大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
17 / 18

17 復讐

しおりを挟む



 結局ヴァレントとは体の関係を結び、それから正式に婚約し、彼はオフェーリアの要望を吞んでくれた。

 というかどうやら元々、ベアトリーチェを野放しにはできないと考えていたらしくすぐに情報を得られた。ベアトリーチェの悪行は明るみになっている物以外もたくさんある。

 そしてそれを告発するために、ヴァレントは実家に戻ったらしかった。

 しかしその大切な情報をまるっとオフェーリアにくれたのだから彼はとても気前がいい、今後とも、良い協力関係を築いていきたいと思う。

 ……まぁ、それに一度結んでしまったからにはもう後戻りはできませんし。

 進んでしまった関係は戻らない、オフェーリアはまごうことなく大人になったが、それが良いことかと言われると少々難しい。

 しかし、悪いことではなかったことも、これまた不服だが自分の中での確固たる事実だ。

「今日は一段と美しい装いだな。オフェーリア」

 きれいなドレスを着て迎えに来た彼の元へと顔を出すと、当たり前のような顔をしてそう褒めてくれる。

 その瞳の中には間違いなく熱く燃え上がるような愛情があることをオフェーリアは知っている。

 手を引かれて馬車に乗った。

「あなたも、正装がよくお似合いですわ、ヴァレント」
「ありがとう」
 
 手が触れている部分からジワリと熱くなるようで、息苦しいような、恥ずかしいような難しい気持ちになる。

 こういうふうに思うようになったことは面倒くさく、非常に厄介だ。

 しかし、これを知らずにいたらオフェーリアは今までのようにずっと人の感情を少し軽んじたままだっただろうと思う。
 
 だからわかって嬉しいのだが、振り回されているようで腹が立つ。

「なんだか今日はやけに機嫌が悪そうだな。何かあったか?」
「いいえ、何もありませんのよ。ただ…………なんでもありませんわ」

 いつもの通りにはっきりとものを言おうとする。しかし彼に振り回されていることを認めるのは腹立たしい、そんな気持ちがせめぎ合って、言い淀む。

 こんなことなど今まではなかったのに、とヴァレントが恨めしくなった。

 恨めしいのに、キスがしたい。その薄い唇に触れると心地がいいことを知っている。

 その自分の思考にこれまた腹が立って、プイッとそっぽを向いた。

 それから人生とは難しく、いろいろなことがあるのだなと思う。

 初めてした挫折も、初めて知った感情も、知らなかった自分はもっと強気だった、けれど知ったうえでも理解してより良い関係を多くの人と作っていきたい。

 そう思えることが一歩前進したということなのだろうかと難しく考えた。

 が、しかしともかく今回のことは仕返しがきちんとできるこれで良しとしようと思う。

 
 二人して馬車に乗ってどこに向かったかというと、それは王城だった。

 そこには、降嫁に際して、側近を外されたカテーナという侍女が働いており、彼女はオフェーリアたちを自分の部屋へと案内した。

 それから重苦しく言ったのだった。

「オフェーリア様、あなた様は覚えていらっしゃらないと思いますが、あの時はきちんとお止めすることができず大変申し訳ありませんでした」
「……ああ、なるほど、気にしていませんわ」

 彼女は、オフェーリアが婚約破棄を切り出された時にいた侍女だろう。

 カテーナはまず頭を下げて、それから自分の引き出しからひもでくくられているたくさんの手紙を出す。

「ありがとうございます。……あの方の行いは、この国の秩序を乱す行為です。あなた様のようにたくさんの方が、苦しんでいます。どうか、彼らの思いを無下にしない形で利用していただけたらと思います」

 手紙の束はすべて恋文のようだった。事前にヴァレントから聞いていた通りのことをベアトリーチェはしていたらしい。

「わかりました、必ずそのようにします。それにしても随分と数があるのですわね」
「はい、私はずっと、こうするべきか決めあぐねていました。けれど、ヴァレント様からの紹介であなた様が動いていると知ってあなた様ならば、あの方の罪を裁いてしかるべきだと思ったのです」
「そうですか。ありがとうございますわ、カテーナ。きっと爽快な復讐劇にすると誓います」

