幼なじみの恋を応援していたらいつの間にかに二股をかけていたんですけど!?

彩世ひより

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柊「え、あ、た、鍛錬ですか……?」

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「少しお待ちを……なぜ当家のお買い物を主導しておいでで!?」

 最初こそあれを買うこれを買うは私が主導していたはずですが、敷き詰められた商品を眺めるにターンは明らかに愛さんの方へと移っています――よしんば彼女が買い物をするにしても、できれば小分けにしていただけるとありがたいです財産的に。

 いえ、私も自分の買い物の分で暗算ができたならば苦労はないのですが、買い物をした分を即座に合算せよと言われたら頭抱えてしまいますよ? 載せた商品で瞬時に会計できるレジレベルの頭脳ならともかく。

 愛さんも愛さんで何を言っているのかさっぱり分からないといった風に首をかしげて、

「私は柊さんのすべてを存じ上げているようなモノなので、購入すべき商品も理解しておりますが?」

 大真面目に言われてしまったので、まあそういうこともあるのかなと思ってしまったのですが、どのような関係性であろうとも頭の中身まで共有はできません。未来の世界のロボットでも無い限りは……あ、でも、未来の世界でも無理かもしれません、私は未来人ではないので確定は……。

 どんな夫婦であろうとも血を分けた家族であろうとも、何をするか何を買うかまでは共有化することなどは不可能でしょう。
 私がたとえ妹ちゃんのすべてが知りたいですと言ったところでドン引きされて終了です――。

 が、最初こそ愛さんが勝手に商品をカートにぶち込んでいるとの思い込みがあったので「もうもう」と牛さんにでもなったかのようにプリプリしてしまいましたが、よくよく確認をしてみれば、正確無比と表現されても仕方が無いほどに我が家で購入せしモノが含まれており、中には「忘れてました」と頭を抱えてしまうモノまで。

 記憶の彼方にあったモノまで購入すべきとカートに置かれているから、読心とかの類いでは無いでしょう……元々そんな超能力じみたモノを持った人間がいるとは思いませんが。

「……私のことを少々理解しすぎでは?」

 自分の行動がすべてにおいて単純であり、考えるまでも無く理解できるのならば……逆に私の都合のいいように人生が回っていたかもしれません。
 私も誰かのやってほしいことを読み取れるほど極まった人間ではありませんし……まあ、やってほしいことを読み取ってやっといてねを是とも思わないのですが。

 ともあれ、私が単純明快でわかりやすい人間ならば今まで付き合いのあった誰かしらから指摘はあったことでしょう。
 人間なので喜怒哀楽に興じることはありますし、哀や怒を読み取られて慰められた覚えもあまりないように思いますし、逆に態度を勘違いされたケースの方が多いようにも。
 
「一般的な家庭で利用されるモノを踏まえて、柊さんのことを考えればおのずと答えは出ますよ。これはその結果です」

 あまり喜怒哀楽がはっきりとしない愛さんであるので、今の発言も「今日は普段よりも花粉が多く飛ぶでしょう」くらいの気安さがありました。

 でも、花粉は人によってはとんでもない重大事、一般的なデータを頭に入れる必要性は棚に上げておきますが、私のデータを踏まえると実家で買うものを考慮できるというのは……できるんでしょうか?

 例えば幼なじみの初ちゃんのデータ……データというとなんか記録じみているので知っていることとしますが、認知していることを踏まえて一般的な……一般的って何でしょうか? 

 まあ、そのより多くの家庭で購入されているものを頭に入れて、必要なものを揃える……途方もない話にも思えます、コンパスを持って超巨大ダンジョンを攻略せよと言われている感じです。

 愛さんの携えている雰囲気は「一般的な人間がすべてできる当たり前の行為」と言わんばかりです――自分が平均よりも下であっても、なら努力しましょうねと言えますが……。

 努力や鍛錬をなしにしたいから憧れという言葉で片付けて現状に満足しているんだよ、と言われれば正論のミサイルで胸を貫かれてしまいますが――ここまで格が違うと何が何やらと。

「それとも、オペレーションお手伝いは実行不完全でありましたでしょうか?」

 ここで初めて表情を不安げに変えて、心なしかちっちゃくなったようにも思えます……普段から背伸びをしているとかでは無く、恐怖とかおびえとかの負の感情がそうさせている。
 私は他の人に対して、尊敬の念なら(滅多にない)ともかく支配するような恐縮を肯定的には見られません――あ、下っ端根性みたいですねこれ。

「いえ、とても助かっています……なんと言いますか、お手伝いの適性が常人離れしていたので戸惑ったと申しますか」

 配達業務にサイヤ人を使ったみたいな場違いさでしたが、戦闘が本業の民族とは違って、こちらは100点満点の正解をたたき出しているのですから、本来は褒められてしかるべきなのです。

 軽くお菓子でも作っておいてと頼んだらウエディングケーキが出てきたみたいな衝撃は、少々どころでは無く私の胸のうちにすくってはおりますが、悲しい顔をした相手を追い込むのは傷口に塩を塗ると言います。

「所望、ただいまの”好意”のお礼としまして、一週間分のメニューの材料と必要なものをすべて揃えます」

 照れたような表情で私の「行為」に対しての感謝の念を述べる愛さん――
 もちろん相手が喜ぶのであれば私のできる範囲で実行に移したくはあるのですが、お車をお使いになっている方々と違って私たち自身の脚や両腕を使って抱えながら帰宅するのはよろしくありません。

 彼女の思わず「ハイ」と肯定してしまいそうな色香にはドキドキしてしまいますが、ここでイエスの回答をしてしまうと沼にはまるように荷物が増えてしまいます。

「一週間分のメニューはともかくとしまして、私も愛さんみたいな色気は欲しいかもですね、一緒にいるだけでドキドキしてしまいます」

 何をしてくるか分からないびっくり箱的な要素が過分に含まれておりますが、褒め言葉にもならない指摘をして空気をキンキンに冷やしては困ります。

「なら、鍛錬してみますか?」
「は?」

 もちろん色香の付け方なんてことを「やってみましょう!」と言わないでいるのがむしろ一般的だとは思うのですが、わくわくした顔を向けられると首を横に振るのはいざ難しく……。
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