エテルノ・レガーメ

りくあ

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第2章︰ルナソワレーヴェ

第17話

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「ルナ…起きてるか?」
「ん…おはよう…ライガ。」
「朝早くにすまない。朝飯を食べたら俺の部屋に来てくれ。話がある。」
「うん…わかった!」

朝食後、彼の部屋へ向かうと、そこにはフィーの姿もあった。

「おはようございます…ルナ。」
「おはよ!」
「悪いが、ルファーも呼んでくれるか?」
「あ、うん。わかった。…ルファー!」

彼の名前を呼ぶと、私の足元から眠そうにしている白猫が現れた。

「なんですにゃ?今日の練習は午後からって…」
「ライガから話があるみたいだよ。」
「…早速だが本題に入る。今日から、ルナにも仕事を手伝ってもらおうと思う。」
「え!仕事!?」
「ルファーとの連携もとれてきたし、銃も魔法も随分上達したからな。」
「でも…私に出来るかな?」
「私達は、それぞれ…2人ずつのペアを組んでやっています…。」
「俺とフィー、レーガとエレナがペアになり、互いに協力してこなしている。」
「あれ?ヴェラは?」
「今の所、あいつは1人でやっている。ルナにはヴェラとペアを組んでサポートをして欲しい。」
「サポート…。」
「大丈夫…です。私にも出来るくらいですから…。」
「急にサポートしろと言っても難しいだろうから、今日は俺達と一緒に仕事をやってみようと思ってな。」
「う、うん…。わかった。」
「ルファーもそれで構わないか?」
「ルナの考えに従うにゃ。」
「じゃあ、早速行こう。こっちだ。」

彼の部屋を出ると、さらに階段を上りって行き建物の屋上へとやってきた。

「わぁ…高い!」
「危ないからあまり前に出ない方がいい。フィー頼む。」
「はい…。ターク!」

彼女の呼びかけにより、足元から大きな鳥が勢いよく空に飛び出し、私達の目の前に降り立った。

「大きい!フィーの使い魔?」
「はい…空を移動する時の為のターク…です。」
「こいつに2人以上運ばせる事は出来ない。俺は自分で飛んで移動する。ルナはフィーと一緒に使い魔に乗ってついてきてくれ。」
「しっかり…掴まって下さいね…。」
「う、うん!」

タークの背中に掴まり、空高く飛び立った。

「怖くない…ですか?」
「前にも飛んだことあるから大丈夫!それより、タークって言葉を話せるの?」
「何を言っているかは…使い手である、私にしか分かりません…。」
「そっか…残念だなぁ。」
「でも…私達の言葉は、彼等に通じています…。返事は出来ないですが…声を掛けてあげると喜びます…。」
「そうなんだ!…よろしくねターク!」

しばらく飛行を続けていると、前を飛んでいるライガが森に向かって徐々に高度を下げて行った。

「あ、ライガが降下してく…。」
「あそこが目的地…みたいですね…。」



「ふぅ…。」
「ライガ…大丈夫…ですか?」

フィーが心配そうに彼の元に近づくと、手に持っていた上着を手渡した。

「久しぶりに飛んだからな…少し疲れただけだ。」
「ライガは自力で飛べて凄いなぁ!」
「しかし、あまり長くは持たない。遠くに行くにはフィーのサポートが必要だ。」
「やっぱり、自力で飛ぶのって難しいんだ。」
「…必要とされるものが多いからな。」
「今日は森…ですか。」
「あぁ。この森に住んでいる、キドの駆除が今回の仕事だ。いくぞ。」

森の中にある道を歩いて、奥へと進んでいく。

「キドってどんな動物なの?」
「小柄で…尻尾が長いのが特徴の害獣です…。夜行性…なので、日中は寝ているはずですね…。」
「夜、街に侵入して倉庫を荒らされ迷惑しているらしい。繁殖期のせいで、増えすぎて困っているから駆除してくれという話だ。」
「駆除って…殺すって事だよね…?」
「可哀想だと思うだろうが、1匹だけでも殺す事で、彼等に街は危険だと言うことを警告するんだ。」
「見つけ次第、殺す訳じゃないですよ…。初めは交渉をします…。」
「交渉?」
「私の使い魔と話をさせて…それで納得してくれたら…殺しはしません。」
「そうなんだ!それで済んでくれるといいなぁ…。」

