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86 フランチェスカの激励
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ジャンルイジ大公の要請に応じる形でフランチェスカが大公城へとやってきた。
来るであろう頃合いにルフィーノが待機し、防衛魔法をかけてくれたため被害は最小限に抑えられたと思う。
この時の為にあらかじめ大公城内に彼用の部屋を用意しておいて正解であった。
到着後はジャンルイジ大公の説教を受け、ルドヴィカの状態を確認した。
すでにルルの世話を受けた後、睡眠効果のあるお茶を飲ませて熟睡させていた。
ジャンルイジ大公と共に寝室で寝息をたてているルドヴィカを確認する。
「ふーん」
フランチェスカは首を傾げながら彼女の容態をみた。
「確かに呪いはかかっているわね。でも、それほど難しいものじゃないわ」
フランチェスカは祈りをこめてルドヴィカの治療にあたった。
彼女の母がルドヴィカに送り付けた呪いは綺麗に除去されていく。
しかし、問題は残されていた。
その後、数日間フランチェスカはルドヴィカの元へ通い治癒を兼ねてお茶を一緒にしていた。
ルドヴィカはただお茶を飲んでいるだけであるが、フランチェスカの誘導で自身のことを振り返っていた。
彼女自身も自分の体調を崩した契機についてはわかっていた。わかっていても彼女にはどうすることもできない。
フランチェスカの見解をまとめたところでジャンルイジ大公の応接室へと訪問した。
「呪いは除去できたけど、一番の問題……心の方は厄介ね」
摂食障害にいたるほど追い込まれた心労についてはフランチェスカでもすぐに対処は厳しかった。
「でも、彼女の呪いを解いた時にほんの少しふれられたわ。彼女がもっとも苦しんでいる部分」
それは何だと聞くとフランチェスカは困ったように笑った。
「まずは私にも責任あるわね。まさかここまで追い込まれるなんて」
ルドヴィカを追い詰めたもの、それは。
「幼い皇太子と皇女の最期……」
戦争の最中、フランチェスカは帝国で起きていた内容をいちはやくルドヴィカに届けた。
そのひとつが皇帝を失い暴徒化した帝都の民、逃げたアリアンヌ、捕らえられて絞首された皇太子、行方不明になりおそらく死んだと思われる皇女であった。
大公妃として、元帝都の貴族として、彼女にも知る権利はあると思っていたがもう少し様子を伺うべきであった。
「大公妃はとても優しい性質よ。シンパシーを感じやすい……両親と妹のことも色々あったとはいえ、顛末には複雑な感情を抱いていたわ」
しかし、彼らを救うことも、元の地位に戻すことはできなかった。
皇帝と共謀し、アンジェロ大公家を潰そうとした。
彼らが犯した内容はとても許されるものではない。
「そう。両親と妹のことは、ある程度覚悟はできていたはずだけど……幼い甥と姪についてはまだ覚悟が足りていなかったのよ。特に、姪は……自分の過去と重ねてしまったようね」
以前、ガヴァス卿からの報告では、カプリアナ皇女はルドヴィカと同じ鼠色の髪をしていた。
その影響か、彼女の宮殿での立場は不遇なものであった。
大公城へ戻るまでの間、行方不明となったカプリアナ皇女を捜索したが見つけることはできなかった。メイドの誰も彼女のことに意識を向けていなかったのだ。
ガヴァス卿が帝都に残って捜索を続けているが、未だに芳しい報告はない。
宮殿が荒らされてから1年後、もう生存は絶望的と考えられていた。
「一体どうすればいいのだ」
ジャンルイジ大公は頭を抱えた。
「こんなことで根をあげるんじゃないわ」
フランチェスカは立ち上がってジャンルイジ大公の頭を小突いた。
「ルカにはあなたがいるのよ。ルカは時間をかけてあなたを支えてきた。今度はあなたが彼女を支える番よ」
「だが、どうすれば」
「何でも良いのよ。あなたがただ彼女を引き留めればいい。昨夜のようにね」
フランチェスカはにっと笑った。
その笑顔にジャンルイジ大公は顔を赤くした。
確かあの場には存在していなかったが、ルドヴィカの治癒を施している間、彼女の心に触れた時に察したようだ。
