【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶

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番外 モブから略奪? リーリア・ブランの野望 ⑤

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     ◆モブから略奪? リーリア・ブランの野望 ⑤

 本当に、信じられないわ。これはどういう展開なのかしら?
 っていうか、モブが陛下と結婚とか、同性結婚以上にあり得なくない?
 モブよ? 考えられないわ。

 アイリスに、正面から怒られてしまって。私は、悔しさにワナワナ震えて。食堂を出て行くしかなかった。
 信じられないくらいの敗北感よ。
 …つか、なんでアイリスは、前作の主人公なのに。アイキンⅡの主人公である、私の味方をしてくれないのかしら?
 なんか、いろいろ言っていたけれど。
 アイキンのヘビーユーザー、なんて言葉を出してくるのだから、アイリスも転生者なんでしょ? 協力してよっ。

 だけど、もしかして。攻略対象にアルフレドが入っていたから、アイリスは手助けしてくれないのかもしれないわね。
 っていうか、なんで、前作でアイリスに攻略済みのアルフレドが、陛下の影、第五の攻略対象者なのよ?

 普通、アイキンⅡになったら、キャラ総入れ替えになるはずでしょ?
 アイキンⅠのキャラが、アイキンⅡのシークレットキャラになるとか、知らんがな。

 がえんじないって言われたとき、ブモブモ音が鳴ったから。
 たぶん、絶対、攻略対象なのよね?

 私がゲームでやったときは。第五の攻略対象は。
 一回目は、教師の中に紛れていて。二回目は、学園の庭を整える庭師だった。

 学園の敷地の奥の方には、森があって。そこで、陛下とプチ遭難イベントがあるのだけど。
 そこにシークレットキャラが、助けに来るのよ。
 君が陛下を守ってくれたのかい? ありがとうって。私に感謝するのだけど。

 陛下と森に行く前に、がえんじない、喰らっちゃったわ。

 たかがゲームで、そんなにバリエーションがあるわけないと思って。
 教師か庭師に、狙いを定めていたのよぅ。
 アルフレドは、完全に想定外だったわ?

 あぁ、もう駄目。逆ハーは。
 それどころか。攻略対象が、もう陛下と、カッツェしか、残っていないわ。どうしたらいいの?

 とほほ、と。食堂の扉を出ると。出入り口付近に座っていた生徒の声が、漏れ聞こえてくる。
「あの人、クロウ様のこと、知らないの? 毎日のように、新聞に、クロウ様と陛下のなれそめ記事とか出てるのに」
「ほら、留学生だから。カザレニアの新聞は読まないのよ」
「仕立て屋クロウと、陛下の、身分違いの恋。の記事が。私、好きなのよねぇ? 男性であるクロウ様を、伴侶だと、全国民に知らせた、陛下の男らしさ。たまらないわぁ。王都に響き渡った、陛下のお声。今思い出しても、胸が震えるの」
「私は、幽閉状態にあって、死を覚悟した陛下が。クロウ様の支えによって、生きる希望を見出した、っていう記事が好きよ。クロウ様がいなかったら、陛下は失意の中、本土に渡る気になれなかったかもしれないのだもの。まさに、カザレニアの民をも救った、英雄よね?」

 なによ、それ。陛下のお心を支えるのは、陛下に愛を教えるのは、私の役目のはずなのに。
 なんでモブが、もう陛下を救っちゃっているの?

 私は唇をかみしめ、教室へ向かうと。そこで号外を読み込んだ。
 そこには、陛下とクロウの、孤島でのラブストーリーが、まるで見てきたかのように、記事に書かれていた。
 仕立て屋のクロウが、献身的な愛で陛下を支えた…という話も書いてある。
 えっ? 元仕立て屋って、今の王妃様の話じゃないの?

 私が勘違いしていたってこと?

 それって、陛下とクロウのことを、知らぬ間に私、憧れていたってことになるじゃん。
 っ違いますから。憧れていませんから。ノーカウントでお願いします。

 あと、新聞には。守銭奴の悪辣侯爵令嬢のことは、全く書かれていなかった。
 私がアイキンⅡをやったときは。そういうあらすじだったわよぉ?
 侯爵令嬢によって、島から救い出されたものの。
 令嬢は、散財がひどくて。
 恩義に従い、婚約はしたけれど。彼女に愛情を感じたことは、一度もない。って、陛下が主人公に愚痴るの。

 あああぁっ、ここじゃない?

 だって、クロウが陛下を助け出したかもしれないけれど。男同士だもの。愛情なんか、湧くわけないって。
 ここは、乙女ゲームの世界なんだから。
 男でモブの仕立て屋が、まかり間違って悪役侯爵令嬢の地位にいる。それこそが、バグじゃない?
 そうに決まっているわ。

 それに、陛下はカザレニア国王だし。王族は、御世継ぎを生み育てることこそが、責務じゃない?
 そうよ。八月の結婚式までに、陛下と仲良くなれれば。本当の愛情を、陛下に知ってもらえたら。

 そうしたら、八月、結婚式を挙げるのは、クロウじゃなくて、私。

 陛下と私の結婚式になるじゃない?
 やった。やれる。まだ、変えられるわ。
 ってか、もう勝ったも同然じゃね?
 男のクロウと、公女の私の差し替えなんて、簡単でしょう?

 今は、この記事を読むと、陛下はクロウに寄り添って、仲睦まじく見えるけど。
 肖像画は、ただの創作の絵だし。
 新聞記事も、上からの依頼で誇張して書くこともできるでしょ? 本当かウソかわからないわよ。

 それに、これは確実なことだけど。クロウに御世継ぎは産めないじゃない。

 陛下だって、私が目の前に現れれば、世継ぎを産めないクロウなんかさっさと捨てて、私を好きになってくれるはずよ。
 家格も最高、魔力も潤沢、なにより女性。
 なんていったって、アイキンの主人公だし。選ばない理由がないわ。

 それに、きっと、ゲームの強制力だって、あるはずよ。
 いいわ。逆ハーは、ちょっと欲張りだったかもね?
 これからは、陛下の攻略を集中して行うわ。

 アイキンの公式だって、いつまでもモブをのさばらせておく気はないはずよ。
 早く、強制力ってやつで。私を、陛下の婚約者に据えてみせてちょうだい?

 さぁ、張り切っていきましょう。次、次ぃ。

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