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2話
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天は脱色を重ねた白に近い派手な金髪で常に柄物をまとっていて、晴馬は艶のある黒髪で無地の服ばかり着ていた。
対照的なミスターコン覇者ふたりが親しげにしている様は、案の定常に大学中の目を惹いた。共に歩くだけで四方八方から視線が突き刺さり、俺の大学生活は終わったと天は思ったが、なんとイケメンがふたりで仲良くしてると逆に話しかけにくいらしく、晴馬といるときは誰も話しかけてこないという思ってもみない安寧が訪れていた。
「天さん。聞きたいことがあるんですけど」
すっかり仲良くなった天と晴馬は、例によってふたりで学食にいた。
周囲のテーブルは女子学生ばかりで、おそらく勝手に写真か動画を撮られているが、それで動揺する時期は終わっていた。
「ん、なに?」
カレーを口に入れてスマホから顔を上げると、晴馬が静かに目を伏せている。深刻そうな空気を感じて天がスマホを置くと、晴馬はゆっくり天を見た。
「天さんは……大金持ちの彼女に養われてるってホントですか」
「ゲホッ!待っ、なんて?」
予想外の問いにむせて、天は気管に入りかけたカレーを急いで水で流し込む。その間も晴馬は神妙に話を続けた。
「学部の人たちがそう言ってました。天さんは年上の恋人に衣食住を与えられてて、派手髪も服装もその彼女の趣味に従ってて、彼女の束縛が強すぎるから男とも女とも全然つるまないんだって。だから俺が天さんに仲良くしてもらってるのも、きっとその大金持ち彼女が俺を気に入って目をつけてるからだって……」
「いやいや、ウソだよ!全部嘘!」
俺が金髪で派手な服を着てるのはモテたくないからだ、と喉まで出かかって、天は寸でのところで無暗に恨みを買う発言を飲み込んだ。
言いたいことも言えない天が水のコップをテーブルに勢いよく置くと、晴馬はつぶらな瞳を見開く。
「ほんとに?」
「ほんとにマジで。俺は普通の一人暮らしだし彼女いないし」
天の発言に周囲がさざめくようにざわついた。
どうやら今晴馬が言った話は、ほぼ真実として大学中に流布されているらしい。天は自分の悪評を悲しみながら、自分にも責任はあるかと眉間をかいた。
天は大学に入学してから日々告白を受けまくり、それと同時に断りまくっていた。いくらイケメンでも普通ここまで告白されないだろ、と思うくらい告白される。それは、入学当初に告白をほぼ無条件でOKし交際と破局を繰り返す悪手を打ち、周囲に『長瀬に告ったらワンチャンあるかも』と思わせてしまったことが大きな要因だった。
そういった背景により、大学はすでに天で玉砕した女性陣が溢れており、学部内の同学年に至ってはほぼ全ての女性が天にフラれていると言っても過言ではなかった。そして断る際に理由を考えるのが面倒になってしまって、「彼女いるから」という便利な言葉を乱用していたのは天本人であった。
「でもタワマンには住んでるんですよね?」
「住んでない……」
「Youtubeとスパチャでめちゃくちゃ稼いでるって話は?」
「ウソだよ……俺SNS全部やめたからやってないもん……」
純粋な問いに答えながら天は頭を抱えた。
そこでふと、晴馬と親しくなってからも部屋に呼んだりという交流はしていなかったなと思い当たる。
「信じられないなら俺んち来ていいよ。マジで普通の狭い部屋だから」
「え、行きます。今日はどうですか?」
晴馬が即答してきて、そんなスピード感で話が進むと思わなかった天は「え。えーっと」と斜め上を見つめて部屋に人を呼んで大丈夫か考えた。わりと散らかってる部屋が脳裏に浮かんだが、晴馬相手ならいいかと頷く。
「うん、平気。来たいなら今日でもいいよ」
「やった、ありがとうございます。じゃ講義終わったら門のとこいますね」
