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54 大賢者の転生
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執務の合間をぬってやってくるルフィーノにジャンルイジ大公は質問した。
最近の彼は超音波魔法の実用化について検討中であった。治療院に勤務している魔力持ちがゼロから学ぶとどれだけの早さで超音波魔法を身に着けられるかを確認しているそうだ。ようやく魔法の基礎学を一通り覚え込ませたところだとか。
「ルフィ、私の妻には予知能力があると思うか?」
突然の質問にルフィーノは首を傾げた。
ジャンルイジ大公は先日のルドヴィカが話した内容を伝えた。
「さぁて、でも確かにおかしなところはある。国内では一般化されていない知識や概念を知っていて、海外の書物から得た知識だがとても大公妃殿下が得られる書物ではない」
「例えば」
「帝都で読んだら異端者として逮捕されるものだったり。それを皇后候補だった公爵家の令嬢が読むかな」
何故ルフィーノがその知識の出典元を見つけられているのか。
ジャンルイジ大公はあえて追及しなかった。
とりあえず教会にばれないようにしてくれればいい。
ルフィーノはルドヴィカの知識の源泉について不可解な点を見出していた。
「予知能力か、私はどちらかというと彼女は大賢者と同じ経験をした者と思った」
「大賢者の経験?」
ルフィーノはこくりと頷いた。
「大賢者の中には、奇妙な体験をした者がいる。別世界の別人となり知識を得てきたるべき時がきたら元の自分に戻る者がいる。都市水路をさらに発展させ衛生観念をもたらした者、微小な病原体の知識を持ち帰り抗生剤を開発した者、災害時の有識者・専門家たちがどのように動くべきか系統化させた者……この者たちがいなければ人口は激減し滅亡の危機に瀕していた。彼らの弟子が聞いた話では、別世界の別人として生まれ変わって必要な知識を身に着けた後に元の世界の過去の自分に戻っていたそうだ」
大賢者の一人が弟子に語った与太話のようなもので、神からの啓示だったのかもしれない。
「もしかするとルカはその別世界の人間になり知識を持ち帰った大賢者……」
「大賢者にしてはしょぼいですがね」
ルフィーノの言葉にジャンルイジ大公は苦笑いした。
「たいていの大賢者たちの魔力はすさまじく聖職者も彼らの意見を無視できなかった。のに、大公妃の魔力はライオンについたノミレベルです」
そりゃ、ルフィーノの魔力に比べればライオンについたノミレベルであろう。
それでも多少の魔法が扱えるのは十分だと思う。
「持ち帰った知識も何というか……ふわふわした記憶で会話しても理論的ではなくて賢者?というにはいささか。しかも、その内容がジジの減量計画というのはちょっとちっちゃいような。壮大さがないような」
「悪かったな。ちっちゃくて」
ジャンルイジ大公は思わずむっとしてしまった。
「だが、大賢者だと多少記録に残るだけで一般人にそうした話が絶対ないとは言い切れない」
「そう考えるとルカは未来から、別世界の別人となり、再びルカに戻った?」
「可能性はある。でも、彼女の口から聞かないと何とも言えないし」
ルドヴィカが自分から言える程、まだジャンルイジ大公を信じ切れていないのだ。
それは自分の夫としての不甲斐なさからだ。仕方ない。
だが、彼女の口から耳にしたあの言葉が未だに忘れられない。
「死なないでください」
彼女が何に思い詰めているのかほんの少しだけ触れられただけでも今は良いだろう。
「私としてはもう少し彼女の魔力の底上げをさせたいと思っている」
未だに時間を作ってはルドヴィカに魔法学の勉強をさせている。
「生まれ持った魔力は早々変わらないだろう」
「変わらないけど、ほんの少し、ノミもう1匹分は魔力を増やせるかもしれない」
「何をそんなに……ルカに何をさせようとしているのだ」
ルドヴィカには魔法使いの素質は低い。このまま魔法を使えなくても特に問題はないはずだ。
「いやぁ、積み重ねればそのうち瓶いっぱいにノミが集まるのではないかと思って。継続は力なりというか」
「何を言っているのか。というか嫌な想像してしまっただろう。やめろ」
ふわふわ理論なのはルドヴィカではなく、ルフィーノの方だとジャンルイジ大公は言いたくなった。
とにかくこの男はルドヴィカの魔力をほんの少しアップさせて何かを狙っているようだ。
「魔力は少しでもあった方がいいと思うぞ。いざとなれば魔法スクロールの扱いをこまやかに指定しやすくなるし」
「とにかく、彼女の負担が強くならないようにしてくれ」
折角女官を雇い負担を軽減していっているのに、その分ルフィーノがスパルタ式に入ったら意味がない。
ジャンルイジ大公の顔をみてルフィーノは黙った。
「な、なんだ」
「いや、うまくいっているようで。これでフランも安心するな」
フランチェスカの名を聞きジャンルイジ大公は思い出した。
ルフィーノとともに魔法学を勉強した幼馴染。
フランチェスカ・ヴィータ伯爵令嬢。修道院に入り、女神官として修業を積んでいる女性である。
今は神聖魔法を高める為に巡礼の旅を続けていた。
「今、彼女はどのあたりに」
「隣国のスグリ山にいるそうだ。来年の春には戻ってくるだろう」
彼女が戻るまで何も変わらないと思っていた。
だが、ルドヴィカがやってきて何もかもジャンルイジ大公の日常は変わってしまった。
ようやくついに部屋を出ることができた。西の庭園まででかけられた。