「ルカがここからいなくならないようにあなたが引き留めて時間を稼ぐ。その間に私たちはカプリアナ皇女を連れて来るわ」
「連れて来るって……皇女は」
「生きているわ。良い状況ではないけど」
フランチェスカは数日の間に教会で聖女としての力を発揮させていた。
この世界の女神への祈りを捧げ、問い合わせをしてみた。
ごくまれに聖女や賢者の元に神は声を届けてくれるという。フランチェスカは神から情報を得るために祈り続けた。
昨晩ようやく彼女の元へ届けられたのはカプリアナ皇女は存命であるということである。どこにいるかまでは教えてくれない。ただ存命だというだけようやく得られた情報だった。
「と、いうわけで私は帝都にいるガヴァス卿と合流するわ」
カプリアナ皇女の情報を集める為に。
ちょうど帝都の教会から訪問依頼がきていたこともある。
「その、頼む」
ジャンルイジ大公も帝都で皇女の行方を捜していたが、見つけることはできなかった。だが、女神に愛されている彼女であればもしかすると別の結果を出せるかもしれない。
「今のルカをあのままにしておけないからね」
ルドヴィカを追い詰める情報を与えた責任を少し感じているようで、フランチェスカは旅の準備を整えてヒポポを伴い帝都へと飛びだった。
「フランは行ってしまったのね」
夕食時、ルドヴィカは残念そうにしていた。
それでも彼女の食欲はまだ完全には戻っていない。
スープを飲み続けることができるだけまだましだと思うべきなのかもしれない。
「ルカ、一緒に小旅行へ出かけないか?」
「?……お仕事は」
「2日だけだ。その間であれば秘書たちが良いようにやってくれる」
ルドヴィカは困ったように俯いた。
「いいじゃないの。ろくな夫婦生活も送れていないのだから2日くらいぱーっとでかけなさいよ」
傍で食事をしていたビアンカ公女が後押ししてきた。
「留守の間は私が大公城を守り抜くから」
「でもビアンカ公女も1週間後には学校に戻るのでしょう」
今年は卒業式も控えている。
「私は優秀だからそのあたりは心配ないわ」
自分で優秀と言ってしまうのはどうかと思うがとルドヴィカは笑った。それでもビアンカ公女は首席であり優秀なのは間違いない。
「そうね。少しなら」
ルドヴィカはジャンルイジ大公の誘いに頷いた。
ジャンルイジ大公にも息抜きは必要だろうと考えていた。
来るであろう頃合いにルフィーノが待機し、防衛魔法をかけてくれたため被害は最小限に抑えられたと思う。
この時の為にあらかじめ大公城内に彼用の部屋を用意しておいて正解であった。
到着後はジャンルイジ大公の説教を受け、ルドヴィカの状態を確認した。
すでにルルの世話を受けた後、睡眠効果のあるお茶を飲ませて熟睡させていた。
ジャンルイジ大公と共に寝室で寝息をたてているルドヴィカを確認する。
「ふーん」
フランチェスカは首を傾げながら彼女の容態をみた。
「確かに呪いはかかっているわね。でも、それほど難しいものじゃないわ」
フランチェスカは祈りをこめてルドヴィカの治療にあたった。
彼女の母がルドヴィカに送り付けた呪いは綺麗に除去されていく。
しかし、問題は残されていた。
その後、数日間フランチェスカはルドヴィカの元へ通い治癒を兼ねてお茶を一緒にしていた。
ルドヴィカはただお茶を飲んでいるだけであるが、フランチェスカの誘導で自身のことを振り返っていた。
彼女自身も自分の体調を崩した契機についてはわかっていた。わかっていても彼女にはどうすることもできない。
フランチェスカの見解をまとめたところでジャンルイジ大公の応接室へと訪問した。
「呪いは除去できたけど、一番の問題……心の方は厄介ね」
摂食障害にいたるほど追い込まれた心労についてはフランチェスカでもすぐに対処は厳しかった。
「でも、彼女の呪いを解いた時にほんの少しふれられたわ。彼女がもっとも苦しんでいる部分」
それは何だと聞くとフランチェスカは困ったように笑った。
「まずは私にも責任あるわね。まさかここまで追い込まれるなんて」
ルドヴィカを追い詰めたもの、それは。
「幼い皇太子と皇女の最期……」
戦争の最中、フランチェスカは帝国で起きていた内容をいちはやくルドヴィカに届けた。
そのひとつが皇帝を失い暴徒化した帝都の民、逃げたアリアンヌ、捕らえられて絞首された皇太子、行方不明になりおそらく死んだと思われる皇女であった。