しばらく森の奥に進んで行くと、後ろを歩いていたフィーが歩みを止めた。それに気づいたライガも、同じようにその場で止まった。

「ライガ…。六本先の右の木の側に…いるみたい…です。」
「そうか。わかった。」
「ここからじゃ全く見えないのに、どうやって見つけたの?」
「使い魔に探させていたので…。」
「そんな使い方も出来るんだね!」
「それぞれ…色んな長所を生かして、探すんです…。」
「へー…すごいなぁ。」
「交渉してきてくれ。」
「はい。リーサ…!」

彼女の足元に、フサフサした尻尾をしている小さな動物が現れ、目的の木の元へ駆けて行った。

「しばらくの間…ここで待ちましょう…。」
「俺はちょっと辺りを見てくる。」
「じゃあ、私も…!」
「ルナはフィーと居てくれ。すぐ戻る。」

そう言い残し、彼は地面を強く蹴ると、空へ飛んで行ってしまった。

「どうしたんだろうね…ライガ。」
「気になる事があるんだと…思います…。なんだか今日は…森が騒がしいような…。」
「騒がしい?」

ガサガサ…!と近くの茂みが揺れると、小柄の動物が姿を現した。

「わ!びっくりした…。この動物は…?」
「そ、それは…キドの子供…ですね。なんでここに…。」
「これがキドか~…名前の割に、目が大きくて結構かわいいかも…。」

キドの頭を撫でようと手を伸ばした。すると、その手を避けられ、手首のあたりをガブリと噛まれてしまった。

「痛っ…!」
「だ、大丈夫ですか…!?」
「だ、大丈夫!跡が付いただけみたい…。…ごめんね、怖がらせちゃって…。何もしないから森に帰っていいよ。」

キドが側から離れると、再び茂みの中へ飛び込んで行った。

「血が出ていないなら…大丈夫そうですね…。」
「平気平気!ちょっと痛かったけど…。」
「フィー!ルナ!」

木の上からライガが飛び降りると、慌てた様子でこちらに歩み寄った。

「どうしたんですか?ライガ…。」
「交渉の連絡は?」
「まだ…です。」
「そうか…。山の方で地滑りがあって、山の動物達が森の方まで降りてきているらしい。この辺りもどうなるかわからない…早めに撤収した方がよさそうだ。」
「わ、わかりました…ターク!」

彼女の使い魔に乗り、空へ飛び立った。下の方を振り向くと、動物達が辺りを走り回っていた。

「かなり範囲が広い…地滑りだった…みたいですね…。」
「そう…だ…ね…。」

すぐ側にある彼女の顔が歪んで見え、視界ががぐるぐると回るような感覚がした。

「ルナ…?大丈夫ですか…?」
「え?うん…大丈…夫…」

空の上に居るせいか、風が全身に強く当たるのを感じた。



「…。」
「あ!気が付いた!」

ゆっくりと目を開けると、木でできた天井と薄汚れた照明が見えた。隣には白髪の少年が椅子に座っていた。

「あ…れ…?ルカ…?」
「心配したよ…。5日間も寝たままだったから…。」
「え、5日間?ごめんねルカ…。もう大丈夫…っぽい!」
「ぽいって…。」

会話の返事をするように、ぐぅー…とお腹が音を立てた。

「あ…お腹なっちゃった…!」
「あはは。大丈夫そうだね!ご飯作るからちょっと待ってて!」

お粥を食べ、彼から今まであった出来事を聞いた。

「あの時、とっさに危ないと思って突き飛ばしちゃって…。ルナが地面に倒れた時に、頭を打った衝撃で眠ったままになってたんだ。」
「そう…だったんだ。」
「治療の方はちゃんとしてもらったから大丈夫!」
「そっか!ありがとうルカ。」
「いいよそんな…。僕は見てる事しか出来なかったから…。」
「治療って…誰がしてくれたの?」
「………だよ。」

