悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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もっと早くこうして欲しかったんだけど……。7

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 感謝を要求されているのに、わざわざ突っぱねると、私より余程面倒な性格をしている彼とは、話が進まない可能性があるので、一応、私が虐められているのを止めてくれたのだと思いなおし、血を拭ってくれる彼に向き直る。

「ありがとう……ローレンス。助かった」
「それでいい。野良猫が私にだけ懐いているようで気分がいいよ」

 彼はするりと私の頬に触れて、私が痛みに身を固くしているのも関係なくゆっくりと撫でてくる。
 
「それで……なんであんな事を……」

 私が話を戻すと、彼は乱れた私の髪を少し整えながら、私の疑問に答えてくれる。

「少し君を放置しすぎたと思ってね。あれらが過激になり過ぎると、今回はあまり面白くない……どうせ君には、私の情や愛を語っても意味は無いのだろう?ただのバランス調整だ、意味などないよ」
「……ああやって言うと……どうなるの?なんのバランス?」
「君が挑発して崩した均衡だよ。実力行使が極力減るように発言した。基本的に、彼らは自ら手を汚す事を好まない。このまま、君を好きにさせておけば自分たちの都合の良いことがあるように思わせた」

 思わせた。とは別にそうはならないということだろう。要は庇って見せて、利益をチラつかせたと。

 それにローレンスは実力行使というのを嫌がっているだけで、実際はそれ以外の手段で私を手に入れるように動くという事に関しては容認しているのだろう。

「でも……彼らの都合がいい事は起こらないんでしょ」
「そうだね。シャーリー達もわかっているさ、ただ手は変えるだろう」
「そう……」

 やはりそれだけか、常に警戒しなければならない事には変わりがないはずだけど……まぁ、それだけでもありがたい。私の仲間を侮辱するのなら、私は喧嘩をふっかけるし、それだけでも彼女達に伝わっているのなら、今後こういうことは無いだろう。

 せめて、もう少し早い段階で、ローレンスがこうやって学園で私のピンチに接触してきてくれたのなら、彼の甘い言葉や情だとか愛だとかを信じられたのだろうが、今はその行動の裏で彼は何を考えているのだろうかと警戒してしまう。

 彼は私のリボンを頭の上で蝶々結びにして、私は本物のお嬢様のようになってしまう。さすがに子供っぽいのでは、とローレンスの方を見ると、彼は少し口元を押さえて笑っている。

「そんなに似合わない?」
「っ、くくっ……そんなことはないよ。愛らしい、似合っているよ」

 自分でやったくせに……。

 しかし、わざわざ直したら怒ってきそうだったのでそのままにしつつ、コートの方を見る。

「二試合目始めます、構えてください」

 そろそろ始まるらしい、ディックは剣を構えたまま、私の方をチラリと見た。もう心配いらないとばかりに私は手を振って見る。

 すると安心できたのか魔力がズッと引き出されて熱の残量が減る。

「さて、彼は、力を示せるのかな」
「……大丈夫、ディックは強いもん」

 剣を構えているコーディと向き合う彼に、私は頑張れと念を送る。

 ディックは大丈夫だ、最初の攻撃にさえ押し負けなければ、ディックはちゃんと強い、リーダーを張れる程の力はあるのだ。

 彼は基本的に剣術だって丁寧だし、体だってちゃんと鍛えているし、ただちょっと他の人より魔法の展開が遅いのだ。それは自作のウィングに起因していると本人が言っていた。頑張れ、私の固有魔法。今回はディックのサーチではなく、初速勝負だ。

「それでは……初め!」

 ディックは遅れること無く、コーディの方へと駆け出し、コーディも同じようにディックへと剣を振り上げる。

「っ……」

 魔力がぐんぐん吸い上げられる感覚に、私は少し身震いして膝の上で拳を握る。

 彼らは何度か打ち合い、一度お互いに一歩引き、力量を図るようにじっと睨み合う。こうやって睨み合う時間があるのは珍しい、大体は初撃から数回の攻防で方がつくのに。

 二人はまた振りかぶって衝突する、彼らはなんて事のない表情を二人ともしているので、激しい戦いという感じでは無いが、それでもどちらも実力があり、気迫がある。

 少し離れた位置で戦っているというのに、剣によって作り出された風圧がこちらまで届きそうで私は二人の戦いに見入った。

 負けないで欲しくて魔力を注ぐ、べっこう飴を口に含んで、魔力不足で倒れることがないように保険をかけておく。これで、惜しみなく固有魔法に魔力を注げる。それでも勝てそうで勝てない決めてのない試合に、私は焦らされているような思いで、思わず前屈みになって、ディックの基礎魔法に魔力を回す。

「っ~!」

 両手を強く握って、見入っていると、ローレンスは徐に私へ手を伸ばして来た。キィンッとディックがコーディの大剣を払いと押して、勝敗が決する。

 やった!と思う気持ちと共に、ローレンスは私の魔法玉を引きずり出す。

「んわっ、」
「……」

 襟元を捕まれて、引き寄せられ、ローレンスは私の魔法玉をまじまじと見つめた。

 ……あ、やばい。

 それは私の金色の魔法玉の中心に、ディックの魔力が入っている私の固有魔法の根源だ。なんの情報もなしに見たって何も分からないとは思うが、異常な状態だということはわかるだろう。

 ローレンスの視線が一瞬で鋭くなったのを感じて、身を引こうとするが、彼はそれを許さないとばかりに魔法を使う。

「どういう事かな」
「……」
「黙っていては分からないよ」

 私の顔を掴むみたいに私の顔を上げさせて、彼は私の瞳を覗き込む。

「い、や。これは……何でも無くて……」
「……」
「別に……ほんと、大したことじゃ……!」

 隠さなければと思い、言ってみるが完全に何かを隠している人間の言葉だ。彼は言い訳をする私に、冷たい表情をして、そしてそのまま笑顔を作る。

「親愛の誓いを待ってあげているというのに、私に隠し事とは、見上げた度胸だね」
「……う」
「君からの手紙読んだよ。だが、君が私の部屋に来なさい。いいね」
「う……うん」

 私が素直に了承すると、彼はその場では、私の魔法玉について言及するつもりはなかったようで、手を離されすぐ魔法玉をしまい込む。それから魔法をといた。

 ……ローレンスのとこに行くのか……やだな。

 せめて自分のホームグラウンドで彼とは会いたかったのだが、来いというのならばそれしか無いだろう。

 私の固有魔法を彼に言うのは別に構わないのだが、親愛の誓いについて、なあなあに引き伸ばしている手前、あまり魔法関係で私が一応力をつけているということをバレたくなかったのに、こんな所で見つかってしまうとは思っていなかった。

 はぁとため息をつきながら、ディックの元へと向かう、彼は珍しく笑顔だった。





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