大公妃として、元帝都の貴族として、彼女にも知る権利はあると思っていたがもう少し様子を伺うべきであった。
「大公妃はとても優しい性質よ。シンパシーを感じやすい……両親と妹のことも色々あったとはいえ、顛末には複雑な感情を抱いていたわ」
しかし、彼らを救うことも、元の地位に戻すことはできなかった。
皇帝と共謀し、アンジェロ大公家を潰そうとした。
彼らが犯した内容はとても許されるものではない。
「そう。両親と妹のことは、ある程度覚悟はできていたはずだけど……幼い甥と姪についてはまだ覚悟が足りていなかったのよ。特に、姪は……自分の過去と重ねてしまったようね」
以前、ガヴァス卿からの報告では、カプリアナ皇女はルドヴィカと同じ鼠色の髪をしていた。
その影響か、彼女の宮殿での立場は不遇なものであった。
大公城へ戻るまでの間、行方不明となったカプリアナ皇女を捜索したが見つけることはできなかった。メイドの誰も彼女のことに意識を向けていなかったのだ。
ガヴァス卿が帝都に残って捜索を続けているが、未だに芳しい報告はない。
宮殿が荒らされてから1年後、もう生存は絶望的と考えられていた。
「一体どうすればいいのだ」
ジャンルイジ大公は頭を抱えた。
「こんなことで根をあげるんじゃないわ」
フランチェスカは立ち上がってジャンルイジ大公の頭を小突いた。
「ルカにはあなたがいるのよ。ルカは時間をかけてあなたを支えてきた。今度はあなたが彼女を支える番よ」
「だが、どうすれば」
「何でも良いのよ。あなたがただ彼女を引き留めればいい。昨夜のようにね」
フランチェスカはにっと笑った。
その笑顔にジャンルイジ大公は顔を赤くした。
確かあの場には存在していなかったが、ルドヴィカの治癒を施している間、彼女の心に触れた時に察したようだ。
「ルカがここからいなくならないようにあなたが引き留めて時間を稼ぐ。その間に私たちはカプリアナ皇女を連れて来るわ」
「連れて来るって……皇女は」
「生きているわ。良い状況ではないけど」
フランチェスカは数日の間に教会で聖女としての力を発揮させていた。
この世界の女神への祈りを捧げ、問い合わせをしてみた。
ごくまれに聖女や賢者の元に神は声を届けてくれるという。フランチェスカは神から情報を得るために祈り続けた。
昨晩ようやく彼女の元へ届けられたのはカプリアナ皇女は存命であるということである。どこにいるかまでは教えてくれない。ただ存命だというだけようやく得られた情報だった。
「と、いうわけで私は帝都にいるガヴァス卿と合流するわ」
カプリアナ皇女の情報を集める為に。
ちょうど帝都の教会から訪問依頼がきていたこともある。
「その、頼む」
ジャンルイジ大公も帝都で皇女の行方を捜していたが、見つけることはできなかった。だが、女神に愛されている彼女であればもしかすると別の結果を出せるかもしれない。
「今のルカをあのままにしておけないからね」
ルドヴィカを追い詰める情報を与えた責任を少し感じているようで、フランチェスカは旅の準備を整えてヒポポを伴い帝都へと飛びだった。
「フランは行ってしまったのね」
夕食時、ルドヴィカは残念そうにしていた。
それでも彼女の食欲はまだ完全には戻っていない。
スープを飲み続けることができるだけまだましだと思うべきなのかもしれない。
「ルカ、一緒に小旅行へ出かけないか?」
「?……お仕事は」
「2日だけだ。その間であれば秘書たちが良いようにやってくれる」
ルドヴィカは困ったように俯いた。
「いいじゃないの。ろくな夫婦生活も送れていないのだから2日くらいぱーっとでかけなさいよ」
傍で食事をしていたビアンカ公女が後押ししてきた。
「留守の間は私が大公城を守り抜くから」
「でもビアンカ公女も1週間後には学校に戻るのでしょう」
今年は卒業式も控えている。
「私は優秀だからそのあたりは心配ないわ」
自分で優秀と言ってしまうのはどうかと思うがとルドヴィカは笑った。それでもビアンカ公女は首席であり優秀なのは間違いない。
「そうね。少しなら」
ルドヴィカはジャンルイジ大公の誘いに頷いた。
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