晴馬は深刻そうだったのが嘘のように元気よく親指を立てると、食べかけのチャーハンにスプーンを突っ込んだ。
対照的なミスターコン覇者ふたりが親しげにしている様は、案の定常に大学中の目を惹いた。共に歩くだけで四方八方から視線が突き刺さり、俺の大学生活は終わったと天は思ったが、なんとイケメンがふたりで仲良くしてると逆に話しかけにくいらしく、晴馬といるときは誰も話しかけてこないという思ってもみない安寧が訪れていた。
「天さん。聞きたいことがあるんですけど」
すっかり仲良くなった天と晴馬は、例によってふたりで学食にいた。
周囲のテーブルは女子学生ばかりで、おそらく勝手に写真か動画を撮られているが、それで動揺する時期は終わっていた。
「ん、なに?」
カレーを口に入れてスマホから顔を上げると、晴馬が静かに目を伏せている。深刻そうな空気を感じて天がスマホを置くと、晴馬はゆっくり天を見た。
「天さんは……大金持ちの彼女に養われてるってホントですか」
「ゲホッ!待っ、なんて?」
予想外の問いにむせて、天は気管に入りかけたカレーを急いで水で流し込む。その間も晴馬は神妙に話を続けた。
「学部の人たちがそう言ってました。天さんは年上の恋人に衣食住を与えられてて、派手髪も服装もその彼女の趣味に従ってて、彼女の束縛が強すぎるから男とも女とも全然つるまないんだって。だから俺が天さんに仲良くしてもらってるのも、きっとその大金持ち彼女が俺を気に入って目をつけてるからだって……」
「いやいや、ウソだよ!全部嘘!」
俺が金髪で派手な服を着てるのはモテたくないからだ、と喉まで出かかって、天は寸でのところで無暗に恨みを買う発言を飲み込んだ。
言いたいことも言えない天が水のコップをテーブルに勢いよく置くと、晴馬はつぶらな瞳を見開く。
「ほんとに?」
「ほんとにマジで。俺は普通の一人暮らしだし彼女いないし」
天の発言に周囲がさざめくようにざわついた。
どうやら今晴馬が言った話は、ほぼ真実として大学中に流布されているらしい。天は自分の悪評を悲しみながら、自分にも責任はあるかと眉間をかいた。
天は大学に入学してから日々告白を受けまくり、それと同時に断りまくっていた。いくらイケメンでも普通ここまで告白されないだろ、と思うくらい告白される。それは、入学当初に告白をほぼ無条件でOKし交際と破局を繰り返す悪手を打ち、周囲に『長瀬に告ったらワンチャンあるかも』と思わせてしまったことが大きな要因だった。
そういった背景により、大学はすでに天で玉砕した女性陣が溢れており、学部内の同学年に至ってはほぼ全ての女性が天にフラれていると言っても過言ではなかった。そして断る際に理由を考えるのが面倒になってしまって、「彼女いるから」という便利な言葉を乱用していたのは天本人であった。
「でもタワマンには住んでるんですよね?」
「住んでない……」
「Youtubeとスパチャでめちゃくちゃ稼いでるって話は?」
「ウソだよ……俺SNS全部やめたからやってないもん……」
純粋な問いに答えながら天は頭を抱えた。
そこでふと、晴馬と親しくなってからも部屋に呼んだりという交流はしていなかったなと思い当たる。
「信じられないなら俺んち来ていいよ。マジで普通の狭い部屋だから」
「え、行きます。今日はどうですか?」
晴馬が即答してきて、そんなスピード感で話が進むと思わなかった天は「え。えーっと」と斜め上を見つめて部屋に人を呼んで大丈夫か考えた。わりと散らかってる部屋が脳裏に浮かんだが、晴馬相手ならいいかと頷く。
「うん、平気。来たいなら今日でもいいよ」
「やった、ありがとうございます。じゃ講義終わったら門のとこいますね」
晴馬は深刻そうだったのが嘘のように元気よく親指を立てると、食べかけのチャーハンにスプーンを突っ込んだ。
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