135 / 176
2-12 クロウは男友達作るの禁止
しおりを挟む
◆クロウは男友達作るの禁止
ぼくは、膝の上に黒猫を抱いて、ランチを取っている。
唐揚げをひと口大に裂いて、ひたすらシオンの口に持っていっていた。
ほらぁ、昼どきに猫になんかなるからぁ。
猫の姿じゃあまり食べられなくて、午後の授業中にお腹が空いてしまうよ。
シオンは猫の姿なのを良いことに、恥ずかしげもなく、ひたすら大きな口を開けて、ぼくがお肉を口に放り込むのを待っている。
ヒナかっ。もぐもぐしやがって、可愛いじゃねぇかっ。
そんなシオンを、陛下は苦み走った顔で見やるが。
一応、和やかなランチの席で、口火を切った。
「今日は、みんなに、彼らを紹介しようと思っていたのだ。彼が宰相の孫で、ベルナルド・ウィレム。彼は、騎士科の四年生でカッツェ・オフロ。我は…彼らと友達になったのだ」
ひとりひとり、手でさし示して言う、陛下の爆弾発言に。丘の上の面々は、ええぇぇっ、と声を上げた。
いや、ぼくらはともかく。なぜ友達認定されている、ベルナルドとカッツェまで、驚いているのでしょう?
「イアン様、いつの間に、お、お、お友達なんか作っていたのですか?」
目を丸くして、ぼくはたずねる。
ぼくなんか…十二年も学校に通ったというのに、まともな友達は、ひとりも作れなかったんですよ?
それなのに、登校一日目で友達を作ってしまうなんて、さすが陛下です。
つか、友達って、どうやって作るのですか? ぜひご教授いただきたい。
陰キャのコミュ障なので、必死です。
ぼくの驚愕と、尊敬の眼差しを受けて。陛下は、ニヤリと笑う。ドヤ顔です。
「すごいだろう? クロウ。騎士は学園に帯同できないからと、学園長が彼らを紹介してくれたのだ」
アルフレドが。それって、友達ではなくて従者なのでは? と、つぶやいていたけど。
友達への憧憬を深める、ぼくらにとって。その経緯や肩書などは、どうでもいいのですっ。
「すごーい、というか、ズルいですぅ。ぼ、ぼくとも友達になってくださいませ。ベルナルド様、カッツェ様」
きらりと、期待の眼差しでみつめると。
緑色の髪の毛の、アイリスが言うところの第三攻略対象であるベルナルドと。
紫の短髪で、これも絶対、攻略対象ですよね? という、イケメンのカッツェが。
ふたりとも、んんんっ、と喉を詰まらせた。
あぁ、流行りの風邪ですね。みなさん、体に気をつけて。
「なっ、ならぬ。クロウは男友達を作るの禁止だ」
陛下は、慌てた様子でそう言うと。ふたりをギラリと睨んだ。
えぇ? もうそのように、感情あらわにできる気安い仲になっているのですか?
なんて、うらやましい、御関係でしょう。
「そんなぁ、ぼくはお友達を作ってはいけないのですか?」
そうしたら、ぼくは。ン十年、いや、死ぬまで、友達が作れないことになります。
でも、陛下のお言葉は絶対ですしぃ。
来世があるかはわかりませんが。ぼくの友達作るぞ大作戦は、来世まで持ち越しのようです。
「いいじゃないの? クロウ様。友達は、私がいるでしょ?」
そよ風にオレンジの髪を揺らし、桃色の瞳をやんわりと細めて、アイリスがぼくの腕にキュッと抱きついてくる。
わわ、柔らかい。
でも、アイリスぅ。聖女様がそのような、体を押しつけるようにするのは、はしたないですよっ?
つか、これは。ぼく、男認定されていないパターンですね? うすうす感じていました。
わかっています。もちろん、アイリスは、心強いぼくの友達ですよ? だけど。
「アイリスは、ぼくの一番のお友達です。でも、男子の友達も、ほしいではないですか? たとえば、運動の時間や魔法の時間で、相手を組むときとかぁ?」
「あぁ、ボッチに酷な、あの制度ね?」
アイリスも、なんだか遠い目をして言う。
アイリスも、あの『友達くらい、ひとりは必ずいるでしょ?』が大前提の、悪の制度に、翻弄された口なのでしょうか?
前世は、ボッチのオタクに、厳しい世界でしたよね?
