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2-17 悪辣な悪役令嬢はお金が大好き? ①
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◆悪辣な悪役令嬢はお金が大好き?
ある日のランチタイム。今日も陛下は欠席です。
実は。孤島から脱出して、しばらくは。陛下のご無事を、喜び称えるために。国内の貴族たちが、ぞくぞくと謁見を申し出て。謁見ラッシュな時期があったのです。
ですが、十日も過ぎると、それもいったん落ち着いて。
それで、陛下の学園生活もできそうだな、ということになっていたのですが…。
しかし四月後半になると、時間差で。今度は、諸外国から。陛下復権の祝辞を述べる、第二次謁見ラッシュがスタートしてしまった、ようなのだ。
三日前の放課後。陛下は言いました。
「しばらく、クロウには会えぬかもしれない。あぁ、この気持ちを、なんと言えばいいのか。クロウがそばにいないと、イライラするというか。自然に奥歯をかみしめてしまうような。ギリギリしてしまうような…」
その気持ち、なんとなく、わかります。
推しの供給が足りない、ってやつですよね?
もっと、推しを浴びたいとか。推しの笑顔がぁ、とか。推しの私服姿がぁ、とか。
巴と静が、身悶えながら、叫んでいたことがありました。
ぼくは…巴と静ほどには、オタク度がヤバくはなかった、と思いますけどぉ。
でも、陛下に関することならば。
えぇえぇ、よくわかりますともっ。
「それは、ぼくの…エキスが足りない、的な?」
いわゆるオタクの、そういう気持ちを。この世界で表現するのは、難しいので。そう言ったら。
陛下が瞬時に、顔を真っ赤にした。
「そそそ、そのような。まぁ、したくないと言えば、完全な嘘になるが…」
陛下は、下ネタと勘違いしたようだ。
わわわ、どこのエキス?
とか。想像しちゃったら。
ぼくも、顔が真っ赤になってしまったが。そうじゃなくてぇ。
「あ、あの、そ、そっちのお話ではなくて。なんと申しますか、今の陛下のお気持ちが。もし、ぼくが液体だったらいっぱい飲み干して、体内に貯めておきたい、的な…ぁ」
なんか、どういう言い方をしても、エロくなるな?
オタ活は、決してエロいものばかりでは、ないはずだが?
「…なるほど。そういう話なら。クロウエキスを浴びるほど飲みたいぞ。そしてクロウの匂いをまとって、クロウを思い出せるものを眺めて。いつもクロウを感じていられるようにしたい。そういう気持ちで、合っている」
若干、重くてキモい感情に聞こえるが。
オタクというのは、重くてキモいものだもの。
陛下にも、オタク気質があったのですね?
でも、陛下は。生まれ持った爽やかさで。ともすれば、キモッと言われる発言を。甘い口説き文句に昇華している。
イケメンは得ですね。
たぶん、ぼくが言ったら、キモッと一刀両断されて、ゴミムシのごとく踏みつけられるのでしょうね? 知っています。
たとえば、この世界で。肌身離さず、恋人のものを持ち歩きたい、というときは。
その人が刺繍したハンカチを、大事に持っておくとか。
それぐらいしか、できないのだ。
スマホも写真も、ないからね。
代わるものだと、肖像画をロケットに入れて持ち歩く、とか?
わぁ、なんか。大事すぎて、恥ずかしい。
だって、ぼくの顔を、誰かに描いてもらわなきゃならないんだよ?
それに、こんなモブ顔のぼくを、陛下がペンダントに入れて持ち歩くとか。
へ、陛下の美的感覚のなさが、みなさまにバレてしまいますぅ。無理ぃ。
「あぁ、早く。クロウと結婚して。我のかたわらに、いつも置いておきたい。クロウ、早く嫁に来い」
「…イアン様ぁ」
陛下の言葉に、ぼくはホッとした。
そうだ。ずっとそばにいれば、肖像画の話にはならない。
本物が一番ですよね? と、ふたりの世界になりかけたとき。
無表情のシヴァーディが。陛下を引きずって連れ去ってしまったのだった。
へ、陛下―ぁっ。手を差し伸べても届かぬ、引き離される恋人たち、みたいな。
と、そんなことがあってから、三日ほど。ぼくは陛下の顔を見ていないのでした。寂しい。
それで。そうだ、ランチタイムでしたね。
学園には、食堂がありまして。でも、単一メニューではないので、どちらかというと、カフェが学校の中にある、みたいな感じです。
給仕の方がいて。好きな食事や飲み物を注文して。
その都度作って、給仕が運んでくるという仕様です。
貴族の子女が集まっているので、ちょっとした我が儘なら、聞くらしいよ。
苦手な食べ物は入れないで、とか。
持ってきた茶葉で、お茶をいれて、とかね。
一般の生徒は、そのとき空いている席に、座るのだけど。ぼくたちは、席が決まっています。
こう言ってしまっては、ちょっと鼻持ちならない感じですが。
高位貴族専用席、みたいな?
