【完結】うちの大公妃は肥満専攻です!

ariya

文字の大きさ
89 / 94

86 フランチェスカの激励

しおりを挟む
 ジャンルイジ大公の要請に応じる形でフランチェスカが大公城へとやってきた。
 来るであろう頃合いにルフィーノが待機し、防衛魔法をかけてくれたため被害は最小限に抑えられたと思う。
 この時の為にあらかじめ大公城内に彼用の部屋を用意しておいて正解であった。
 到着後はジャンルイジ大公の説教を受け、ルドヴィカの状態を確認した。
 すでにルルの世話を受けた後、睡眠効果のあるお茶を飲ませて熟睡させていた。
 ジャンルイジ大公と共に寝室で寝息をたてているルドヴィカを確認する。

「ふーん」

 フランチェスカは首を傾げながら彼女の容態をみた。

「確かに呪いはかかっているわね。でも、それほど難しいものじゃないわ」

 フランチェスカは祈りをこめてルドヴィカの治療にあたった。
 彼女の母がルドヴィカに送り付けた呪いは綺麗に除去されていく。
 しかし、問題は残されていた。
 その後、数日間フランチェスカはルドヴィカの元へ通い治癒を兼ねてお茶を一緒にしていた。
 ルドヴィカはただお茶を飲んでいるだけであるが、フランチェスカの誘導で自身のことを振り返っていた。
 彼女自身も自分の体調を崩した契機についてはわかっていた。わかっていても彼女にはどうすることもできない。
 フランチェスカの見解をまとめたところでジャンルイジ大公の応接室へと訪問した。

「呪いは除去できたけど、一番の問題……心の方は厄介ね」

 摂食障害にいたるほど追い込まれた心労についてはフランチェスカでもすぐに対処は厳しかった。

「でも、彼女の呪いを解いた時にほんの少しふれられたわ。彼女がもっとも苦しんでいる部分」

 それは何だと聞くとフランチェスカは困ったように笑った。

「まずは私にも責任あるわね。まさかここまで追い込まれるなんて」

 ルドヴィカを追い詰めたもの、それは。

「幼い皇太子と皇女の最期……」

 戦争の最中、フランチェスカは帝国で起きていた内容をいちはやくルドヴィカに届けた。
 そのひとつが皇帝を失い暴徒化した帝都の民、逃げたアリアンヌ、捕らえられて絞首された皇太子、行方不明になりおそらく死んだと思われる皇女であった。
 大公妃として、元帝都の貴族として、彼女にも知る権利はあると思っていたがもう少し様子を伺うべきであった。

「大公妃はとても優しい性質よ。シンパシーを感じやすい……両親と妹のことも色々あったとはいえ、顛末には複雑な感情を抱いていたわ」

 しかし、彼らを救うことも、元の地位に戻すことはできなかった。
 皇帝と共謀し、アンジェロ大公家を潰そうとした。
 彼らが犯した内容はとても許されるものではない。

「そう。両親と妹のことは、ある程度覚悟はできていたはずだけど……幼い甥と姪についてはまだ覚悟が足りていなかったのよ。特に、姪は……自分の過去と重ねてしまったようね」

 以前、ガヴァス卿からの報告では、カプリアナ皇女はルドヴィカと同じ鼠色の髪をしていた。
 その影響か、彼女の宮殿での立場は不遇なものであった。
 大公城へ戻るまでの間、行方不明となったカプリアナ皇女を捜索したが見つけることはできなかった。メイドの誰も彼女のことに意識を向けていなかったのだ。
 ガヴァス卿が帝都に残って捜索を続けているが、未だに芳しい報告はない。
 宮殿が荒らされてから1年後、もう生存は絶望的と考えられていた。

「一体どうすればいいのだ」

 ジャンルイジ大公は頭を抱えた。

「こんなことで根をあげるんじゃないわ」

 フランチェスカは立ち上がってジャンルイジ大公の頭を小突いた。

「ルカにはあなたがいるのよ。ルカは時間をかけてあなたを支えてきた。今度はあなたが彼女を支える番よ」
「だが、どうすれば」
「何でも良いのよ。あなたがただ彼女を引き留めればいい。昨夜のようにね」

 フランチェスカはにっと笑った。
 その笑顔にジャンルイジ大公は顔を赤くした。
 確かあの場には存在していなかったが、ルドヴィカの治癒を施している間、彼女の心に触れた時に察したようだ。

「ルカがここからいなくならないようにあなたが引き留めて時間を稼ぐ。その間に私たちはカプリアナ皇女を連れて来るわ」
「連れて来るって……皇女は」
「生きているわ。良い状況ではないけど」

 フランチェスカは数日の間に教会で聖女としての力を発揮させていた。
 この世界の女神への祈りを捧げ、問い合わせをしてみた。
 ごくまれに聖女や賢者の元に神は声を届けてくれるという。フランチェスカは神から情報を得るために祈り続けた。

 昨晩ようやく彼女の元へ届けられたのはカプリアナ皇女は存命であるということである。どこにいるかまでは教えてくれない。ただ存命だというだけようやく得られた情報だった。

「と、いうわけで私は帝都にいるガヴァス卿と合流するわ」

 カプリアナ皇女の情報を集める為に。
 ちょうど帝都の教会から訪問依頼がきていたこともある。

「その、頼む」

 ジャンルイジ大公も帝都で皇女の行方を捜していたが、見つけることはできなかった。だが、女神に愛されている彼女であればもしかすると別の結果を出せるかもしれない。

「今のルカをあのままにしておけないからね」

 ルドヴィカを追い詰める情報を与えた責任を少し感じているようで、フランチェスカは旅の準備を整えてヒポポを伴い帝都へと飛びだった。

「フランは行ってしまったのね」

 夕食時、ルドヴィカは残念そうにしていた。
 それでも彼女の食欲はまだ完全には戻っていない。
 スープを飲み続けることができるだけまだましだと思うべきなのかもしれない。

「ルカ、一緒に小旅行へ出かけないか?」
「?……お仕事は」
「2日だけだ。その間であれば秘書たちが良いようにやってくれる」

 ルドヴィカは困ったように俯いた。

「いいじゃないの。ろくな夫婦生活も送れていないのだから2日くらいぱーっとでかけなさいよ」

 傍で食事をしていたビアンカ公女が後押ししてきた。

「留守の間は私が大公城を守り抜くから」
「でもビアンカ公女も1週間後には学校に戻るのでしょう」

 今年は卒業式も控えている。

「私は優秀だからそのあたりは心配ないわ」

 自分で優秀と言ってしまうのはどうかと思うがとルドヴィカは笑った。それでもビアンカ公女は首席であり優秀なのは間違いない。

「そうね。少しなら」

 ルドヴィカはジャンルイジ大公の誘いに頷いた。
 ジャンルイジ大公にも息抜きは必要だろうと考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

処理中です...