まだ金髪の女を見るのが恐ろしいが、それでも外に出ることはできた。
もっとできることが増える気がする。
ルドヴィカが傍にいれば、大丈夫のような気がした。
最近の彼は超音波魔法の実用化について検討中であった。治療院に勤務している魔力持ちがゼロから学ぶとどれだけの早さで超音波魔法を身に着けられるかを確認しているそうだ。ようやく魔法の基礎学を一通り覚え込ませたところだとか。
「ルフィ、私の妻には予知能力があると思うか?」
突然の質問にルフィーノは首を傾げた。
ジャンルイジ大公は先日のルドヴィカが話した内容を伝えた。
「さぁて、でも確かにおかしなところはある。国内では一般化されていない知識や概念を知っていて、海外の書物から得た知識だがとても大公妃殿下が得られる書物ではない」
「例えば」
「帝都で読んだら異端者として逮捕されるものだったり。それを皇后候補だった公爵家の令嬢が読むかな」
何故ルフィーノがその知識の出典元を見つけられているのか。
ジャンルイジ大公はあえて追及しなかった。
とりあえず教会にばれないようにしてくれればいい。
ルフィーノはルドヴィカの知識の源泉について不可解な点を見出していた。
「予知能力か、私はどちらかというと彼女は大賢者と同じ経験をした者と思った」
「大賢者の経験?」
ルフィーノはこくりと頷いた。
「大賢者の中には、奇妙な体験をした者がいる。別世界の別人となり知識を得てきたるべき時がきたら元の自分に戻る者がいる。都市水路をさらに発展させ衛生観念をもたらした者、微小な病原体の知識を持ち帰り抗生剤を開発した者、災害時の有識者・専門家たちがどのように動くべきか系統化させた者……この者たちがいなければ人口は激減し滅亡の危機に瀕していた。彼らの弟子が聞いた話では、別世界の別人として生まれ変わって必要な知識を身に着けた後に元の世界の過去の自分に戻っていたそうだ」
大賢者の一人が弟子に語った与太話のようなもので、神からの啓示だったのかもしれない。
「もしかするとルカはその別世界の人間になり知識を持ち帰った大賢者……」
「大賢者にしてはしょぼいですがね」
ルフィーノの言葉にジャンルイジ大公は苦笑いした。
「たいていの大賢者たちの魔力はすさまじく聖職者も彼らの意見を無視できなかった。のに、大公妃の魔力はライオンについたノミレベルです」
そりゃ、ルフィーノの魔力に比べればライオンについたノミレベルであろう。
それでも多少の魔法が扱えるのは十分だと思う。
「持ち帰った知識も何というか……ふわふわした記憶で会話しても理論的ではなくて賢者?というにはいささか。しかも、その内容がジジの減量計画というのはちょっとちっちゃいような。壮大さがないような」
「悪かったな。ちっちゃくて」
ジャンルイジ大公は思わずむっとしてしまった。
「だが、大賢者だと多少記録に残るだけで一般人にそうした話が絶対ないとは言い切れない」
「そう考えるとルカは未来から、別世界の別人となり、再びルカに戻った?」
「可能性はある。でも、彼女の口から聞かないと何とも言えないし」
ルドヴィカが自分から言える程、まだジャンルイジ大公を信じ切れていないのだ。
それは自分の夫としての不甲斐なさからだ。仕方ない。
だが、彼女の口から耳にしたあの言葉が未だに忘れられない。
「死なないでください」
彼女が何に思い詰めているのかほんの少しだけ触れられただけでも今は良いだろう。
「私としてはもう少し彼女の魔力の底上げをさせたいと思っている」
未だに時間を作ってはルドヴィカに魔法学の勉強をさせている。
「生まれ持った魔力は早々変わらないだろう」
「変わらないけど、ほんの少し、ノミもう1匹分は魔力を増やせるかもしれない」
「何をそんなに……ルカに何をさせようとしているのだ」
ルドヴィカには魔法使いの素質は低い。このまま魔法を使えなくても特に問題はないはずだ。
「いやぁ、積み重ねればそのうち瓶いっぱいにノミが集まるのではないかと思って。継続は力なりというか」
「何を言っているのか。というか嫌な想像してしまっただろう。やめろ」
ふわふわ理論なのはルドヴィカではなく、ルフィーノの方だとジャンルイジ大公は言いたくなった。
とにかくこの男はルドヴィカの魔力をほんの少しアップさせて何かを狙っているようだ。
「魔力は少しでもあった方がいいと思うぞ。いざとなれば魔法スクロールの扱いをこまやかに指定しやすくなるし」
「とにかく、彼女の負担が強くならないようにしてくれ」
折角女官を雇い負担を軽減していっているのに、その分ルフィーノがスパルタ式に入ったら意味がない。
ジャンルイジ大公の顔をみてルフィーノは黙った。
「な、なんだ」
「いや、うまくいっているようで。これでフランも安心するな」
フランチェスカの名を聞きジャンルイジ大公は思い出した。
ルフィーノとともに魔法学を勉強した幼馴染。
フランチェスカ・ヴィータ伯爵令嬢。修道院に入り、女神官として修業を積んでいる女性である。
今は神聖魔法を高める為に巡礼の旅を続けていた。
「今、彼女はどのあたりに」
「隣国のスグリ山にいるそうだ。来年の春には戻ってくるだろう」
彼女が戻るまで何も変わらないと思っていた。
だが、ルドヴィカがやってきて何もかもジャンルイジ大公の日常は変わってしまった。
ようやくついに部屋を出ることができた。西の庭園まででかけられた。
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