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友達になりますか?
しおりを挟む(え、嘘?表情ばかりに気がいってて気がついてなかったわ)
今後気をつけようとアリエットが焦りながら思っていると、笑いながらリエナが言葉を続けた。
「そう。それで気がつきましたの。シェリーと話している時も声が地を這ってるみたいに低いんだもの。ああ、この人シェリーの事好きじゃないんだわって」
「地を這う…そんなに?」
全然淑女らしくないじゃない、と少しショックを受けるアリエットの声に重なるように、衝撃を受けたような弱々しいアシェルの声が聞こえた。
「好きじゃない…」
「あらやだ。
貴方だって好かれているなんて思ってなかったでしょう?だけど言葉にされると辛い感じかしら?」
リエナにそう声をかけられると、その大きな身体がどんどん小さくなっていき。アシェルはその場で萎んでいった。
実際にテーブルに顔がついてしまいそうなほど俯いてしまっているし、肩幅も元の半分くらいになっているように見える。アリエットはアシェルが少し可哀想になった。
「…リエナ様って、身内にも辛辣なのですね」
「そうかしら?でも確かに言い方は昔からキツいかもしれないわ。そう聞こえないように語尾を伸ばしてみたり工夫はしてみているのだけど」
「え?!あれってそういう意図があったのですか?」
(完全に使い方間違ってるわよ!)
「そうよぉ?マシになるでしょーぉ?」
「…いえ、人を馬鹿にしているように聞こえるから辞めた方がいいですよ」
「え?本当にそう思って仰ってる?」
「はい」
明るい色合いのカフェテリアの中、カーテンを透けて窓から入り込む陽の光にふんわりと照らされながら、ええーっと首を傾げて困惑顔になったリエナは、その年頃の少女らしい可愛らしさが滲み出ていた。
その時、アリエットはアシェルに対してだけでなく、彼女に対しても誤解があるなと感じた。
自分に口撃してきたのは、弟を護る為だと考えると、きっと愛情深い人で。語尾を伸ばしていたのには柔らかく会話をしようとしていた意図があったのならば、本当の意味での嫌味の人でもなく。
…でも、感覚が常人とちょっとずつズレてるのよね。
そして。
アリエットはゆっくり顔を動かすと、アシェルへと再び視線を戻した。
先程よりは顔の位置は上がっているけれど、青い顔をしてシュンとしていて、悲しげに目を伏せている。
持ち前の美貌のおかげで影のある美形が切なそうな顔をしているという風に傍からは見えていそうだけど。
「アシェル様」
「……!」
アリエットの凛とした声の呼び掛けに、アシェルの肩が大きく跳ねた。正に恐る恐るという言葉の通り低速でその顔が上がり、水色のガラス玉のような目と少女の黒曜石の目がぶつかる。
「私、先程もお伝えしましたがアシェル様の事をほとんど何も知りません。普通に会話を交わしたこともなければ笑顔を送り合う仲でもありませんので」
「…はい」
「本来は、贈り物をされるような仲ではないのです」
「……はい」
「けれど、人見知りの貴方が決死の覚悟で変わろうとしてなさった行動の一つなんですよね?私にはその気持ちの全てを汲む事は到底出来ないですけれど…。
まあそこで、ひとつご提案なのですが。」
「提案?」
「お友達に、なりませんか?」
「…え?」
少年の形の良い瞳が、見たこともないほどまん丸になった。けれどここは譲れない。
「贈り物も、…普通に考えると、友達へ贈るものとしては高価すぎるんですけれど、似合うものを友人としてアシェル様が私に贈ってくださったというのであれば、今時点ではお受け取りできます。
その代わり、お友達として私からも贈り物をいたしますので、夜会の当日に身に着けていただけますか?」
今の何も無い関係性では贈り物は受け取れないが、友人としてなら。その後の事はどうなるのかは分からないけれど、まだ受け取る理由になるから、そう提案した。そう、これはお互いの為の言い訳なのだ。勇気を出(暴走)したアシェルと、彼に対して少しだけ興味を持ったアリエットの為の。
じわじわと赤みを増していくアシェルの顔を見ると、悪い提案では無いのだろう。横にいるリエナも面白そうにニコニコと笑っているので、身内の承諾も出たようだ。
(まあ、なるようになるでしょう)
心の中で呟いて、アリエットは明るい窓の外へと目を向けたのだった。
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