彼の口は確かに動いているが、人の名前を喋っている部分だけが何故が聞き取ることが出来なかった。

「え?なんて言った?」
「だから、………がしてくれたの。」
「う、うーん…いまいちよく聞こえない…。」
「どうしたの?大丈夫?まだ寝てた方がいいかもね。すぐに動くのはきついだろうから…。」
「そ、そうだね!じゃあ、もう少し寝ようかな…。」
「うん。夕飯の時間になったらまた見に来るね。おやすみルナ。」
「おやすみルカ。」

誰も居なくなった部屋で、私は再び目を閉じた。

「…ナ。……ぇ…きて…ルナ…。…ルナ!」
「…!」
「ルナ…!」

目が覚めてすぐに、寝ている私に覆い被さるようにフィーが抱きついてきた。辺りを見回すと、どうやら自室のベッドに寝ていたらしい。部屋にはヴェラの姿もあった。

「フィー。ちょっと離れてて。」
「ご、ごめん…なさい…。」
「ヴェラ…?」
「頭は大丈夫そうね。ルナ。手足は動かせそう?」
「ちょっと…痺れてるみたいで動かしにくいけど手は大丈夫みたい…。脚は…。」

下半身に力をいれたものの、左右の脚は動く気配がなかった。

「脚はだめそうか…。」
「え…もう…動かせないんですか…?」
「大丈夫。動くまでに時間がかかるだけ。心配しなくてもいい。」
「よかった…。」
「フィー…私あんまり覚えてないんだけど…一体何があったの?」
「私とライガと3人で…キドの駆除をしに行ったのは覚えてますか…?」
「うん…!キドが見つかって、交渉をしてたらライガが戻ってきて…。撤収することになったから、フィーの使い魔に乗って空に飛んで…。…その後が思い出せない…。」
「ルナがタークの背中から落ちたんです…。それに気づいて、ライガがルナを受け止めに行ったら…2人で谷に落ちて行って…。」
「それじゃあ、ライガは!?ライガは大丈夫なの!?」
「ライガはまだ寝ている。」
「私のせいで…。ライガの所に行かなきゃ…!」
「だめです…!ルナだって、もう5日は寝たままだったんですから…!」
「え?5日…?」
「ちなみに、使い魔の上から落ちた原因は恐らく毒のせいだ。」
「毒…って?」
「キドの牙には毒があるんです…。噛まれると、毒が身体の中に入って…手足が痺れて動かなくなって…最悪の場合死ぬ事も…。」
「死…。」
「でも、毒があるのは大人のキドなんです…。あの時、噛まれたのは子供で…血も出ていなかったので…。まさか毒が身体の中に入ってたなんて…。気が付かなかった…私のせいなんです…。」

小さな顔に大粒の涙が溢れ出し、彼女は声を震わせながら自身を責めていた。

「そんなこと…!」
「ごめんなさい…ルナ…。」
「やめてよフィー…。私がキドに触ろうとしたから…!だから噛まれたりしたんだよ!フィーのせいじゃ…」
「私が…もっと…キドの事を話して…いれば…!防げたのに…防げなかった私が…」
「あーもうやめなさい。どっちのせいでもないから。」
「でも…。」
「ルナもライガも死ななかったからそれでいいの。フィー、あなたもしばらく休みなさい。ずっと看病していたんだし。」
「…わかりました。」
「フィー…ありがとう。」
「…ルナも、ゆっくり休んで下さいね。」



「ルナ!」
「レーガ?」 

何もする事が出来ず、1人でベッドに横たわっていると、レーガがノックもせずに部屋に入って来た。

「ごめんね、何日か仕事が忙しくて中々来れなくて…。大丈夫?怪我したって聞いたけど…。」
「脚がまだ…動かせないけど大丈夫。」
「え、動かせないの…?」
「でも、もう少ししたら動かせるようになるってヴェラが言ってた!」
「…そ、そっか…。」
「あの…レーガ。お願いがあるんだけど…。」

扉を開けると、ライガはベッドの上に横になっていた。普段身につけている眼帯を付けたまま、目を閉じて眠っている。

「ルナ…!このような所に来て…大丈夫ですの?」
「まだ脚が動かせないから…レーガにおんぶして連れてきてもらったの!ライガは…寝たまま…なんだよね?」
「えぇ…。あれから8日は経ちましたね…。」
「そっか…。」
「大丈夫ですわ、ルナ。あなたを受け止めた衝撃でかなり身体を打ったそうですが…。先程ヴェラに聞いたら、力を戻すために眠っているだけで、身体自体は治っているそうです。」
「なんで…私を…受け止めて…。」
「僕もライガと同じ事すると思う。でも、ルナのせいじゃない。気に病む事は無いよ。」
「うん…。」
「そろそろ部屋に戻ろう。しっかり休んで、ライガの目が覚める前に、歩けるようにならなきゃね。」
「うん!」
 


