【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶

文字の大きさ
157 / 176

2-25 剣術大会っ! ②

しおりを挟む
 剣術大会が行われる、屋外の剣闘技場は。前世的に言うと、自然公園なんかに併設されている球場、くらいの大きさだ。
 ドーム球場とか、オリンピックで使われる陸上競技場とか、そういうものを見知っているぼくとしては、ちょっと小さめに感じるが。
 一学園にある施設としては、大きい方なのだろうな?
 だから、前列にいれば、舞台中央で戦う選手は、それなりに大きく見えるし。声や息遣いも、耳をすませば、聞こえる。それぐらいの距離感です。

 剣術大会は、トーナメント制。
 右の山には、陛下がいて。
 左の山には、シオンとカッツェがいる。
 シオンとカッツェは、勝ち上がっていったら、準決勝で当たるみたい。
 わぁ、どうなっちゃうんだろうなぁ?

 トーナメント表を見て、ウキウキしていたら。
 どこからか、視線を感じて。
 顔を上げると、ちょっと離れた場所にいた公女様が、ぼくを睨んでいた。
 なんか、鼻で笑われたような?
 せっかくの愛らしい主人公顔なのに、そんなに嫌な感じに歪ませたら、もったいないですよ? 

 公女の目つきに、シヴァーディが気づいたようで。
 視線を遮るように、ぼくの横に座ってくれた。
「陛下のご婚約者様は、命に代えても、私がお守りしますよ」
 銀髪キラキラのシヴァーディに、騎士のストイックな表情で言われてしまったら。ぼくのハートがどっきゅんします。
 いえ、陛下。これは浮気ではありません。
 人間なら当然の、誰もが起こりうる、どっきゅんなので、仕方がないのです。

「はわわ、からかわないでください、シヴァーディ様。大袈裟ですよ。でも、ありがとうございます」
 警護のお礼を言うと、フと笑みを見せてくれるから。ぼくも彼に笑いかけた。
 しかししかし。今度は違う方から、なにやら刺さる視線を感じて。反対側に顔を向けると。

 アイリスとマリーが、こちらをガン見していた。

「やだっ、シヴァ×クロは考えたことがなかったけど。これもなかなか、いいわね?」
「でも、マリー。シヴァ×クロは、もはや百合。アイキンではない展開ですわ?」
「それがいいのよ、アイリス。頭の中の妄想は、私たちだけの楽しみ。どのようにも膨らませて良いの。そしてそれが、表現の幅をより深めるのよぉ?」
「さすが、先生。勉強になります」

 いや…アイリス。今、なんの勉強をしているんだい? つか、百合じゃないしぃ。

 そうしているうちに、試合が始まり。大歓声の中、さっそく陛下が登場した。
 生徒のみなさんは、騎士服に似たデザインのものながら、ベージュ色で質素な制服を身に着けているが。
 陛下は紺色の、騎士団長の服に似せたものを、着用している。

 ぼくが仕立てたのです。うふふ。

 陛下は人前では、上質な夜会服や、盛装を着ることが多い。
 普段は、白シャツ黒ズボンだけど。

 だからぁ、ここは。コスプレ製作者の本領発揮というかぁ?
 国王である陛下が、騎士服を着たら? なんて。そんな美味しいイベントを、スルーできないわけですよ。

 まぁ、いろいろ? ぼくの花嫁衣装の刺繍や、一学期末のダンスパーティー用の正装や、作らなければならないものは目白押しですけど。
 ここは頑張りましたよっ。

 今、着ている、セドリック騎士団長の騎士服は。本土に渡ったあと、新調したものだ。
 一般の騎士服は、生徒たちが着るクリーム色に近いベージュより、もうちょっと濃いめの、薄茶なのだが。
 セドリックは王城でも、騎士団長仕様の、えんじ色で。装飾も見事なものを着用していた。

 新調した騎士服は、王城にいたときよりも色鮮やかで、パリッとしている。

 それと色違いのものを、ぼくは陛下にお作りしたわけ。
 白い衣装も、陛下はお似合いですが。
 やはり、色目を暗くおさえると、燃える黄金の髪がより美しく輝いて見えるので。素敵です。

 ちなみに、横に座る副長のシヴァーディも、えんじ色を着用している。
 えんじ色は、セドリック直属の騎士が着用できる、誉れ高い色なんだってさ。
 なので、機会はないとは思いますが。
 ぼくは…シヴァーディの銀髪には、思い切って、黒のシックな騎士服とか、似合うと思うんですけどねぇ?

 なんて、考えているうちに。陛下と、生徒との試合が始まりましたっ。
 が。たったの一振りで。陛下は、相手の剣を弾き飛ばしてしまって。
 結局、十秒も舞台に立っていなかった。

 えぇ? もう終わりですか? もっと陛下の雄姿が見たかったです。

 まぁ、そんな感じで。陛下は、生徒たちをバッタバッタと倒し。あっという間に、決勝進出を決めたのだった。
 さすがです、陛下ッ。
 そして、シオンとカッツェも、順当に勝ち上がっていき。
 いよいよ、ふたりの準決勝戦です。

 でもさ、ぼくは。空気を読んでしまうわけですよ。

 学園側としては、騎士科の首席であるカッツェと、陛下の、決勝対決を期待していたんだと思うんだよね?
 それで、トーナメントの山を分けたんだと思うんだよね?

 空気を読んでっ、シオン。

 でも、シオンは。わざと負けるとか、できない子だからなぁ?
 真っすぐに育ててしまったからな。
 なにやら、対戦しながら、肖像画、とか。資格なし、とか言って。剣を振っているけど。
 結局、シオンの、スピード力のある剣筋を見切ることが出来なくて。カッツェは場外に落されてしまった。
 剣術大会主催者さん、うちの弟が、すみませんんん。

 勝ち名乗りをあげたシオン。
 そこに、陛下が出てきて。舞台を見上げる。
「陛下。兄上の前で、コテンパンにやっつけて差し上げます」
「我を見下ろすとは、不敬なやつめ。我こそ、おまえの鼻っ柱を、ポッキリと折ってやる。生意気な弟に手を焼く、クロウのお達しだ」
 そう言って、陛下は舞台に上がり、シオンと睨み合った。

 そうだっ。陛下っ、シオンなんか、けちょんけちょんにしてっ、ぼくの兄の威厳を取り返してください!

 バチバチに鋭く、熱い視線をかわすふたりを目にし。
 観客は。今日一番の歓声を上げる。
 剣術大会は、クライマックスに向かって盛り上がっていった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。

みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。 愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。 「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。 あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。 最後のエンドロールまで見た後に 「裏乙女ゲームを開始しますか?」 という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。  あ。俺3日寝てなかったんだ… そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。 次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。 「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」 何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。 え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね? これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

処理中です...