悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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人それぞれの企みと行動……。3

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 到着して重たい扉を押し開けると、見慣れない先生や生徒達が沢山いて、その人達の視線にすくみ上がった。公開試合にエントリーしている生徒たちは三つに別れていて、すぐに学年別なのだとわかる。

 ブロンズバッチ達は右端の方にいるので慌ててそちらに向かう。

 すると、すぐにこちらに駆け寄ってきたのは、ディックの言っていた通り、ブレンダ先生だった。彼女にはイベントがある事に迷惑をかけてしまっている気がするが、今回のことに関しては私は無実だ。

「クレア!!ヴィンス!!サディアス!!また貴方達ですね!!」

 ずんずんとこちらに歩いてくる彼女と、明らかに怒っているバイロン先生、私はヴィンスかサディアスの後ろに隠れたくなったが、視線が集中してしまっている手前、そんな情けない事も出来ずに、ガバッと頭を下げた。

「すっ、すみません!!!」
「いつもいつも!!謝って許されると思いますか!!」
「本っ当にすみません!!」
「そういう時は申し訳ありませんと言うんです!!」
「もうっしわけありません!!!」
「本当に反省しているのか??!!ブレンダ先生はいつも君のことで心を砕いているのだぞ!!」

 野太い男性の声で叱責されて、体がビクッと震える。

 ……ひっ、ひぃ、怖い!!

 まるでヒグマにでも襲われているような気分だ。でも、ここでエントリーは手違いです!と言ったとしても、彼らの怒りが収まらない事には、逆に言い訳するな!と怒りをかう可能性がある。

 出来るだけ、穏便に! 彼らから見れば普段からトラブルを起こしているこちらにだって責任があるのだから。

「今後、気をつけます!!申し訳ありません!!」
「そんな言葉!信用ならないぞッ!!それほどまでに今回の公開試合は大事な行事なんだっ!!」
「……」

 顔をあげずとも、酷い形相で怒っている事が感じられて、服の裾を握りしめた。血の気が引いて、皆がこちらに注目しているのを感じ汗が出て来る。

「本当に!……ごめんなさい!」

 振り絞るように言う、けれどバイロン先生の怒鳴り声は返ってこず、私は恐る恐る顔を上げた。するとそこには、片手でバイロン先生を静止しているブレンダ先生の姿があった。

 彼女は、先程より、随分と平静を取り戻しているようで、はぁと深いため息をついてから、私の肩にぽんと手を置いた。

「反省しているのはわかりました。今はとりあえず、ミーティングを続けます。あなた達のために説明はしません、各自聞いていた生徒にお願いするなりして、明日の予定を把握してください」
「はい」
「遅刻については、後で聞きますから、そのつもりで!わかりましたね!続けます!」
 
 半分ほど振り返りながらそういい、私は、難はさったとばかりに一つ息をつく。ブロンブバッチの集団に合流しようと、ヴィンスとサディアスを振り返る。

 するとサディアスは、あからさまな苛立ちからか、魔法を使う寸前の所まで来ているようで青筋が浮きでていた。ヴィンスの方は、変わらず笑顔だが場違い感が半端では無い。

 通りで、私の後ろから謝る声が聞こえて来ないわけである。

「いこ、二人とも」
「……」
「……」

 無言を貫く二人を伴って、生徒たちに合流する。少し離れたところで、教師陣側に並んで、一人だけ護衛を連れているローレンスが見えた。

 彼は、場の厳粛な雰囲気とは、まるで違って、一人だけとても面白いものを見たとばかりに嬉しそうである。またローレンスの中のフラストレーションが消化されたに違いない。

 他の生徒達には半ば軽蔑するような目線を向けられつつ、ブレンダのよく通る声を聞く。どうしてこんな事になってしまったのかと、一度きつく目を閉じた。


 ブレンダが言っていた事は概ね、この学園の団表としての心構え、賞金を得るとはどういう事なのか、時間厳守、と言った具合だった。

 タイムスケジュールは既に、配布されているプリントに記載があるようで、私達はそれを見ることが出来ずに、くどくどとした心構えだけ聞かされ、最終的に、対戦相手について一度、顔合わせをして、このミーティングは終わりだと、言うところに落ち着く。

 ……そういえば、ララは居ないんだね。

 こういうイベントは彼女は好きだと思うのだが、今回は参加しないらしい。単純にブロンズバッチ相手だと、個人戦優勝の彼女はつまらないのかもしれないなと思っていれば名前を呼ばれる。

 いまだに、厳しい視線をバイロン先生に向けられつつも、私は彼の方へと行く。

「セルデン、カトラス、君たちは第六試合だ!全力を出し合うように」
「……!」
「……」
 
 バイロン先生は私たちのことを両方、家名で呼んで、適当な激励をする。私はそれに返事も出来ずに、シャーリーを見つめた。

 ……そういえばそんな名前だったね。

 シャーリーは、また、扇子を広げて私を睨みつける。彼女の方も何を言うわけでもなく、私を睨みつけて、ふいっと私たちを無視して去っていく。

 ……なんか、嫌な予感がする。
 
 こんな巡り合わせもそう無いはずだ。私は個人戦での彼女との試合を辞退した。それについて、シャーリーから何かを言われるということも無く、今まで過ごしてきた。

 それなのに突然、勝手にエントリーされていた、公開試合に相手はシャーリー?

 去り際に、シャーリーはローレンスのもとへと向かって、何やら話をしている。その彼女の表情はいくぶん穏やかで、もしかするとローレンスの何か仕掛けかとも疑うが、どうにも決定打に欠ける。

 そのまま無事ミーティングは終了し、明日の公開試合に出る生徒たちは、ちらほらと練習場を後にしていく。

 私はブランダ先生に話をしなければならないので、仕方なく練習場にヴィンスとサディアスと居残る。ブレンダ先生は、生徒からの質問に答えていて、まだ話が出来そうにない。

 早めに帰ってヴィンスとサディアスと作戦を話し合いたいのに……。

「クレア」

 先生をじっと睨んでいれば、不意に声をかけられる。私の隣に居たサディアスは一歩引いて後ろに下がり、ヴィンスは軽く頭を下げた。

「……ローレンス……昨日ぶり」
「シャーリーが仕掛けてきたようだね。用心しておいた方がいいよ」
「……アドバイスしてくれるなんて、珍しいね」
「ただの気まぐれだよ……せいぜい足掻いてみるといい」
「…………」

 言い方からして、彼は何かを知っている。不安に駆られてすぐにでも問い詰めたい気持ちになったが自重して、去っていく彼の背中を見つめた。

「……君、ローレンス殿下にいつもそんな態度なのか?」
「ん、うん。何かおかしかった?」
「……いや……俺が口出しする事じゃないな、忘れてくれ」

 ……でもとにかくシャーリーが何かしようとしているという事はわかったよね。

 彼女が何をしようとしているのか、全容は分からないが、私と対面して戦う以上、私以外には被害が及ばないだろう。今日のチェルシーとシンシアの態度が少し引っかかっていたのだが、彼女は公開試合に出るし、そこで何かするはずだ。

 それなら彼女達を少なくとも、私がいない間に害をなされるような事は無いだろう。そこだけはわかって安心する。

 とにかく私は、シャーリーとの公開試合での試合についてだけ考えよう。

 ブレンダ先生に質問していた生徒が、お礼を言いつつ、彼女の元を離れていく。私達は先生の元へと向かった。


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