「運動や魔法の相手は、必ず我が務める。クロウをひとりにはさせぬ」
キリリとした顔で、陛下は言うが。
そういう自分は、友達作っているじゃーん。ズルーい。
「そうです。男友達なんて、必要ありません。兄上にはぼくがいるでしょ?」
猫の声で、ニャーニャー言うけど。
てか、おまえは早く、人型に戻れば?
「シオンは弟で、男友達じゃないじゃーん」
唇をとがらせて、ぼくは言う。拗ね拗ねである。
「とにかく、我は許さぬ。そ、そのように可愛い顔をしてもダメだぞ、クロウっ。我の妃に、男友達など…」
「ですが、陛下。俺はとっくに、クロウとはお友達なんだが? な? クロウ。もっと食え」
そう言って、アルフレドがさらにサンドイッチを皿に盛ってきた。
そんなに食べられませんよぉ。
でもアルフレドは、ぼくの鳥ガラボディを心配しているから。頑張って食べますけど。
「アルフレドも、セドリック様もシヴァーディ様も、お友達ではありますが。どちらかというと、頼れるお兄様寄りなのです。でも、ぼくを友達だと言ってくださることは、とてもありがたいことです」
「クロウは相変わらず謙虚だな? ま、そこがクロウの良いところだが?」
アルフレドが、うんうんとうなずいたところに。陛下が口をはさんだ。
「アルフレドは、アイリスと恋仲なので、許している。恋人持ちなら、許せるのだが…」
「あぁ、陛下は恋敵を牽制して、男友達禁止とか言ったのですね? クロウ、愛されてるぅぅぅっ」
からかう眼差しで、アルフレドに見られ。ぼくは、恥ずかしくて。顔を真っ赤にした。
やめてください。照れるじゃないですか。
「こここ、恋敵? けけけ、牽制なんか、しなくても。大丈夫だと思いますけど? ぼくのような地味な男、誰の目にも止まりませんから」
「馬鹿を言うな。我が見初めた者が、地味なわけがなかろう。あちこち牽制してもし足りないぞ」
そうです。陛下は、そういえば、少し残念な審美眼をお持ちでしたね?
学園に通って、きらびやかな貴族子女を見れば、いずれ治ると思いますが。まだ一日目なので。仕方がないですね。
「またおまえは、我を『お可哀想に』って顔で見る。なんなのだ、それは?」
今は説明しても、きっとおわかりにならないでしょうから。
ここは、華麗にスルーいたしましょう。
「…しかしながら、陛下が気にかかるとおっしゃるのなら。ぼくは男友達をあきらめて、シオンで我慢します」
「兄上。ぼくは、なにやら、とっても悲しい気分です」
「クロウ、返答になっておらぬぞ」
黒猫シオンと、陛下が、半目になって言う。
陛下、聞かなくていいことが、世の中にはあるのです。
そして、弟よ。君は一応ぼくのボディーガードなのだから、我慢したまえ。
「とはいえ、シオンはまだ二学年だからな。我らの特別授業の最中は、クロウのそばにいられないだろう? 公務で、我が学園に来られない日もある。そういうときは、彼らふたりに仕えてもらうように」
ぼくの答えは、あきらめたようで。ため息をついた陛下が、ぼくにそう言った。
「ベルナルド様とカッツェ様は、授業は大丈夫なのですか?」
その疑問には、ベルナルドが答えた。
彼らの話をしていたというのに、今まで一言も声を発していなかったね?
アイキンの主要キャラなのだから、もっと発言して、目立ってもいいのですよ?
「私とカッツェは、すでに四学年の教育課程をおさめており、いつでも卒業できる立場でございます。残りの在学期間、王宮務めの予行のつもりで、陛下のおそばで勉強させていただいております」
「うわぁ、とても優秀なのですね? ぼくなんか、編入試験がもう、難しくて。パスできるか、ひやひやしてしまったのですよ? さすが、セントカミュ学園。入学するのにも、とてもハイレベルだと感じました」
そうなのだ。ぼくは、編入できないかなって、試験問題を見て思ったのだ。
前世の、高校レベル、くらいではあったのだが。
もう、ン十年前の記憶だからな。なんとか、試験用紙を全部埋められたなって、感じ。
あ、歴史は。王家オタクだから、楽勝だったけどね。
陛下のお友達は、そんな、セントカミュ学園を卒業できるほどの、優秀な人材なのだと。ぼくは尊敬の眼差しでみつめたのだった。
すると。陛下が苦笑して、言う。
「クロウ。おまえの試験問題は、卒業レベルと官吏の採用試験レベルだと聞いているぞ? 我もクロウも、教育分野は修了認定だと言われている。あとは実技だけなのだ」
え? アレって。卒業レベルの問題だったの?
