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悪役令嬢、主役になる
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「今日は見事な快晴ですわ。きっと神々も
セセリア様のご結婚を祝福しているのでし
ょう。」
アイリスがカーテンを開けると、窓から太
陽の光がさしこんだ。
遠くで花火の上がる音が聞こえる。
ああ…とうとうこの日が来てしまった…。
今日、私は第二王子の妃になる。
「そんな不安そうな顔をなさってはダメで
すわ。今日の主役はセセリア様なんですか
ら。」
主役…?
悪役令嬢に転生したはずの私が?
大きな姿見には、純白のウエディングドレ
スに身を包んだ自分が映っている。
セセリアに転生したあの日から、国外追放
されないために努力した日々が走馬灯のよ
うに頭に浮かんだ。
最初は、カイン殿下に捨てられないために
お菓子作りを頑張ったんだっけ。
でも、殿下が喜んで食べてくれるのが嬉し
くて、その笑顔が見たくて作るようになっ
たんだよね。
私の作ったお菓子を食べ過ぎて太っちゃっ
た殿下も可愛かったな。
ぽっちゃりした殿下の姿が目に浮かび、思
わず笑ってしまった。
「ふふ…。」
「どうかされました?」
「ちょっとね、昔のことを思い出していた
の。色んなことがあったな、って。」
「緊張がほぐれたようですね。セセリア様
に笑顔が戻ってよかった。じゃぁそろそろ
参りましょうか。カイン殿下が首を長くし
てお待ちですよ。」
私はうなずくと、アイリスに導かれ、殿下
の部屋へと向かった。
「ああ、カイン、セセリアが来たよ。」
扉の前にはアンセル殿下が立っていた。
「やぁ、セセリア。とても綺麗だよ。綺麗
すぎてカインが腰を抜かしてしまうかもし
れないな。」
「兄上!僕より先にセセリアの姿を見るな
んて酷いじゃな…い…か…あ!?」
アンセル殿下の言葉に反応して廊下へ飛び
出して来たカイン殿下が、私を見つけて言
葉を失った。
「…………。」
無言で私を見つめるカイン殿下に、業を煮
やしたアイリスが声をかけた。
「カイン殿下、セセリア様が美しすぎて見
とれるのもわかりますが、何か言ってくだ
さらないとセセリア様が不安になってしま
うじゃないですか!」
アイリスに言われて我にかえったカイン殿
下が、やっと口を開いた。
「…綺麗だ…。いや、綺麗なんて言葉じゃ
足りない。僕はもう今の気持ちを言葉では
表現できないよ。」
「あ…ありがとう…ございます…。」
照れくさくて下を向いた私の手を、殿下は
そっと握った。
「アイリス、僕達お邪魔みたいだね。」
「そうですわね。殿下、先に会場へ行きま
しょう。」
そう言うと、カイン殿下と私を残し、2人
は行ってしまった。
2人きりになると、殿下は真剣な眼差しで
私を見つめた。
「…セセリア。」
「はい…?」
「君に伝えたいことがあるんだ。」
「…はい。」
「君は子供のころから婚約者だったから、
今まで言葉にはしなかったけど、聞いて欲
しい。」
「…はい。」
「君が好きだ。愛してる。必ず幸せにする
から、僕と結婚してください。」
「………はい。私も殿下が好きです。一生
傍にいさせてください。」
「セセリア、ありがとう。」
私の返事を聞いた瞬間、殿下は私を力いっ
ぱい抱きしめた。
殿下の温かい腕に抱かれ、私は全身で幸せ
を感じていたが、いつまでもこうしてはい
られない。
「…あの、そろそろ会場へ行かないと…。」
「ああ、そうだね。」
名残惜しそうに腕をほどくと、手を差し出
した。
「さぁ、行こう。今日は僕たちが主役だ。」
「はい!」
悪役令嬢に転生した私は、今日、主役にな
ります。
~END~
セセリア様のご結婚を祝福しているのでし
ょう。」
アイリスがカーテンを開けると、窓から太
陽の光がさしこんだ。
遠くで花火の上がる音が聞こえる。
ああ…とうとうこの日が来てしまった…。
今日、私は第二王子の妃になる。
「そんな不安そうな顔をなさってはダメで
すわ。今日の主役はセセリア様なんですか
ら。」
主役…?
悪役令嬢に転生したはずの私が?
大きな姿見には、純白のウエディングドレ
スに身を包んだ自分が映っている。
セセリアに転生したあの日から、国外追放
されないために努力した日々が走馬灯のよ
うに頭に浮かんだ。
最初は、カイン殿下に捨てられないために
お菓子作りを頑張ったんだっけ。
でも、殿下が喜んで食べてくれるのが嬉し
くて、その笑顔が見たくて作るようになっ
たんだよね。
私の作ったお菓子を食べ過ぎて太っちゃっ
た殿下も可愛かったな。
ぽっちゃりした殿下の姿が目に浮かび、思
わず笑ってしまった。
「ふふ…。」
「どうかされました?」
「ちょっとね、昔のことを思い出していた
の。色んなことがあったな、って。」
「緊張がほぐれたようですね。セセリア様
に笑顔が戻ってよかった。じゃぁそろそろ
参りましょうか。カイン殿下が首を長くし
てお待ちですよ。」
私はうなずくと、アイリスに導かれ、殿下
の部屋へと向かった。
「ああ、カイン、セセリアが来たよ。」
扉の前にはアンセル殿下が立っていた。
「やぁ、セセリア。とても綺麗だよ。綺麗
すぎてカインが腰を抜かしてしまうかもし
れないな。」
「兄上!僕より先にセセリアの姿を見るな
んて酷いじゃな…い…か…あ!?」
アンセル殿下の言葉に反応して廊下へ飛び
出して来たカイン殿下が、私を見つけて言
葉を失った。
「…………。」
無言で私を見つめるカイン殿下に、業を煮
やしたアイリスが声をかけた。
「カイン殿下、セセリア様が美しすぎて見
とれるのもわかりますが、何か言ってくだ
さらないとセセリア様が不安になってしま
うじゃないですか!」
アイリスに言われて我にかえったカイン殿
下が、やっと口を開いた。
「…綺麗だ…。いや、綺麗なんて言葉じゃ
足りない。僕はもう今の気持ちを言葉では
表現できないよ。」
「あ…ありがとう…ございます…。」
照れくさくて下を向いた私の手を、殿下は
そっと握った。
「アイリス、僕達お邪魔みたいだね。」
「そうですわね。殿下、先に会場へ行きま
しょう。」
そう言うと、カイン殿下と私を残し、2人
は行ってしまった。
2人きりになると、殿下は真剣な眼差しで
私を見つめた。
「…セセリア。」
「はい…?」
「君に伝えたいことがあるんだ。」
「…はい。」
「君は子供のころから婚約者だったから、
今まで言葉にはしなかったけど、聞いて欲
しい。」
「…はい。」
「君が好きだ。愛してる。必ず幸せにする
から、僕と結婚してください。」
「………はい。私も殿下が好きです。一生
傍にいさせてください。」
「セセリア、ありがとう。」
私の返事を聞いた瞬間、殿下は私を力いっ
ぱい抱きしめた。
殿下の温かい腕に抱かれ、私は全身で幸せ
を感じていたが、いつまでもこうしてはい
られない。
「…あの、そろそろ会場へ行かないと…。」
「ああ、そうだね。」
名残惜しそうに腕をほどくと、手を差し出
した。
「さぁ、行こう。今日は僕たちが主役だ。」
「はい!」
悪役令嬢に転生した私は、今日、主役にな
ります。
~END~
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