「ルナ~。リハビリ頑張ってる?」
「あ、レーガ!大分歩けるようになったよ。早く階段のぼれるようになりたいんだけど、まだきつくて…。」
「じゃあ、僕が手を支えてあげるから、階段をのぼるの頑張ってみよっか。」
「うん!」

建物の屋上へ続く長い階段を、彼に手を引かれれながら一歩一歩のぼっていく。

「大丈夫?辛くない?」
「うん…。」
「無理しないでゆっくりでいいんだよ?」
「ちょっと痛いけど…大丈夫!」
「どうして早く階段をのぼれるようになりたいの?」
「それは…。」
「…ライガが心配だから?」
「そ、それだけじゃないよ…。」
「ルナのせいじゃないって言ったのに、まだ気に病んでるの?」
「だって…私が噛まれてなかったら…。」
「噛んだのはキドでしょ?ルナが悪いんじゃないよ。」
「で、でも…!」
「…悪いのはあいつ自身だ!!!」

静まり返った階段に、彼の声が響き渡った。

「レーガ…?どうしたの…?」
「…悪いのは全部ライガだよ。」
「どうして?ライガは悪くないよ。」
「…少し前に、ルナに仕事をさせるかどうか話し合ったんだ。でも、ライガ以外の全員が反対した。」
「みんなが反対した理由は…?」
「僕とエレナは、今の人数で十分だと思ってるから、わざわざルナに無理させる必要はないって考えだった。フィーは、ルナの事をすごく心配してた。ヴェラは…1人の方がやりやすいって理由だったけど…。」
「そうだったんだ…。」
「でも、ライガはみんなの反対を押し切って、ルナに仕事を教えようとした。慣れるまでは自分が一緒にやるって言って、何かあったら自分が責任を取るって…結局ルナを傷つける結果になった。」
「それは…。」
「ね?2人が怪我したのは、ライガのせいなんだよ。ライガの怪我は自業自得だけど、ルナの事を傷つけたのは許さない。」

いつも冗談ばかり言っている彼が真剣そうな表情で、私の目を真っ直ぐと見てそう言い放った。

「そう思ってくれるのは嬉しいけど…。今の話を聞いても、私はライガのせいだと思わない。」
「どうして?」
「守ってくれたからだよ。自分の身体が傷つくのわかってても、それでも私の事助けようとしてくれた!」
「そんなの当たり前だ!だってルナは大事なじっ…」
「レーガ!!!」 

彼の言葉を遮るようにして叫ぶ声が聞こえ、階段の数段上に手すりに掴まって立っているライガの姿があった。

「ライガ!目が覚めたんだね!もう動いて平気なの!?」
「大丈夫だ。心配かけてすまなかった。」
「ねぇ。それよりも先に謝ることあるんじゃないの?大事な妹を傷つけておいてさ。」
「レ、レーガ…!」
「いや。その通りだ。…すまなかったルナ。」
「どうして謝るの?これは私自身のせいだよ…。」
「…どうしてそんなに自分を責めるの?…悪くないのに。」
「そうだぞ、ルナ。全ては俺が…」
「あのさライガ、最近ちょっと弛んでるんじゃないの?自分が一番強いからって、力を過信しすぎてると思うんだけど。」
「なんだと?」
「レーガ…なんでそんな…」
「ルナ。ちょっとここで待ってて。話つけてくるから。」
「ちょっとレーガ…!?」

2人は、階段の先にある屋上へと向かって行ってしまった。残された私は、必死に脚を動かし、まだまだ先の長い階段をのぼっていく。やっとの思いで辿り着くと、屋上の上空に飛んでいる2人の姿を見つけた。