聞いてないんですけどぉ?
なんで、いきなり、そんな難しい問題をやらせるんですか? 落ちたらどうするんですかっ!
まぁ、でも…。
「そうなのですか? だったら、あの域までは、シオンにも教え込んであるので。勉学に気を取られることなく、楽しい学園生活を送れそうだな。良かったな? シオン?」
ぼくは、膝の上で丸くなるシオンの尻を、ぺんぺん叩いた。
「とにかく、クロウ。学園では、おまえも彼らに守ってもらうのだぞ? ただし、あくまでも従者としてだ」
陛下は厳しい目で、彼らを見据え。
それに、ベルナルドとカッツェは、深く頭を下げたのだった。
「承知いたしました、陛下」
「陛下ではなく、イアンと呼んでよい。学園は身分に囚われない自由な校風だと聞いている。みなも、我のことはイアンと呼んでよいからな? シャーロットも、友達にはそう呼んでもらうようにしなさい」
陛下は、海色の瞳を優しく細めて、シャーロットに告げた。
陛下と同じ、黄金色の髪がまぶしいシャーロットは、ちょっと吊り気味の目を、きらりと輝かせ。言ったのだ。
「はい、お兄様。私、もう、お友達ができましたの。もちろん、とっくに名前呼びですわよ? ね、アイリス?」
「えぇ。そうなのです、陛下…イアン様。マリアンヌ・マルセル男爵令嬢という方で。みなさま、王族のシャーロット様を遠巻きにする中、彼女だけが、学内で迷っていた私たちを、助けてくださいましたの」
アイリス…従者の君が迷ったら、駄目なんじゃね?
とは思いつつ。
ぼくらよりも断然、友達作りが上手なシャーロットに。ぼくも陛下も、笑顔を引きつらせるのだった。
ぼくは、膝の上に黒猫を抱いて、ランチを取っている。
唐揚げをひと口大に裂いて、ひたすらシオンの口に持っていっていた。
ほらぁ、昼どきに猫になんかなるからぁ。
猫の姿じゃあまり食べられなくて、午後の授業中にお腹が空いてしまうよ。
シオンは猫の姿なのを良いことに、恥ずかしげもなく、ひたすら大きな口を開けて、ぼくがお肉を口に放り込むのを待っている。
ヒナかっ。もぐもぐしやがって、可愛いじゃねぇかっ。
そんなシオンを、陛下は苦み走った顔で見やるが。
一応、和やかなランチの席で、口火を切った。
「今日は、みんなに、彼らを紹介しようと思っていたのだ。彼が宰相の孫で、ベルナルド・ウィレム。彼は、騎士科の四年生でカッツェ・オフロ。我は…彼らと友達になったのだ」
ひとりひとり、手でさし示して言う、陛下の爆弾発言に。丘の上の面々は、ええぇぇっ、と声を上げた。
いや、ぼくらはともかく。なぜ友達認定されている、ベルナルドとカッツェまで、驚いているのでしょう?
「イアン様、いつの間に、お、お、お友達なんか作っていたのですか?」
目を丸くして、ぼくはたずねる。
ぼくなんか…十二年も学校に通ったというのに、まともな友達は、ひとりも作れなかったんですよ?
それなのに、登校一日目で友達を作ってしまうなんて、さすが陛下です。
つか、友達って、どうやって作るのですか? ぜひご教授いただきたい。
陰キャのコミュ障なので、必死です。
ぼくの驚愕と、尊敬の眼差しを受けて。陛下は、ニヤリと笑う。ドヤ顔です。
「すごいだろう? クロウ。騎士は学園に帯同できないからと、学園長が彼らを紹介してくれたのだ」
アルフレドが。それって、友達ではなくて従者なのでは? と、つぶやいていたけど。
友達への憧憬を深める、ぼくらにとって。その経緯や肩書などは、どうでもいいのですっ。
「すごーい、というか、ズルいですぅ。ぼ、ぼくとも友達になってくださいませ。ベルナルド様、カッツェ様」
きらりと、期待の眼差しでみつめると。
緑色の髪の毛の、アイリスが言うところの第三攻略対象であるベルナルドと。
紫の短髪で、これも絶対、攻略対象ですよね? という、イケメンのカッツェが。
ふたりとも、んんんっ、と喉を詰まらせた。
あぁ、流行りの風邪ですね。みなさん、体に気をつけて。
「なっ、ならぬ。クロウは男友達を作るの禁止だ」
陛下は、慌てた様子でそう言うと。ふたりをギラリと睨んだ。
えぇ? もうそのように、感情あらわにできる気安い仲になっているのですか?
