【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶

文字の大きさ
159 / 176

番外 モブから略奪? リーリア・ブランの野望 ⑥

しおりを挟む
     ◆モブから略奪? リーリア・ブランの野望 ⑥

 陛下に、近づけない。
 攻略対象が、もう、陛下とカッツェしか残っていなくて、私は焦っていた。
 もう、攻略対象を本命の陛下に絞ろうと、食堂での一件があったあとで、思ったのだけど。
 そもそも、陛下とまだちゃんと、話せてもいないわ。
 だって、陛下は。学園内でも、ひとりになることが全然ないの。
 従者であるベルナルドとカッツェ、もしくはシオン様が護衛をされているし。
 そして、ほぼ確実に、あのモブが陛下の隣を陣取っている。

 あぁっ、マジ、ウザッ。あのモブ!

 陛下と話をするには、シオン様に、陛下の休憩場所を教えてもらわないとならない。
 その、最初のイベントに失敗したから。
 丘の上で、ハンカチを差し上げるイベントも。
 昼休み、久しぶりに学園に登校した陛下と、お昼寝イベントも。
 バラ園でハチに追われて、一緒に逃げるキャッキャウフフのイベントも。

 全部。あのモブにかっさらわれてしまったわ? あり得ない。

 イベントをするには。とにかく、陛下がひとりになるところで、会わないとならないのよ。
 それに、まだお話もできていないから。好感度も低いだろうし。
 陛下の休憩室を、独自に探し当てようとしたけど。
 特別教室棟に入ろうとすると、どこからか、職員が現れて。これ以上はお控えください。と言われてしまう。
 まぁ、さすがに、一国の王だから。警備は万全よね?
 頬が引きつっちゃうけど。国防としては、大事よ。うん。

 それで、まずは。やはり、私の味方になってもらう人を、捕まえようと思って。
 カッツェにコナをかけてみた。

 カッツェと仲良くなったら、陛下に大事なお話があるんだけどぉ…と意味深に言ったら、きっと橋渡ししてくれるんじゃないかしらぁ? なんて思っちゃって。
 やだぁ、私、天才じゃね?

 カッツェはね、簡単なのよ。
 カッツェには、優秀な兄がふたりいて、目の上のたんコブというか。兄たちのせいで、自分がどれだけ頑張っても、父である公爵に評価してもらえないって。それを悩んでいて。
 カッツェは三男だから、公爵になることもないし。
 騎士になって、大成するしかなくて。その道だけは極めようと、精進しているってわけ。

 だから。
「カッツェ様はお強いですわ? お兄様のことなど忘れて、カッツェ様はカッツェ様の剣を貫いていけば、よいと思うの」
 なんて、おだてると。
「真に、俺の気持ちを理解してくれるのは、君だけだ」
 ってなるわけよ。

 夕暮れの屋内剣闘技場で、ひとり鍛錬するカッツェに近づき。そう告げると。
 今度は、ブモブモ音は鳴らなかった。
 やった。これは成功したんじゃないかしら?
 がっつかないで、いったんその場をあとにして。カッツェが追ってくるのを待った。

 私が廊下を歩いていると、いきなり手首を掴んで。
 ちょっと、チャラい雰囲気のカッツェが。真剣な目つきで、告げるのよ?
 君しかいないって。

 でも…来ないわね。なんでかしら?

 翌日も、彼の視界に入るところに行ってみたけど。彼が、私に話しかけに来ることはなかった。
 えぇ? なんでなのぉ?
 つか、カッツェ。モブのことをジッと見ているみたいなんだけど。なんなのかしら?
 私のことが見えていないのかしら?

 そんなことないわよね? だって私は、この世で一番可愛くデザインされているのですもの?

 それにしても、カッツェとお友達イベントが不発で。どうしようかしらと。食堂で、特別席に座る陛下たちを、遠くから、うらめしげに見やる。
 そうしたら、なんか、変な、またまたモブっぽい、薄茶メガネ少女が。特別席に招待されている。
 悪役令嬢シャーロットの、お友達みたい。

 やだぁ、そこは私が座るはずの席よぉ?
 陛下の特別なお友達になった私が、攻略対象の男たちに囲まれて、ちやほやされる…その席に座っているのは、クロウだけど。
 なんで公女の私を差し置いて、特別席にある、数少ない椅子に、ポッと出の女モブが座るのよ?
 許せないんですけどぉ。モウ、サイアク。

 そこで、もたもたしていたら。剣術大会の日になっちゃったじゃない。

 なにもできないままに、ゲームの半分が消化されてしまったことになる。
 もう、そんなに大きなイベントは残っていないわ。これは、いよいよヤバいわよ。
 陛下とお近づきになれないと。陛下を落とせないと。留学期間が過ぎたら本国に戻らされて。見知らぬ男と結婚させられるわ。

 嫌よ、そんなの。
 じかに陛下を目にして、その美しさ、高潔さに、惚れ惚れしたわ。絶対に、彼をモノにするのよ。

 剣術大会で、貴賓席に座って、のほほんと試合を観戦しているクロウ。
 その貴賓席に座っているのも、私だったはずなのに。公女が、なんで、一般人と並んでいなきゃならないの?