まぁ、王族ほどの方たちとなりますと。命の危険というものも、少なからずあるのです。
いわゆる、警備上の問題、というやつなのですよ。
ぼくたちは偉いから特別とか、鼻高々なわけでは決してないのですよ?
でも、なんだかんだ、ぼくもシオンも、腐っても公爵令息ですし。
カッツェも公爵令息。国の最高権力の家系が、揃っちゃっているもので。そこは、仕方がないようです。
そして、食事も。基本、アルフレドが用意したものしか、食べてはいけません。
まぁ、それは。陛下と殿下とぼく、に限るのですが。
ぼくは、まだ王族ではないので、普通で大丈夫だと思うのですがぁ。
アルフレドが、せっかく鳥ガラボディを直そうとしてくれているようなので。ご相伴に預かっているのです。
ガラス張りの、庭が美しく見える場所に、八人掛けの机があり。
窓際にベルナルド、その隣がぼく。向かい側の窓際に、カッツェ。ひとつ置いて、シオンが座っている。
ふたりの間には、シャーロットが座る予定。ぼくの横にはアイリスが。席順も、警備に最適な配置になっているんだって。
ぼくには、よくわからないけど。
しかし、シャーロット殿下の脇を、騎士モドキで固めるのは、わかります。重要。
「クロウ様、こんにちは。ここ、よろしいかしら?」
すると、ぼくの隣に、リーリアが座ろうとした。
すかさず、ギンと。ぼく以外の男どもが、殺気立った。
えぇ? もう、公女だって、みんな知っているよね? そんな対応で、大丈夫ですか?
ぼくが戸惑ってしまうと。アルフレドが、ぼくの斜め後ろに立って。告げた。
「失礼ですが、お嬢様。こちらの席は、先約がありますので。他に移動していただけませんか?」
「誰か来るなら、その人が来るまでの間でもいいの。クロウ様にお話があるのよ」
リーリアは、自分の意志が通るものと信じているような言い方をするが。
アルフレドは、首を振った。
「申し訳ありません。こちらは高位の方の席でして…」
「なら、私には資格があるわ。それに、席が空いているのだから。良いでしょう?」
リーリアとアルフレドの攻防に、食堂の、ぼくたちの席の周りにいた生徒が、ざわざわし始める。
みんな、この席は高位貴族が座るものだと知っていて。なるべく近づかないように配慮してくれているのだ。
いつもすみません。お騒がせしています。
というか、ぼくらは公女だって知っているけど。
リーリアはただの留学生という設定なのに。高位貴族だってバラしちゃったら駄目なのでは?
「お嬢様…」
「しつこいわねぇ。給仕風情が、私に意見しようとしないで」
「がえんじない…」
アルフレドが低い声でつぶやくと。リーリアは、えっ、と、声を詰まらせた。
「貴方…まさか。陛下の影なの?」
「王族の方々のお食事を任されております、アルフレドと申します。陛下のご友人方とお話になるのに、そのような無礼な態度では、ここを取り仕切る者として許可できません」
その冷たい声に、ぼくは後ろを振り向く。
アルフレドは。薄青の短髪に薄青の瞳。垂れ目なところは、優しさを感じられて、親しみやすい印象に見せるのだが。
ギャルソン風、白シャツに黒のベストと前掛けをつける、今のアルフレドは。最っ高ぅに格好いいのだが。
まるでダンゴムシを踏みつける直前のような、最っ悪ぅな顔で、リーリアを見ていた。
うわぁ、殺し屋モードじゃね?
戦う料理人の、本領発揮ぃ?
駄目駄目、彼女、一応、公女様だから。カザレニア国の御客人だからね? ね?
「ななな、なにか、話があるのなら。聞きますから。お手短かに、どうぞ」
なんか。アルフレドが、すぐにもリーリアを殺っちゃいそうな、不穏な空気を感じたので。
ぼくは。この場を丸くおさめるべく。公女の話を聞くことにした。
ぼくの中に眠っていた、日本人の事なかれ気質が大爆発っ!
