国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!

和栗かのこ

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悪役令嬢、決断する

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カイン殿下が帰るまでに答えを出せと言わ
れてから既に2日が経っていた。

「一体いつまで待たせるの?いい加減決め
なさいよ!」

アリーナ(の中の人)は、もう待てないと
いった表情で私の前に立っている。

私が元の世界に帰るのが、みんなにとって
一番いい方法なのかな。

カイン殿下が悲しい思いをせずに済むなら
私はそれでいい。

「…わかったわ。協力します。」

「そう!よかった!あなたならきっとそう
言ってくれると思ってたわ!」

彼女の喜ぶ顔を見ていたら、自分の選択は
間違いじゃなかったと思える。

「じゃぁ早速準備しなくちゃ!お菓子は何
を作ろうかしら。ああ、あなたの厨房を貸
してね!」

「ええ…もちろん。」

「カインはなにが好きかしら?焼き菓子と
ケーキ、どっちがいいと思う?」

殿下は私の作ったお菓子ならなんでも美味
しいと言って食べてくれた。

でも、強いて言えば…。

「シフォンケーキ…。」

「シフォンケーキ?随分シンプルなケーキ
ね。苺のタルトとかモンブランとか、もっ
と豪華なケーキの方がいいのに。」

シフォンケーキは私が初めて殿下のために
作ったケーキだ。

あの時の嬉しそうな殿下の顔は、今でも覚
えている。

「まぁいいわ。とりあえず作り方を教えて
ちょうだい。」

「じゃぁ厨房へ行きましょうか。」

鼻歌まじで廊下を歩くアリーナの後ろを、
私はトボトボと歩いていた。

「セセリア!」

後ろから声をかけられて振り返ると、そこ
にはカイン殿下が立っていた。

「殿下!?」

「ただいま、セセリア。君の顔が早く見た
くて、夜通し馬を飛ばして帰ってきたんだ
よ。」

数日会っていなかっただけなのに、感情が
溢れ出し、目から涙がこぼれ落ちた。

「殿下、お帰りなさい。」

「どうしたの?なにかあった?」

殿下は心配そうに私の顔を覗き込むと、優
しく頬に触れた。

「いえ…なんでもないです。殿下のお帰り
が嬉しくて…。」

そこまで言って、隣にアリーナがいること
を思い出した。

ちらりとアリーナの顔を見ると、先ほどま
での浮かれ顔がウソのように、厳しい目で
こちらを見ていた。

「あ、あの、殿下。シュタインからアリー
ナ様がいらっしゃってるんですよ。」

殿下の目線が自分の方へ向くと、満面の笑
顔で彼女は言った。

「カイン殿下、こんにちは。私、セセリア
さんとお友達になりたくて、遊びに来ちゃ
いました。」

「ああ、アリーナ。シュタインでは世話に
なったね。ゆっくりしていくといい。」

アリーナには微塵の興味もないというよう
に、そっけなく言うと、殿下は私の方へ向
き直った。

「ねぇ、セセリアの作ったお菓子が食べた
いな。今からなにか作ってくれない?」

「あ…、はい…。わかりました。」

甘えた表情で、殿下にお菓子作りをねだら
れるのが私は好きだった。

でも今回は違う。

作るのは私ではなくアリーナだ。

殿下のためにお菓子を作れないことがこん
なに辛いなんて…。

「なにを作ってくれるのか、楽しみだな。
僕に手伝えることある?」

「あら、お手伝いなら私がしますわ。殿下
はお帰りになったばかりでお疲れでしょ。
どうぞお部屋で休んでらして。」

そう言うとアリーナは、話を合わせろと言
わんばかりに私に目配せした。

「そ、そうですね。出来上がったらお部屋
にお持ちしますので、それまでお休みにな
ってください。」

アリーナだけでなく、私にも休むことを勧
められた殿下は、納得したように頷くと、
自分の部屋へと歩いて行った。
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