられた。
しかし、この時はまだ話し合いとっても、私の新しい嫁入り先か何かの話し合いだと思っていた。
婚約破棄にはもちろん両家の同意が必要になってくる。その時にメンリル伯爵家を納得させるためにロットフォード公爵家からそれなりの金額が支払われているはずだ。
だからこそ、当面の生活費についてはそこから捻出されるものばかりだと思っていた。
そしてそのお金が思ったよりも高額だったから、きっと彼らは半年ほど前に顔を合わせた時よりも、どこか羽振りがよさそうな印象になっているのだと思った。
それはなんとなく感じ取った事なのだが、久しぶりに帰った屋敷も、どこかギラギラしているような印象で、高そうな調度品が増えている。
彼らの来ている服を見てもその限りだ。妹は流行の鮮やかな色のドレスに身を包み、兄は私が贈答した魔法道具以外のアクセサリーをたくさんつけている。
「それにしても、本当にお前は俺たちに迷惑しか掛けないんだな」
まずは兄がそうしてとても苛立たしいような声でそういった。
それをお母さまもお父さまも止めることはなく、なんだか自分が傷ついているみたいな顔をしていた。
「ほんっとう、にそう! なんでそんな平然として戻ってこられるわけ? 意味わかんない」
ミリアムは腕を組んで、きつく私をにらみつける。そこで、父が「まぁまぁ、二人とも」と気休めにもならない言葉を言った。
「お前のせいで大貴族との血縁関係を失ったてのに、今更帰ってきて、役立たずで生きてるだけで金がかかるようなお前を当然のように養えって神経がおかしいんじゃないのか?」
「……それは、ジャレッドお兄さま私は、たしかに他の人達と同じようには働けませんが自分なりに出来ることをやるつもりでいます」
大貴族との伝手……というか血縁関係は築くことができなくなったが、それはメンリル伯爵家が了承したからだろう。
それと引き換えに渡されるものが欲しかったからこそ、それを受け入れたのではないだろうか。
私だって、たしかにうまく気に入られることができないし、ふさわしくないと言われてしまうような体で悪かったとは思っているが、一方的に糾弾されるいわれはない……と思う。
「”自分なりに”? 馬鹿言わないでよ、お姉さま、そもそも私はあなたの存在自体が、迷惑で仕方がないの」
「……ミリアム」
「あなたみたいなのが姉なせいで私の結婚話がうまくいっていないの! そもそも私の人生の邪魔をしているんだから、あなたが自分なりにちょっとやそっと魔法道具を作ってくれたって何の足しにもならない」
「そうだぞ、ウィンディそれでお前、普通の人間になったつもりになるなんて勘違いはなはだしい」
私が言葉を返すと彼らはそろって、堰を切ったように恨み言を言い始める。
しかしこんなものと言いつつ、それを使っているのは、多少なりとも役立っているからではないのだろうかと、彼らの指や首につけられている魔法道具を見て思う。
けれども、結婚の邪魔については考えても見なかったが、疾患がある人間が家族にいることで、そういう血筋の人間を入れたくないという人もいるだろう。
「……そう、ですね。申し訳ありません」
ただ心の隅のほうで本当にそれだけで、振られることがあるだろうかと思う。ミリアムの性格についてはあまり言及しないが、良い性格をしているかと言われると肯定しづらい。
けれどもそれを言うのははばかられて、言葉を呑み込んで謝罪をした。
すると彼らは鬼の首を取ったように、勢いを増してテーブルをどんと叩いてジャレッドが言った。
「そんなやすい謝罪で俺たちの今までの苦労が、水に流せると思うかよ? なぁ、ウィンディ迷惑をかけてる自覚があるんだろ!?」
「はい」
「なら、なんで戻ってきたわけ!? また私たちに寄生して怠けて甘い汁だけ啜ろうと思ってたんでしょ! 何にもしないただ飯喰らいでだらだらされてそんなの許せないに決まってるでしょぉ?」
彼らはさらにヒートアップしていって、私のあれが駄目だここが駄目だとあげつらい始める。
もちろん、それは病気のせいでと言い訳をしようと試みても、それは努力が足りないから、するつもりがないからだと一蹴される。
そこで何も言わないお父さまやお母さまに話を振ると、彼らはぎこちない表情でこう言った。
「でもほら、跡継ぎのジャレッドがこういってることだしねぇ」
「ミリアムだって困ってるのは事実だし、お前は不憫だがこの子たちの思いの方が重要だしな」
彼らは、私に向かって何かを主張するのではなく子供たちの意見を盾にとって、自分たちだけは悪者になるまいと丁寧に言葉を紡ぐ。
それを聞いてさらにジャレッドとミリアムは声高に、私がいかに社会にとってお荷物で自分たちが面倒を見る必要がないかを延々と語ったのだった。
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