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やっとの思いで個人戦……。6
しおりを挟む二試合目ぜひ勝って欲しい。
「ところで……伝説って?」
「記念祭の翌日、冬初めの鐘の音を共に聞いた二人は永遠に結ばれるそうですよ」
「へぇ……ロマンチックな伝説だね」
「ええ!ですから………………」
チェルシーは途中で言い淀んで、私の横と後ろにいるヴィンスとサディアスのことを見る。
それから、ええいままよといった感じに、私の手を取る。
「ですからクレア!貴方が望む相手と!聞いてくださいね!」
「…………」
チェルシーは昨日と変わらず、いろいろと自分の価値観と葛藤しているらしい。私が望むのなら、良いけれど、結局、どうなるんだという気持ちは抜けないだろう。
私もそう思うし……まぁ、でも、永遠に結ばれるというのなら、縁が結ばれるという解釈でもいいだろう。
私もチェルシーの手を握り返す。
強気に見えるように、口を引き結んで笑顔を作る。
「じゃあ、チェルシーとシンシアと聞こうかな」
「へ?」
「だって、永遠に結ばれるんでしょ?きっと学園から離れてチームが解散しても、また会えそうじゃん」
愛の伝説だときちんと説明して、こんな返事を私がすると思っていなかったのがチェルシーはみるみる真っ赤になって、照れているらしい。素直な可愛らしさに、思わずそのりんごのようなほっぺをくにっと触った。
「ふふっ、真っ赤」
「ひゃあっ」
「かーわいい。んふふっ」
若々しいもち肌にするする触れて、若さというものの素晴らしさを堪能していると不意に車椅子が引かれる。
「わっ、」
「……」
引き離されてチェルシーから手を離し、私の車椅子を引いたサディアスの方を振り向けば彼は、不服そうにじっとこちらを見ている。どうやら機嫌が悪い。
……少し可愛くて揶揄ったからって、そんなに怒らなくってもいいのに。
「ごめん、ごめん、サディアスも一緒に聞こうね」
私が少し、おちゃらけて言えば彼は、答えずにそのままコートの方を見る。シンシアがちょうど試合をするところで、相手は私が棄権したので勝ち上がっていたシャーリーだった。
私のチームメイトだからか、それとも身分が自分より下だからなのかシャーリーは心底機嫌が悪そうにシンシアを睨んでいる。
彼女は私と戦った時と違って大剣を持っていて、ディフェンダークラスのシンシアに合わせて持ち替えたのだと思う。
「……シャーリーか……シンシア大丈夫かな……」
ぽつりとつぶやく、ちなみに勝敗の心配ではなく、単純に、文句を言われないだろうかという心配だ。シンシアは固有魔法もしっかりしているし何より、リーダークラスであまり戦わない私達に負けるような子じゃない。
「クレアっ、絶対勝ちます!大丈夫です!」
私のつぶやきに、勘違いをしたチェルシーはグッと両手で拳を握って安心してくださいと私を見る。
「うん……そうだね。よし」
私は、自分で車椅子を漕いで、一階席を見下ろせる柵の部分まで進む。チェルシーもついてきて、二人でシンシアに「頑張れ~」と大きく声をかける、シンシアは視線だけこちらに、向けて横顔で微笑んだ。
バイロン先生がピッと手を上にあげる。
それからしんと、コート内の二人は静まり返って、剣を構えてお互いに睨み合った。
強い魔力を纏って「初め!」という凛々しい声を皮切りに、シャーリーがどっと音を立てて駆けだす。シンシアは盾の魔法を使って前のめりに構える。
シンシアの固有魔法は、大きな盾だ。五角形のようになって下の部分が尖るような形の強固な盾。
力任せに突撃してくるシャーリーに対して、シンシアは至って冷静にその剣を跳ね返す。
ギィィン!と金属の音が響いて、初撃を交わしたシンシアはシャーリーに少し踏み込んで攻撃をする。間合いの小さな剣なので、どうしてもすんでのところで避けられ、一度離れてそれから再度剣を振るわれる。
シンシアの盾は魔法の光を強くしてその剣を受け止める。
シンシアの固有魔法はまるで彼女の精神性そのもののように強固で攻撃を通さない、また、シンシアが踏み込み、片手剣で攻撃を仕掛ける……と思ったのだが、その剣は既に彼女の手には無い。
彼女は低く重心を落として、大きな盾を持ち上げる。それから、その盾を横向きにして、シャーリーが咄嗟に振り下ろした剣を盾のサイドでいなしながら、シャァァッと音を立てつつ、勢いを殺さずに思い切り盾の一番鋭利な角で彼女の胸を殴打した。
「ぐっっ!!」
低いうめき声を上げて、シャーリーは背後に倒れ込み握っていた大剣を手放す。そこで、バイロン先生は「やめっ!」と勝負の終了を告げる。
負けたシャーリーは震える拳を握り地面に叩きつけた。一方、シンシアはニコッと笑って、私達の方へとむいて拳を突き上げて勝ったことを報告する。
トントンっと軽く走ってくるシンシア、その背後では、鋭く私のことを睨みつけるシャーリーの視線があう。
じっと見つめていれば、彼女は立ち上がって、すぐに扇子で自らの口元を覆う。
……嫌われているって事に変わりは……ないか。
当たり前のことを思って、それから気持ちを切り替えてシンシアを迎え入れた。
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