悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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恐ろしい事があった日は……。7

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 何を引き合いに出されて、あの場所にいったのかは分からない、でも元の悪意を向けられる対象に選ばれたのは間違いなく私のせいだ。

「今回のことも、二人は全然悪くないよ、だから、私に怒っても━━━

 私の言葉を遮るように、シンシアはバンッと強くテーブルを叩きながら言う。
 
「違います!!!!」

 びっくりするぐらい大きな声だった。普段まったく声を荒げないシンシアなのに珍しい。私が驚いて顔を上げると、シンシアは涙目になりながらこちらを睨みつけていた。

「違います!!…………違うんです。クレア、貴方は悪くなんてありません。断言できます」
「そう……?でも、間接的には」
「いいえ、なんであろうと……私達は私達の責任で動きました」
「…………うん」

 強い声で言われて、もう反論することもなく、髪を拭き終えたチェルシーから離れて、シンシアの隣に座った。彼女は、私を見てそれから視線を落とす。

「クレア、確かに、貴方のせいだと言ってしまえば、きっと心は軽くなるのだと思います」
「……」
「けれど、やっぱりそんな……それほど無責任なことはできません…………ですから、私の責任として、話を聞いてください。私の浅はかな行動と、考えを……」
「うん……わかった」

 それからシンシアは、随分と昔の事から語り出した。それは私達が初対面であった時の事から、そして、リアちゃんのした事、自分の罪……今回の事。

 長く長くシンシアは話をして、あまりにお喋りが好きな方では無いのに、次から次へと紡がれる言葉に私は、少し反論をしたいところがあっても、うんうんと頷いて、話を聞いた。

 途中からは、なんのかんのと話を聞くという立場から、話し合いになって、続けられる。

 感情を処理するように、ずっと会話を続け、やがて外も暗くなり、夕食の時間も忘れて話し続けた。

「ですから、貴方の正体についてはもう暗黙の了解になっていると言いますか、まったく隠せていないと言いますか」
「ほ、本当に?私、全然みんなは、カトラスさんちのクレアだと信じてると思ってたんだけど」
「それほど他人に無頓着では、いくら平民だとしても対人関係に支障がありますよ。貴方はあまりに他人と情報交換をしないようですから、できる限り、私達で貴方の人となりを共有していたりと色々苦労もあるんです」
「お、それは、うん、ごめん。私も出来るだけ皆と話すように……」
「それは承知できません。クレアは少し人に深入りしすぎる傾向がありますから、今まで通りでいいのですよ」
「そう?でも、申し訳ないっていうか……」
「クレア、貴方に引け目を感じて欲しいところは、そんな場所ではありませんよ。確かに貴方の行動の説明については困ることは多いですけれど、それ以上に、貴方、小出しに私たちに話をしすぎでは無いですか?」
「小出し?」
「ええ、そうです。まったく、サディアスと喧嘩をしたと思えば、要領を得ないおとぎ話をしたり、こちらだってそんなことをされると気になります」
「そう、あ、まぁ、それはそうだよね……でもほら、二人には出来るだけ分かりやすく話をしたいというか……まだ決まってないことばっかりで、話しにくいというか」
「では、すべて定まって話が出来る時というのはいつですか、というか、そんな整理がつくときというのは、何かクレアの問題が片付いた時じゃないですか」

 まぁ、今の調子で行くと、そうなってしまいかねないだろう。すべて最初から話をしていれば、これ程、どこからどこまで何を話せばいいのか分からなくなる事も無かったと思うのだが後の祭りである。

「ですから、変な事でも、不格好な話でも、話してくれたのなら力になります。どんな事でも。それが先程話した、罪の、私達なりの償いです」
「そっか……それもさっき聞きいて理解したつもりなんだけど……」

 そもそも、そんなのは過去の事だ、私が気にしていなければ罪も何も無いと思うけれど、シンシア達は、私が入学そうそうに襲われたことを自分たちの責任と考えているらしい。

 でも、それをわざわざ今、覆して貰ったとしてもそれこそ今更だ。チームとしてずっとやってきて、まったく剣術が向上しない私にシンシアは根気強く稽古をつけてくれた、チェルシーもそれに付き合ってくれたり、私が話題遅れにならないように色々な流行りものだとか紹介してくれたりもしていた。

 それを罪の償いなんてだめ!と言って今度は私が、恩返しをしようとすると、ややこしい事になるし、償いというだけで全てのことをやっていたわけでも無いと思うし……。

「否定はさせませんよ、そういう心構えと言うだけで、それ以前に私達はチームメイトで、大切な友人です、力になるだなんて当たり前のことではありませんか」
「う、うん、それは、もちろん私も同じだよ!」
「そうですよね?……ですから…………」

 シンシアは途中で言葉を切って、ふと目を見開く。どうしたのだろうと思い、彼女の目線の先を振り返って見てみると、チェルシーが目を覚ましてこちらを見ていた。

「あ!おはよう、チェルシー」
「おはようございます。起きたのなら声をかけて下されば良かったのに」
「…………」

 夜だけれど、やっと目を覚ました彼女に、私達はそんなふうに言って、今までお互いがお互いに向けていた笑顔をそのままチェルシーに向けた。

「……」

 彼女は少し硬直して、それから、自らの髪が下ろされている事に気が付き、髪に触れ、そのまま自分の手を見た。

 ふと視線を私達の元へと戻して、少し眉間に皺を寄せ、涙を拭うような仕草をする。

「……っ…………おはよう、ございますっ」

 彼女の仕草に、チェルシーは事件があってすぐに眠ってしまったから、色々な感情が渦巻いているのだろうと分かる。

 けれど、正解かは分からなかったが、私はやっぱりわざと、何があったかなど忘れてしまえばいいと思って、少しアホっぽい声で言う。

「チェルシー!今ね、私の事をちゃんと話をした方が良いってシンシアに言われてねー」
「は、はいっ?」
「色々分かりにくい話にはなるんだけど、チェルシーも聞いてくれる?」

 話を端折って、私は今、話せる限りの私の状況についてを二人に話してしまおうと考える。唐突な話題に、チェルシーは瞳を瞬いて、それから、何かを察したというように、一つ間を置いてから、少し下手な笑顔を浮かべた。

「そうですね!やっと聞けると思うとドキドキします、ずっと貴方が話してくれる事を心待ちにしていましたからっ」
「よしっ、じゃあ頑張るよ、長い話になるけど途中で寝ちゃだめだよ?」
「大丈夫です、まだまだ夜は始まったばかりですから」

 シンシアがそう言い、チェルシーは私達の斜め向かいの一人がけのソファへと移動する。その足が少し震えていたけれど、それを無視して、できる限り明るく、そしてくだらない事のように、それからとめどなく私はこれまでの話をした。

 今まで誰に話したものよりも、要領を得ない内容だったように思う。けれど、それを二人は、文句を言わずただただ、頷いて、時には笑顔で聞いてくれた。



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