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◆.アレキサンドライトの指輪
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しおりを挟むやれやれとため息をつくと、スマートフォンが揺れた。
弥衣からのメッセージだ。
【弟が会社に行ったそうで、大変申し訳ございませんでした。
二度とこのようなことがないよう、よく言っておきます。】
なるほど弟から連絡がいったのか。
【お金のこと黙っていてくださって、ありがとうございました。
尊さま、心より感謝いたします。】
かしこまった文章に思わず笑いが込み上げる。
嘘つけ。書くだけ書いて、ムッとしているんだろ。憮然として眉をひそめる弥衣の顔が浮かぶようだ。
まったく、なにが尊さまだ。
さて――。
次の関門は弥衣を祖母に会わせて、指輪を見せること。
最近祖母はめっきり弱くなり、入院した。
主治医の話によればどこも悪いところはないという。
年齢的なものはあるとしても、本人が何かを思い悩んでいて生きる気力を失っているようにみえるというのだ。
ある時祖母は、よく眠れないのだと言った。
『月城の指輪が夢に出てくるんですよ。そのせいか、よく眠れなくてね』
『指輪?』
その時俺は初めて指輪の話を聞いた。
月城家には代々伝わる指輪があるという。
『お前を産んだあの人が持っているんだろう。返してもらわなくちゃいけなかったのに、それきりになってしまって』
それがどうしても心残りなのだと祖母は呟いて、力なく肩を落としたのである。
そして、古い先祖の写真と、若かりし祖母の写真を見せてくれた。
祖母も曾祖母も、確かに同じ指輪をしている。聞けば当主の妻に引き継がれていく守り神のような指輪なのだという。
いずれは俺の妻がその指輪をしなければいけないのだと、祖母は切々と訴えた。
あまりに小さくて細かいデザインがわからない上に、石の色が写真によって違って見えた。ある時は赤っぽく、ある時は深い緑。
『アレキサンドライトの指輪。尊、探しておくれ。月城を守ってくれる大切な指輪なの』
誇り高く気丈な祖母が俺の両手をとって、初めて俺に頭を下げたのだった。
佐藤家は没落したとはいえ、弥衣には祖母が反対するほどの欠点もない。弥衣の実母の写真はあるから問題ない。
あの指輪をした弥衣を妻として紹介すれば、祖母は安心するだろう。
弥衣との結婚は、ある意味一石二鳥なのだ。
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