【完結】え、別れましょう?

須木 水夏

文字の大きさ
19 / 23

友達になりますか?

しおりを挟む







(え、嘘?表情ばかりに気がいってて気がついてなかったわ)

 今後気をつけようとアリエットが焦りながら思っていると、笑いながらリエナが言葉を続けた。


「そう。それで気がつきましたの。シェリーと話している時も声が地を這ってるみたいに低いんだもの。ああ、って」


「地を這う…そんなに?」


 全然淑女らしくないじゃない、と少しショックを受けるアリエットの声に重なるように、衝撃を受けたような弱々しいアシェルの声が聞こえた。



「好きじゃない…」

「あらやだ。
 貴方だって好かれているなんて思ってなかったでしょう?だけど言葉にされると辛い感じかしら?」




 リエナにそう声をかけられると、その大きな身体がどんどん小さくなっていき。アシェルはその場で萎んでいった。
 実際にテーブルに顔がついてしまいそうなほど俯いてしまっているし、肩幅も元の半分くらいになっているように見える。アリエットはアシェルが少し可哀想になった。

 


「…リエナ様って、身内にも辛辣なのですね」

「そうかしら?でも確かに言い方は昔からキツいかもしれないわ。そう聞こえないように語尾を伸ばしてみたり工夫はしてみているのだけど」

「え?!あれってそういう意図があったのですか?」
(完全に使い方間違ってるわよ!)


「そうよぉ?マシになるでしょーぉ?」

「…いえ、人を馬鹿にしているように聞こえるから辞めた方がいいですよ」

「え?本当にそう思って仰ってる?」

「はい」



 明るい色合いのカフェテリアの中、カーテンを透けて窓から入り込む陽の光にふんわりと照らされながら、ええーっと首を傾げて困惑顔になったリエナは、その年頃の少女らしい可愛らしさが滲み出ていた。
 その時、アリエットはアシェルに対してだけでなく、彼女に対してもがあるなと感じた。

 自分に口撃してきたのは、アシェルを護る為だと考えると、きっと愛情深い人で。語尾を伸ばしていたのには柔らかく会話をしようとしていた意図があったのならば、本当の意味での嫌味の人でもなく。
 …でも、感覚が常人とちょっとずつズレてるのよね。

 そして。
 アリエットはゆっくり顔を動かすと、アシェルへと再び視線を戻した。
 先程よりは顔の位置は上がっているけれど、青い顔をしてシュンとしていて、悲しげに目を伏せている。
 持ち前の美貌のおかげで影のある美形が切なそうな顔をしているという風に傍からは見えていそうだけど。




「アシェル様」

「……!」



 アリエットの凛とした声の呼び掛けに、アシェルの肩が大きく跳ねた。正に恐る恐るという言葉の通り低速でその顔が上がり、水色のガラス玉のような目と少女の黒曜石の目がぶつかる。



「私、先程もお伝えしましたがアシェル様の事をほとんど何も知りません。普通に会話を交わしたこともなければ笑顔を送り合う仲でもありませんので」

「…はい」

「本来は、贈り物をされるような仲ではないのです」

「……はい」

「けれど、人見知りの貴方が決死の覚悟でなさった行動の一つなんですよね?私にはその気持ちの全てを汲む事は到底出来ないですけれど…。
 まあそこで、ひとつご提案なのですが。」

「提案?」

「お友達に、なりませんか?」

「…え?」



 少年の形の良い瞳が、見たこともないほどまん丸になった。けれどここは譲れない。



「贈り物も、…普通に考えると、友達へ贈るものとしては高価すぎるんですけれど、似合うものをアシェル様が私に贈ってくださったというのであれば、今時点ではお受け取りできます。
 その代わり、私からも贈り物をいたしますので、夜会の当日に身に着けていただけますか?」



 今の何も無い関係性では贈り物は受け取れないが、。その後の事はどうなるのかは分からないけれど、まだから、そう提案した。そう、これはお互いの為の言い訳なのだ。勇気を出(暴走)したアシェルと、彼に対して少しだけ興味を持ったアリエットの為の。
 じわじわと赤みを増していくアシェルの顔を見ると、悪い提案では無いのだろう。横にいるリエナも面白そうにニコニコと笑っているので、身内の承諾も出たようだ。



(まあ、なるようになるでしょう)



 心の中で呟いて、アリエットは明るい窓の外へと目を向けたのだった。












 
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

処理中です...