もう。アイキンⅡの主人公と、近づきたくないのにぃ。
でも、陛下のいないところで、問題も起こしたくないので。
穏便に。穏便に。我慢、我慢。
「ありがとう、クロウ様。優しいのね? あ、コーヒーとチキンの香草焼のセット…」
「注文は、席を移動してから、お願いします」
ぼくの後ろで睨みをきかせるアルフレドに、冷たく言われ。
公女は、姫様らしからず、頬を引きつらせた。
懲りないねぇ。学習してください。
「あのね、クロウ様にお願いがあるの。話を聞いてくださる?」
「とりあえず、聞くだけは」
ぼくが言うと。向かいからシオンが『兄上ぇ』と、地の底から響いてくるような声で言った。
し、仕方ないじゃん。話を聞くくらいしないと、彼女動かなそうだし。
そうしたら。リーリアは、とうとうと語り出した。
よく、わからない話を。
「私、陛下のお母様、前王妃のお話を、隣国で耳にして。とても胸を打たれたのです。元は仕立て屋の王妃様が、前王をお支えして、強い魔法に目覚めて、王様をお救いしたって。みなさまに祝福されて、愛のあふれた結婚式を挙げたという、身分を越えたシンデレラストーリー。憧れるわぁ」
「…はぁ」
リーリアの話に、この席にいるシオンたちは、もちろん。
近くの、聞き耳を立てている生徒たちも、ん? と首を傾げた。
つか、それ、ぼくの話じゃね?
王妃様は平民出身じゃないし。
カザレニア国民なら、王妃様が高貴な出身なのは、みんな知っている話なんだけどな。
「だけど、今の陛下の婚約者ったら。お金目当ての守銭奴令嬢なのでしょう? 悪辣な悪役令嬢はお金が大好き。いずれ王妃になって、王家の莫大な資産を手にする。それが目的で、陛下を孤島からお救いしたらしいじゃない? そりゃあ、陛下を島からお救いしたことは、いいことよ。でも、そこには陛下への愛情なんてひとかけらもないのよ? ひどい話だわぁ」
なんですか、それ?
悪辣な悪役令嬢はお金が大好き? それって誰ですかぁ? ぼくですかぁ?
ぼく、お金のために、陛下を救ったりしてないもーんっ。
ある日のランチタイム。今日も陛下は欠席です。
実は。孤島から脱出して、しばらくは。陛下のご無事を、喜び称えるために。国内の貴族たちが、ぞくぞくと謁見を申し出て。謁見ラッシュな時期があったのです。
ですが、十日も過ぎると、それもいったん落ち着いて。
それで、陛下の学園生活もできそうだな、ということになっていたのですが…。
しかし四月後半になると、時間差で。今度は、諸外国から。陛下復権の祝辞を述べる、第二次謁見ラッシュがスタートしてしまった、ようなのだ。
三日前の放課後。陛下は言いました。
「しばらく、クロウには会えぬかもしれない。あぁ、この気持ちを、なんと言えばいいのか。クロウがそばにいないと、イライラするというか。自然に奥歯をかみしめてしまうような。ギリギリしてしまうような…」
その気持ち、なんとなく、わかります。
推しの供給が足りない、ってやつですよね?
もっと、推しを浴びたいとか。推しの笑顔がぁ、とか。推しの私服姿がぁ、とか。
巴と静が、身悶えながら、叫んでいたことがありました。
ぼくは…巴と静ほどには、オタク度がヤバくはなかった、と思いますけどぉ。
でも、陛下に関することならば。
えぇえぇ、よくわかりますともっ。
「それは、ぼくの…エキスが足りない、的な?」
いわゆるオタクの、そういう気持ちを。この世界で表現するのは、難しいので。そう言ったら。
陛下が瞬時に、顔を真っ赤にした。
「そそそ、そのような。まぁ、したくないと言えば、完全な嘘になるが…」
陛下は、下ネタと勘違いしたようだ。
わわわ、どこのエキス?
とか。想像しちゃったら。
ぼくも、顔が真っ赤になってしまったが。そうじゃなくてぇ。
「あ、あの、そ、そっちのお話ではなくて。なんと申しますか、今の陛下のお気持ちが。もし、ぼくが液体だったらいっぱい飲み干して、体内に貯めておきたい、的な…ぁ」
なんか、どういう言い方をしても、エロくなるな?