 オフェーリアは気丈にそう言って、笑みを浮かべる。

 オフェーリアの頭の中にはすでに完璧な計画が構想されているのだった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝
恋愛
「婚姻は王命だ。私に愛されようなんて思うな」 若き宰相次官のボルスターは、薄い夜着を纏って寝台に腰掛けている今日妻になったばかりのクエッカに向かって言い放った。 実力でその立場までのし上がったボルスターには敵が多かった。 一目惚れをしたクエッカに想いを伝えたかったが、政敵から彼女がボルスターの弱点になる事を悟られるわけには行かない。 巻き込みたくない気持ちとそれでも一緒にいたいという欲望が鬩ぎ合っていた。 ボルスターは国王陛下に願い、その令嬢との婚姻を王命という形にしてもらうことで、彼女との婚姻はあくまで命令で、本意ではないという態度を取ることで、ボルスターはめでたく彼女を手中に収めた。 けれど。 「旦那様。お久しぶりです。離縁してください」 結婚から半年後に、ボルスターは離縁を突きつけられたのだった。 ※復縁、元サヤ無しです。 ※時系列と視点がコロコロゴロゴロ変わるのでタイトル入れました ※えろありです ※ボルスター主人公のつもりが、端役になってます(どうしてだ) ※タイトル変更→旧題:黒い結婚

辺境伯は悪女を愛す

基本二度寝
恋愛
辺境伯の元に書簡が届く。 王命と書かれた内容は、王太子の婚約者だった公爵令嬢を娶れといった内容だった。 書簡を届けた使者は、公爵令嬢がいかに非道だったかを語る。 一人の男爵令嬢に対して執拗な嫌がらせを続けていたらしい。 あまりにも品も知性もないと、王太子は婚約を解消したという。 辺境伯相手ならそんな悪女も好き勝手はできないだろう。 悪女と言われた令嬢の行き着く先がこの辺境。 悪党顔の悪魔とも言われる領主の元に追いやられた。 ※初対面えろ ※番外を一つあげるかな?

魅了されたのは

基本二度寝
恋愛
「公爵令嬢エルシモアとの婚約を破棄する!」 貴族が集う夜会で王太子は、婚約者と対峙した上で宣言した。 エルシモアは、きょとんとした後、ゆっくり口角を上げて笑った。 「かしこまりました」 静かに了承し、側に居た男性にエルシモアは身を寄せる。 「私、婚約破棄されてしまいました」 甘えるように男性を見上げる姿に、王太子は憤った。 「婚約者がある身でありながらそのように他の男に縋る女などお断りだ!だから婚約破棄をするのだ!!」 叫ぶ王太子にも、傍らに婚約者ではない令嬢を連れていた。

ハーレムエンドを目の当たりにした公爵令嬢

基本二度寝
恋愛
「レンニアーネ。公爵家の令嬢、その家格だけで選ばれた君との婚約を破棄する」 この国の王太子殿下が、側近を侍らせて婚約者に告げた。 妃教育のために登城したレンニアーネの帰宅時にわざわざ彼の執務室に呼びつけられて。 王太子の側に見慣れぬ令嬢もいた。 レンニアーネの記憶にないと言うことは、伯爵家以下の令嬢なのだろう。 意味有りげに微笑む彼女に、レンニアーネは憐れみを見せた。 ※BL要素を含みます。 ※タイトル変更します。旧題【ハーレムエンドが幸せな結末であるとは限らない】

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

王族との婚約破棄

基本二度寝
恋愛
【王族×婚約破棄】のショートをまとめました。 2021.01.16 顔も知らぬ婚約者に破棄を宣言した 2021.03.17 王太子を奪い王妃にまで上り詰めた女のその後 2021.03.19 婚約破棄した王太子のその後 2021.03.22 貴方は「君のためだった」などどおっしゃいますが 元ページは非公開済です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

処理中です...