年に一度の旦那様

五十嵐

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63 正しい使い方

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特別な茶がロイの手によって淹れられていく。この小さな邸では初めて出されるものだった。

「呪術を施された茶です。ですが、ご安心下さい。本来の正しい使い方で作られたものですから。」
ロイの言葉を皮切りに、レイチェルがカップに口を付けた。

「お嬢様!」
「大丈夫、わたし達は家族よ。リンデルが心を込めて作ってくれたお茶ですもの、とても良いものに決まっているわ」

呪術と聞かされた茶をレイチェルが飲もうとした瞬間、カルセナとフリカは止めようとした。それは、呪術の存在もどういうものかも二人が知っているということだ。
ロイはリンデルへ予定通り全てを話すようにと視線で合図した。

「まず、この茶を焙じる時に呪術をかけたのはオレだ。様子からして、二人は呪術の存在を知っているんだろ?でも、詳しくはない、そんなとこか?」
カルセナとフリカが小さく頷くのを確認して、リンデルは話を続けた。

自分が孤児だったこと。商人に引き取られ、その後力の保有者だと調べられたことを。

「では、このラススノルトにも力を感じる者がいるのですね」
「ああ。アーミテージ子爵が営むテーラーで仕立て屋として働いている。仕立てる為のサイズを計る時に、ヤツは首周りに触れ何の力を持つか確認している。そして、ヤツはオレの力は減法の呪術だと言った」

リンデルは自分が知る他の呪術も全て話した。ロイに連れ出されるまで一緒にいた加法の呪術を持つ者のことや、真実を見極める者、血の流れを辿る者などのことを。

「オレ達の力は本来金儲けや誰かを害する為にあるもんじゃねぇ。だから、この茶には本来の使い方である心を軽くする呪術を掛けた。」
「心を軽くする?」
「ああ。誰にでもある漠然とした不安を減らすよう願いながら焙じた」
「それだけなの?」
「それだけだ。オレ達は願いを込めるだけ。ただ、人それぞれ力に強弱はあるがな。そして、本来のオレ達の存在意義を知らないヤツに飼われると、知らない内に人を殺めることがある。オレは大切な姫様を殺した」

ラススノルトで暮らしてきたリンデルが言う姫様が誰なのかなど聞く必要は無い。その告白を受け、カルセナとフリカは間髪を入れずレイチェルを見たのだった。
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