オタ活は、決してエロいものばかりでは、ないはずだが?
「…なるほど。そういう話なら。クロウエキスを浴びるほど飲みたいぞ。そしてクロウの匂いをまとって、クロウを思い出せるものを眺めて。いつもクロウを感じていられるようにしたい。そういう気持ちで、合っている」
若干、重くてキモい感情に聞こえるが。
オタクというのは、重くてキモいものだもの。
陛下にも、オタク気質があったのですね?
でも、陛下は。生まれ持った爽やかさで。ともすれば、キモッと言われる発言を。甘い口説き文句に昇華している。
イケメンは得ですね。
たぶん、ぼくが言ったら、キモッと一刀両断されて、ゴミムシのごとく踏みつけられるのでしょうね? 知っています。
たとえば、この世界で。肌身離さず、恋人のものを持ち歩きたい、というときは。
その人が刺繍したハンカチを、大事に持っておくとか。
それぐらいしか、できないのだ。
スマホも写真も、ないからね。
代わるものだと、肖像画をロケットに入れて持ち歩く、とか?
わぁ、なんか。大事すぎて、恥ずかしい。
だって、ぼくの顔を、誰かに描いてもらわなきゃならないんだよ?
それに、こんなモブ顔のぼくを、陛下がペンダントに入れて持ち歩くとか。
へ、陛下の美的感覚のなさが、みなさまにバレてしまいますぅ。無理ぃ。
「あぁ、早く。クロウと結婚して。我のかたわらに、いつも置いておきたい。クロウ、早く嫁に来い」
「…イアン様ぁ」
陛下の言葉に、ぼくはホッとした。
そうだ。ずっとそばにいれば、肖像画の話にはならない。
本物が一番ですよね? と、ふたりの世界になりかけたとき。
無表情のシヴァーディが。陛下を引きずって連れ去ってしまったのだった。
へ、陛下―ぁっ。手を差し伸べても届かぬ、引き離される恋人たち、みたいな。
と、そんなことがあってから、三日ほど。ぼくは陛下の顔を見ていないのでした。寂しい。
それで。そうだ、ランチタイムでしたね。
学園には、食堂がありまして。でも、単一メニューではないので、どちらかというと、カフェが学校の中にある、みたいな感じです。
給仕の方がいて。好きな食事や飲み物を注文して。
その都度作って、給仕が運んでくるという仕様です。
貴族の子女が集まっているので、ちょっとした我が儘なら、聞くらしいよ。
苦手な食べ物は入れないで、とか。
持ってきた茶葉で、お茶をいれて、とかね。
一般の生徒は、そのとき空いている席に、座るのだけど。ぼくたちは、席が決まっています。
こう言ってしまっては、ちょっと鼻持ちならない感じですが。
高位貴族専用席、みたいな?
まぁ、王族ほどの方たちとなりますと。命の危険というものも、少なからずあるのです。
いわゆる、警備上の問題、というやつなのですよ。
ぼくたちは偉いから特別とか、鼻高々なわけでは決してないのですよ?
でも、なんだかんだ、ぼくもシオンも、腐っても公爵令息ですし。
カッツェも公爵令息。国の最高権力の家系が、揃っちゃっているもので。そこは、仕方がないようです。
そして、食事も。基本、アルフレドが用意したものしか、食べてはいけません。
まぁ、それは。陛下と殿下とぼく、に限るのですが。
ぼくは、まだ王族ではないので、普通で大丈夫だと思うのですがぁ。
アルフレドが、せっかく鳥ガラボディを直そうとしてくれているようなので。ご相伴に預かっているのです。
ガラス張りの、庭が美しく見える場所に、八人掛けの机があり。
窓際にベルナルド、その隣がぼく。向かい側の窓際に、カッツェ。ひとつ置いて、シオンが座っている。
ふたりの間には、シャーロットが座る予定。ぼくの横にはアイリスが。席順も、警備に最適な配置になっているんだって。
ぼくには、よくわからないけど。
しかし、シャーロット殿下の脇を、騎士モドキで固めるのは、わかります。重要。
「クロウ様、こんにちは。ここ、よろしいかしら?」
すると、ぼくの隣に、リーリアが座ろうとした。
すかさず、ギンと。ぼく以外の男どもが、殺気立った。
えぇ? もう、公女だって、みんな知っているよね? そんな対応で、大丈夫ですか?
