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◆ 仏か魔王か * 弥衣
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「いかがでしょう」
なぜこんな大金を。あの指輪ってそんな価値があるの?
金額に一瞬ぐらりと心と体が揺らいだけれど、それはそれ。この指輪だけは絶対に渡せない。
「ダメです」
「足りない?」
「そういうことじゃありません。お金には代えられません」
思わず私は指輪を守ろうとして、胸元を掴んだ。
あ。しまった……。
指輪の場所を教えてしまったと思うがもう遅い、彼はジッとその様子を見ている。
「と、とにかく。仮に一億とか言われても渡せません。これは大切な大切な母の遺品なんですから」
頑として動かないとみたのか、彼は大きく息を吐いて下唇を噛んだ。
そしてしばしの沈黙。
俯いたまま、彼は考え込んでいる。
一体なんなの? この指輪になにがあるっていうのよ。月城の指輪ってどういうこと?
母は今わの際に、震える手で胸元から皮ひもに繋いだこの指輪を差し出した。
『弥衣、お、お願い、これを、た……』
理由はわからないが、母はずっと隠していたらしい。その時まで私はこの指輪を見たことがなかった。
指輪には、宇宙を思わせる深い色をした不思議な石がついていて、石は見るたびに色が変わる。ダイヤモンドやルビーなら私でもわかるけれど、初めて目にした石だったし、アレキサンドライトという名前も今知った。
母の遺品の中には指輪の鑑定書はなかった。宝石としての価値はわからないかれど、迷わず彼が二千万と書くところをみると、それだけ高価なものなんだろう。
もしくは月城家にとってそれだけ意義深い指輪なのか?
でも。
そうだとしても、私だって同じ。唯一無二のものなんだから。
この指輪は母の最期の願い。途中から聞き取れなかったけれど、『頼むわね』と言ったに違い。
だから――。
はいそうですか、と渡すわけにはいかないんですよ。
どんなに粘られても気持ちは変わらない。
なぜこんな大金を。あの指輪ってそんな価値があるの?
金額に一瞬ぐらりと心と体が揺らいだけれど、それはそれ。この指輪だけは絶対に渡せない。
「ダメです」
「足りない?」
「そういうことじゃありません。お金には代えられません」
思わず私は指輪を守ろうとして、胸元を掴んだ。
あ。しまった……。
指輪の場所を教えてしまったと思うがもう遅い、彼はジッとその様子を見ている。
「と、とにかく。仮に一億とか言われても渡せません。これは大切な大切な母の遺品なんですから」
頑として動かないとみたのか、彼は大きく息を吐いて下唇を噛んだ。
そしてしばしの沈黙。
俯いたまま、彼は考え込んでいる。
一体なんなの? この指輪になにがあるっていうのよ。月城の指輪ってどういうこと?
母は今わの際に、震える手で胸元から皮ひもに繋いだこの指輪を差し出した。
『弥衣、お、お願い、これを、た……』
理由はわからないが、母はずっと隠していたらしい。その時まで私はこの指輪を見たことがなかった。
指輪には、宇宙を思わせる深い色をした不思議な石がついていて、石は見るたびに色が変わる。ダイヤモンドやルビーなら私でもわかるけれど、初めて目にした石だったし、アレキサンドライトという名前も今知った。
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この指輪は母の最期の願い。途中から聞き取れなかったけれど、『頼むわね』と言ったに違い。
だから――。
はいそうですか、と渡すわけにはいかないんですよ。
どんなに粘られても気持ちは変わらない。
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