「どうしてあんな所に…?話すって言ってたけど…なんだか…2人とも様子が変…?」

レーガの手にはレイピアが握られ、ライガの手には大きな剣が握られていた。しばらく見つめあった後、激しい飛行戦が始まった。

「な!何やってるの2人共!?危ないからやめてよ!」

素早いレイピアの動きに、ライガの大剣が反応し見事に防いでいる。しかし、彼の表情は、眉間に皺を寄せ苦しい表情を見せている。必死に叫んでも、彼等の耳には届いていないようだった。
レーガの鋭い一撃で、ライガの身体が屋上の床に叩きつけられた。

「ライガ…!」
「来るな!!!」
「よそ見するな!!こっちに集中しないと殺すよ!?」
「やめてレーガ!!!」
「ルナ!?」
「な…!?」

とにかく2人を止めたい一心で、倒れているライガに向かって飛び込んだ。レーガが向けていたレイピアが物凄い速さでこちらに迫ってくる。

「あんた達!なにやってんのよ!!!」

私の目の前で、レイピアの先端が止まった。

「ヴェラ…!」

掴んだレーガの手を離すと、その手で頬を叩いた。

「…!」
「頭、冷やしてこい。」
「………うん。」

レイピアが彼の手から離れ、地面に叩きつけられた。粉々に砕け散って、破片が床に散らばるとそれらは赤い液体に変り、コンクリートの中に染み込んでいった。彼は意志をなくした人形の様に、無表情のまま登ってきた階段を降りていった。

「ライガ。あんたもよ。」
「で、でもヴェラ…!ライガは怪我して…」
「怪我ならとっくに治ってる。今必要なのは頭を冷やす時間。」
「…わかってる。」

その場に立ち上がり、レーガと同じように建物の中へと入って行った。

「ルナ、立てる?」
「うん…。」
「…あいつらの喧嘩よくあることよ。」
「よくあるの?」
「どっちも頑固で言う事聞かないから…。性格は真逆みたいでも、考えや思いを曲げない所はそっくり。」
「兄弟だから…なのかな?」
「そうかもね…。あんたは似ちゃだめだからね。」
「うん…。」
「それと、脚を動かすのはいい事だけど程々にしなさい。」
「わかった。」



「レーガ…入ってもいい?」
「…あ、うん。どうぞ。」

窓際に置いてある椅子に座り、外を眺めているようだった。

「外を…見てたの?」
「うん。星を見てた。」

彼の隣にある椅子に座ると、同じように窓の外を眺めた。外はすっかり暗くなり、空には星が見えている。

「綺麗だね。星…」
「星も好きだけど、月も好きだし、空に浮かぶ雲も好きなんだ。毎日同じようで、ちょっとずつ違う。見ていて飽きないよ。」
「じゃあ、ライガの事は?好き?」
「…嫌いじゃないけど好きでもないよ。男が男を好きになったらその方が変じゃない?」
「それは…そうだよね…。」
「みんなをまとめられるリーダーシップとか…計画性があって無駄のない行動とか…すごいと思う。能力的な部分も、ほとんど僕より上回ってるし。隙がなくて弱味も見せない。…僕は彼に嫉妬してるだけだよ。」
「でもレーガだって…。」
「昼間は…みっともない所見せたよね…。」
「そんなことないよ!飛べるのだってすごい事だし、レーガの速さは誰も勝てないよ!」
「ルナ…。」
「誰よりも真っ先に心配してくれて…いつも明るく声掛けてくれて…落ち込んでる時は慰めてくれて…。私、レーガにいっぱい助けて貰ってるよ。」
「…。」

鮮やかな黄色の瞳から、溜まっていた涙が流れ落ちていた。

「レ、レーガ…!なんで泣いてるの…!?」
「え?…本当だ。涙なんて、何百年ぶりだろう…。」
「何百年って…。レーガ一体何歳なの…?」
「えーっと…287歳だったかな。」
「287!?吸血鬼ってそんなに長く生きるんだね…。」
「ルナもだよ?」
「う…そうだよね…。いいような悪いような…。」
「あはは。…2人で一緒にもっともっと歳をとっていこうね。」
「う、うん…?」
「さてと、そろそろ寝ないとね。ルナ一緒に寝る?」
「わ、私…今日は部屋に戻る!また今度ね…!」
「あはは…逃げられちゃった。」
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