なんて、うらやましい、御関係でしょう。
「そんなぁ、ぼくはお友達を作ってはいけないのですか?」
そうしたら、ぼくは。ン十年、いや、死ぬまで、友達が作れないことになります。
でも、陛下のお言葉は絶対ですしぃ。
来世があるかはわかりませんが。ぼくの友達作るぞ大作戦は、来世まで持ち越しのようです。
「いいじゃないの? クロウ様。友達は、私がいるでしょ?」
そよ風にオレンジの髪を揺らし、桃色の瞳をやんわりと細めて、アイリスがぼくの腕にキュッと抱きついてくる。
わわ、柔らかい。
でも、アイリスぅ。聖女様がそのような、体を押しつけるようにするのは、はしたないですよっ?
つか、これは。ぼく、男認定されていないパターンですね? うすうす感じていました。
わかっています。もちろん、アイリスは、心強いぼくの友達ですよ? だけど。
「アイリスは、ぼくの一番のお友達です。でも、男子の友達も、ほしいではないですか? たとえば、運動の時間や魔法の時間で、相手を組むときとかぁ?」
「あぁ、ボッチに酷な、あの制度ね?」
アイリスも、なんだか遠い目をして言う。
アイリスも、あの『友達くらい、ひとりは必ずいるでしょ?』が大前提の、悪の制度に、翻弄された口なのでしょうか?
前世は、ボッチのオタクに、厳しい世界でしたよね?
「運動や魔法の相手は、必ず我が務める。クロウをひとりにはさせぬ」
キリリとした顔で、陛下は言うが。
そういう自分は、友達作っているじゃーん。ズルーい。
「そうです。男友達なんて、必要ありません。兄上にはぼくがいるでしょ?」
猫の声で、ニャーニャー言うけど。
てか、おまえは早く、人型に戻れば?
「シオンは弟で、男友達じゃないじゃーん」
唇をとがらせて、ぼくは言う。拗ね拗ねである。
「とにかく、我は許さぬ。そ、そのように可愛い顔をしてもダメだぞ、クロウっ。我の妃に、男友達など…」
「ですが、陛下。俺はとっくに、クロウとはお友達なんだが? な? クロウ。もっと食え」
そう言って、アルフレドがさらにサンドイッチを皿に盛ってきた。
そんなに食べられませんよぉ。
でもアルフレドは、ぼくの鳥ガラボディを心配しているから。頑張って食べますけど。
「アルフレドも、セドリック様もシヴァーディ様も、お友達ではありますが。どちらかというと、頼れるお兄様寄りなのです。でも、ぼくを友達だと言ってくださることは、とてもありがたいことです」
「クロウは相変わらず謙虚だな? ま、そこがクロウの良いところだが?」
アルフレドが、うんうんとうなずいたところに。陛下が口をはさんだ。
「アルフレドは、アイリスと恋仲なので、許している。恋人持ちなら、許せるのだが…」
「あぁ、陛下は恋敵を牽制して、男友達禁止とか言ったのですね? クロウ、愛されてるぅぅぅっ」
からかう眼差しで、アルフレドに見られ。ぼくは、恥ずかしくて。顔を真っ赤にした。
やめてください。照れるじゃないですか。
「こここ、恋敵? けけけ、牽制なんか、しなくても。大丈夫だと思いますけど? ぼくのような地味な男、誰の目にも止まりませんから」
「馬鹿を言うな。我が見初めた者が、地味なわけがなかろう。あちこち牽制してもし足りないぞ」
そうです。陛下は、そういえば、少し残念な審美眼をお持ちでしたね?