 腹立つわ。クロウは、ほのぼの笑顔だけど。
 そうやって、ヘラへラ笑っていられるのも、今のうちよ。
 私には、奥の手があるわ。
 すぐにも、貴方を陛下の婚約者の座から引きずりおろしてやる。
 意を決して、私は、観客席を立った。

 いち早く、決勝進出を決めた陛下は。次の対戦相手が決まる試合を、関係者用通路で見ていた。
 護衛は、えんじの騎士服を着るおっさんのみ。
 陛下とふたりきりじゃないけど。もう、仕方がないわね。とにかく、陛下と接点を作らなきゃ。

 つか、騎士服の陛下、超格好いい。やっぱ、第一攻略対象だけあるわ。
 光沢のある紺色の騎士服と、金髪が、キラキラよ。他の攻略対象とは、格が違うわ? 

 もっと、近くで見たくなって。軽やかに、私は駆け寄る。
 すると、すぐにおっさんが気づいて、陛下の前に立つ。
 もう、邪魔なんだけど、おっさん。ちょっと、どいていてよ。

「陛下、あの、お話があって。私、留学生のリーリア・ブランでございます」
 とりあえず、優雅に、美しい淑女の礼を取った。
 のに、なんで、ブモ音が鳴るのよ?
 公女の最高級の礼節をなんだと思っているのかしら?

「御令嬢、陛下に、不用意に近づいてくるのは、無礼ですよ?」
 無礼なのは貴方なのよ、と思いながら。
 私は陛下に、クロウのことで大事な話があると告げる。

 遠くの方で、ブモブモ鳴ってはいるけれど。
 小首を傾げて、可愛い角度で陛下をみつめたら。お優しい陛下は、おっさんを後ろに下げてくれた。
 あらぁ? 陛下ったら。案外ちょろいかもね?

「留学生の御令嬢が、クロウについて、なにか?」
 見てよ、この優しげな顔。陛下は、私をお気に召しているのよ。
 おっさんにはわからないかしらね? という気持ちで、くまさんを見やる。
 すると、ブモッて、また鳴った。
 ま、人を見下げるのはちょっと、はしたなかったかしら?
 でも、私は高貴な出自だから、仕方がないの。同じく、高貴な出の陛下ならわかってくださるわ。

 さて。ここからは、私の見せ場よ?
 男なんか、ちょっと泣いたら、コロリなんだから。
 私は、不遇な目に合っているお姫様。その気持ちで、目に涙をためて、ウルル。
 こういう女の涙に、弱いでしょう? 陛下。

「陛下、私。クロウ様に嫌がらせをされているのです…」
 私は、思いつく悪役令嬢的嫌がらせを、クロウがやったら、こんな感じって。リアリティーを出して、陛下にこんこんと訴えた。
 なのに、ブモブモ音が、遠くから、どんどん近づいてくる感じよ。
 待って、待って、こっちに来ないで?
 つか、信じてないってこと? 可愛い女の子が泣いているのにっ。

「リーリア・ブラン。いや、リーリア・アルガル嬢。クロウは貴方が、ただの留学生ではなく、公女だと知っているのだ。クロウは聡明ゆえ、隣国とトラブルを起こすような所業はしない」
「な、なんで陛下が、公女だって知ってんのよ? ふたを開けたら公女だったっていうところで盛り上がるのに」
「は?」
 あっ、つい、口から出ちゃった。
 でも、小声で早口だったから、陛下には聞こえなかったみたいよ? セーフ。

 つか、なんで、私が公女だってことを、知られているのかしら?
 もう、これ、どう収集つけたらいいのかしら?
 ヤバいわ。マジで、ピンチ。私が嘘つきみたいになっちゃってる。もう、めんどくさっ。

「いえ、陛下。私は嘘なんか言っていないのです」
 とりあえず、嘘つきではないと、強調しておきたい。
 そうでないと、挽回できなくなるわ。
 そう。私が公女だってバレていても、クロウが嫌がらせしていないってことにはならないわ。よし。

「く、クロウ様は、私に嫉妬しているのですわ? だから、あのような嫌がらせを…えぇ、ようやく、わかりましたわ。クロウ様は私が公女だから、嫌がらせをしてきたということを」
「クロウが、貴方に嫉妬?」
 よし、陛下は食いついてきた。
 クロウの性格が、アイキンⅡの悪役令嬢並みに悪かったなら。陛下もクロウと縁を切りたがっていて、彼をおとしめるきっかけを探っているかもしれないものね?

 よし。ここから畳み掛けていくわよっ。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。

みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。 愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。 「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。 あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。 最後のエンドロールまで見た後に 「裏乙女ゲームを開始しますか?」 という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。  あ。俺3日寝てなかったんだ… そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。 次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。 「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」 何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。 え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね? これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

処理中です...