年に一度の旦那様

五十嵐

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48 カルセナとフリカ

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「ふふ、楽しかったわ。」
「何か楽しいことがございましたか?」
「思い出していたの。侯爵家を舞台にした演劇に出演していたことを」
「当時は辛い役所やくどころをお願いしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いいのよ。だって、そのお陰で今があるのだもの」
「ですがレイチェル様、大切なことをお忘れになっておりませんか?」
「なあに?」
「演劇はまだ続いています。ただここ数年あなたの役は病気に伏せるだけという簡単なもので台詞も何もありませんでしたが」
「そうだったわね。それで、いつ、舞台に戻るの?」
「まだ未定です」

二人が午後のお茶の時間を楽しんでいると、そこにメイド二人がやって来た。

「お嬢様、こちらにいらしたのですね」
「ええ、お茶をしていたの。カルセナとフリカも一緒にお茶をしましょうよ」
「では、お言葉に甘えて」

メイド二人と話すレイチェルの姿は本当に楽しそうだ。今夜の夕食は何を作るか、明日は何をしようかと話は尽きない。
カルセナとフリカと呼ばれたメイド二人もそれは楽しそうにレイチェルに接している。時には目を細めながら。

「もう、二人ともお嬢様はそろそろ止めてちょうだい。わたしはもう二十二歳の一応既婚者なのよ」
「何歳になろうとわたし達にとってレイチェル様は可愛い大切なお嬢様です」
「恥ずかしいわ、ロイもいるのに」

この北の外れにある邸に来てからレイチェルの表情は豊かになった。その一端を担ってくれたのが、レイチェルをお嬢様と呼ぶカルセナとフリカだ。元々二人はレイチェルの母方の実家で仕えていた使用人。訳あってレイチェルの祖父にあたる他国の前侯爵の命を受けてこの国にいたところを紆余曲折を経てロイが引き入れたのだった。

この三年、二人はいつレイチェルが今の暮らしを捨てても良いようにと料理、掃除、裁縫と様々なことを教えてくれている。時にはレイチェルの母の故郷の料理や独特の図案の刺繍の刺し方も。

ロイは三人の姿を見ながら、あの時二人が声を掛けてくれたことに感謝した。異性のロイには出来ないサポートを日々献身的に行う二人に。
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