ぼくが戸惑ってしまうと。アルフレドが、ぼくの斜め後ろに立って。告げた。
「失礼ですが、お嬢様。こちらの席は、先約がありますので。他に移動していただけませんか?」
「誰か来るなら、その人が来るまでの間でもいいの。クロウ様にお話があるのよ」
リーリアは、自分の意志が通るものと信じているような言い方をするが。
アルフレドは、首を振った。
「申し訳ありません。こちらは高位の方の席でして…」
「なら、私には資格があるわ。それに、席が空いているのだから。良いでしょう?」
リーリアとアルフレドの攻防に、食堂の、ぼくたちの席の周りにいた生徒が、ざわざわし始める。
みんな、この席は高位貴族が座るものだと知っていて。なるべく近づかないように配慮してくれているのだ。
いつもすみません。お騒がせしています。
というか、ぼくらは公女だって知っているけど。
リーリアはただの留学生という設定なのに。高位貴族だってバラしちゃったら駄目なのでは?
「お嬢様…」
「しつこいわねぇ。給仕風情が、私に意見しようとしないで」
「がえんじない…」
アルフレドが低い声でつぶやくと。リーリアは、えっ、と、声を詰まらせた。
「貴方…まさか。陛下の影なの?」
「王族の方々のお食事を任されております、アルフレドと申します。陛下のご友人方とお話になるのに、そのような無礼な態度では、ここを取り仕切る者として許可できません」
その冷たい声に、ぼくは後ろを振り向く。
アルフレドは。薄青の短髪に薄青の瞳。垂れ目なところは、優しさを感じられて、親しみやすい印象に見せるのだが。
ギャルソン風、白シャツに黒のベストと前掛けをつける、今のアルフレドは。最っ高ぅに格好いいのだが。
まるでダンゴムシを踏みつける直前のような、最っ悪ぅな顔で、リーリアを見ていた。
うわぁ、殺し屋モードじゃね?
戦う料理人の、本領発揮ぃ?
駄目駄目、彼女、一応、公女様だから。カザレニア国の御客人だからね? ね?
「ななな、なにか、話があるのなら。聞きますから。お手短かに、どうぞ」
なんか。アルフレドが、すぐにもリーリアを殺っちゃいそうな、不穏な空気を感じたので。
ぼくは。この場を丸くおさめるべく。公女の話を聞くことにした。
ぼくの中に眠っていた、日本人の事なかれ気質が大爆発っ!
もう。アイキンⅡの主人公と、近づきたくないのにぃ。
でも、陛下のいないところで、問題も起こしたくないので。
穏便に。穏便に。我慢、我慢。
「ありがとう、クロウ様。優しいのね? あ、コーヒーとチキンの香草焼のセット…」
「注文は、席を移動してから、お願いします」
ぼくの後ろで睨みをきかせるアルフレドに、冷たく言われ。
公女は、姫様らしからず、頬を引きつらせた。
懲りないねぇ。学習してください。
「あのね、クロウ様にお願いがあるの。話を聞いてくださる?」
「とりあえず、聞くだけは」
ぼくが言うと。向かいからシオンが『兄上ぇ』と、地の底から響いてくるような声で言った。
し、仕方ないじゃん。話を聞くくらいしないと、彼女動かなそうだし。
そうしたら。リーリアは、とうとうと語り出した。
よく、わからない話を。
「私、陛下のお母様、前王妃のお話を、隣国で耳にして。とても胸を打たれたのです。元は仕立て屋の王妃様が、前王をお支えして、強い魔法に目覚めて、王様をお救いしたって。みなさまに祝福されて、愛のあふれた結婚式を挙げたという、身分を越えたシンデレラストーリー。憧れるわぁ」
「…はぁ」
リーリアの話に、この席にいるシオンたちは、もちろん。
近くの、聞き耳を立てている生徒たちも、ん? と首を傾げた。
つか、それ、ぼくの話じゃね?
王妃様は平民出身じゃないし。
カザレニア国民なら、王妃様が高貴な出身なのは、みんな知っている話なんだけどな。
「だけど、今の陛下の婚約者ったら。お金目当ての守銭奴令嬢なのでしょう? 悪辣な悪役令嬢はお金が大好き。いずれ王妃になって、王家の莫大な資産を手にする。それが目的で、陛下を孤島からお救いしたらしいじゃない? そりゃあ、陛下を島からお救いしたことは、いいことよ。でも、そこには陛下への愛情なんてひとかけらもないのよ? ひどい話だわぁ」
なんですか、それ?
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