学園に通って、きらびやかな貴族子女を見れば、いずれ治ると思いますが。まだ一日目なので。仕方がないですね。
「またおまえは、我を『お可哀想に』って顔で見る。なんなのだ、それは?」
今は説明しても、きっとおわかりにならないでしょうから。
ここは、華麗にスルーいたしましょう。
「…しかしながら、陛下が気にかかるとおっしゃるのなら。ぼくは男友達をあきらめて、シオンで我慢します」
「兄上。ぼくは、なにやら、とっても悲しい気分です」
「クロウ、返答になっておらぬぞ」
黒猫シオンと、陛下が、半目になって言う。
陛下、聞かなくていいことが、世の中にはあるのです。
そして、弟よ。君は一応ぼくのボディーガードなのだから、我慢したまえ。
「とはいえ、シオンはまだ二学年だからな。我らの特別授業の最中は、クロウのそばにいられないだろう? 公務で、我が学園に来られない日もある。そういうときは、彼らふたりに仕えてもらうように」
ぼくの答えは、あきらめたようで。ため息をついた陛下が、ぼくにそう言った。
「ベルナルド様とカッツェ様は、授業は大丈夫なのですか?」
その疑問には、ベルナルドが答えた。
彼らの話をしていたというのに、今まで一言も声を発していなかったね?
アイキンの主要キャラなのだから、もっと発言して、目立ってもいいのですよ?
「私とカッツェは、すでに四学年の教育課程をおさめており、いつでも卒業できる立場でございます。残りの在学期間、王宮務めの予行のつもりで、陛下のおそばで勉強させていただいております」
「うわぁ、とても優秀なのですね? ぼくなんか、編入試験がもう、難しくて。パスできるか、ひやひやしてしまったのですよ? さすが、セントカミュ学園。入学するのにも、とてもハイレベルだと感じました」
そうなのだ。ぼくは、編入できないかなって、試験問題を見て思ったのだ。
前世の、高校レベル、くらいではあったのだが。
もう、ン十年前の記憶だからな。なんとか、試験用紙を全部埋められたなって、感じ。
あ、歴史は。王家オタクだから、楽勝だったけどね。
陛下のお友達は、そんな、セントカミュ学園を卒業できるほどの、優秀な人材なのだと。ぼくは尊敬の眼差しでみつめたのだった。
すると。陛下が苦笑して、言う。
「クロウ。おまえの試験問題は、卒業レベルと官吏の採用試験レベルだと聞いているぞ? 我もクロウも、教育分野は修了認定だと言われている。あとは実技だけなのだ」
え? アレって。卒業レベルの問題だったの?
聞いてないんですけどぉ?
なんで、いきなり、そんな難しい問題をやらせるんですか? 落ちたらどうするんですかっ!
まぁ、でも…。
「そうなのですか? だったら、あの域までは、シオンにも教え込んであるので。勉学に気を取られることなく、楽しい学園生活を送れそうだな。良かったな? シオン?」
ぼくは、膝の上で丸くなるシオンの尻を、ぺんぺん叩いた。
「とにかく、クロウ。学園では、おまえも彼らに守ってもらうのだぞ? ただし、あくまでも従者としてだ」
陛下は厳しい目で、彼らを見据え。
それに、ベルナルドとカッツェは、深く頭を下げたのだった。
「承知いたしました、陛下」
「陛下ではなく、イアンと呼んでよい。学園は身分に囚われない自由な校風だと聞いている。みなも、我のことはイアンと呼んでよいからな? シャーロットも、友達にはそう呼んでもらうようにしなさい」
陛下は、海色の瞳を優しく細めて、シャーロットに告げた。
陛下と同じ、黄金色の髪がまぶしいシャーロットは、ちょっと吊り気味の目を、きらりと輝かせ。言ったのだ。
「はい、お兄様。私、もう、お友達ができましたの。もちろん、とっくに名前呼びですわよ? ね、アイリス?」
「えぇ。そうなのです、陛下…イアン様。マリアンヌ・マルセル男爵令嬢という方で。みなさま、王族のシャーロット様を遠巻きにする中、彼女だけが、学内で迷っていた私たちを、助けてくださいましたの」
アイリス…従者の君が迷ったら、駄目なんじゃね?
とは思いつつ。
ぼくらよりも断然、友達作りが上手なシャーロットに。ぼくも陛下も、笑顔を引きつらせるのだった。
112
あなたにおすすめの小説
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。
みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。
愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。
「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。
あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。
最後のエンドロールまで見た後に
「裏乙女ゲームを開始しますか?」
という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。
あ。俺3日寝てなかったんだ…
そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。
次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。
「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」
何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。
え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね?
これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる