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前途多難……。10
しおりを挟む放課後の練習場は、とても賑わっており、コートを使っての模擬戦や、団体戦、個人の訓練を行っている様々な学年の人がいる。今は、決闘の時のように武器の貸出申請はしていないので、武器庫に雑多に置かれている木剣を二人分拝借し、練習場の外へと出る。
練習場の中のコートがある部分には、上級生もいるため危険回避のために練習場の外の左右にある広場で、シンシアに木剣を差し出す。
「握ってシンシア、魔法はなしで打ち合いをしよう?」
彼女は未だに俯いていて、私の言葉に反応しない。余程、サディアスの言葉が効いているんだろう。
私は彼女を連れ出したが、特に何に言うかという事は決めていなかったので、適当に話し出す。
「……ヴィンスは昔からずっと私の従者でね、今は同じ身分なんだけど、彼は従者で居るつもりみたいで、自主性が無いんだ……許してあげてとは言わない。私もどうにかしようと思ってるから」
練習場の壁に背を預けて、一息つく、それから踏み込んだ事を聞く。
「でも、シンシアは、それでも嫌なんだよね。真面目に取り組んでない事が」
「……そうです」
つぶやきのような返事が返ってきて、良かったと思う。シンシアの主張はまだ完全には折れていないようだ。
「……シンシアの気持ちは間違ってなんかいないと私も思うよ。でも、サディアスが言ったみたいに、シンシアは、色んな感情が混ざって焦って他人に求め過ぎてしまっているように……私にも見えるよ」
真面目にやって欲しいと苦言を呈するだけならいい、真面目にやらないせいで実力が伴わない様な場合には、出来ないのならば出ていって欲しいと望むのも理解出来る。
でも、今のシンシアは、押し付けになってしまっている。それにはやはり焦りを感じていて、彼女がディフェンダーしかできないという事が関わっているような気がする。
「私が……他人に求めている?」
「うん、自分が出来ない事を出来る人に、自分と同じ価値観を求めてるように見える」
「……」
「だから、それを出来るけどやらない人を許すことが出来ない。それに自分に出来ないって言う事にも、焦りとか、悔しさとか色んな苦悩が混ざってさ、それを他人にぶつけているように見えるの」
私がそう言うと、彼女は顔をあげて私の持っている剣を取った。
それを構えたので私も同じように壁から離れて、木剣だった事もあり真っ直ぐと高校の剣道の授業でならったように構えた。
「クレアは……話をするのが上手いですね。私は……サディアスにああ言われて、何も言い返す事が出来ませんでした」
「そうでも無いよ。私だってサディアスにあんな風に怒られたら萎縮するし泣いちゃうね」
「……」
彼女は、軽くキャッチボールをするような感覚でカンっと打ち込んでくる。それを私が受け止めると、今度は一歩引く、それが私の攻撃の合図だと言うようにふと私と目を合わせた。その表情はまだ暗い。
「サディアスの言葉、確かに……その通りだったんです。私は、ついていけない、そう言われて、チームに入れてもらうことが出来ませんでした」
私もカンっと打ち込んで見れば、シンシアはしっかり受け止めて今度は少しテンポを早く踏み込んで打つ。少し手に振動が響いた。
「それを私が誰より、真面目で、精進しているからだと思い込んでいた」
「……うん」
「……でも、違ったんですね……私は、ただ人に文句を言うだけの傲慢な人間だった……」
そう言う彼女の声は震えていて、瞬きもせずに涙をこぼす。水滴はパタパタと地面に雨のように染み込んでいく。
「でも、……どうすれば。いいんですか……。私はどうしたら。皆とても強くて力があるのに、私の方が……ずっとずっと努力をしているのに」
あまりに年相応で、そして当たり前のシンシアの本音だった。
彼女は眉間に皺を寄せ、苦しそうにまた私にカンと打ち込んだ。
「私にも……才能があれば」
苦しげな声、聞いている私も鼻の奥がツンとした。
「こんな、文句ばかり言う人間にならなくて済んだんですか?私……魔法使いに……なりたい。きっとこの学園にいる誰よりも」
切実な願いを口にして、シンシアは剣を落として、泣く。涙を拭う手はたくさんの練習でできた豆やタコで角張っていて、髪だって女性にしては短い。
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