ミスターコン1位と1位が仲良くなりすぎる話

タタミ

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4話

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「──っていう感じの相手がいて、これって好きなのか、悩んでる友達がいてさ」
「いや待て、びっくりした。今までのクソ長え話、俺の知らない友達の恋愛相談だったの?」

 吉場京介よしばきょうすけはとっくに飲み終わっていたスタバのストローから口を離して、大袈裟な動作でソファの背もたれに寄りかかった。ここは京介のバイト先・八王子にあるさびれた古本屋で、京介は遊びに来た天と休憩スペースでだらだら喋っていた。ふとしたきっかけで天が「ちょっと相談があって……」と話を始めたのだ。
 『友達の話』というテイで登場人物の名前を伏せて永遠と長話をしていた天は、疲労を見せる京介を気にする様子もなく、氷が溶けたジュースを飲んで「うすい……」と眉を寄せている。

「つーか友達の話じゃなくて絶対お前の話だろ。そもそも天に大学の友達なんていねえんだから」
「ぐっ……いや、大学に友達はいるし」
「その唯一のご学友・築城晴馬くんに友情以上の感情を感じるよ~好きになっちゃったかも~ってこと?」
「ま、まだそこまでじゃない!今の話聞いて、客観的にどう思うか相談したいん──」
「じゃ、今の話は晴馬くんと天の話ってことでいいんだな」
「ぐっ……!」

 図星、という反応をして天が黙る。
 顔も頭もいいはずの天は、ウソをつくのが下手すぎてたまにバカに見える。
 京介が凝った背中を伸ばしながら「ったく、いいな~大学生!俺にもキャンパスライフさせろ~!」と大きく文句を言うと、「フリーターはお前が選んだだろ」と天が小さく突っ込んだ。

「……晴馬ってさ、女子から超モテるんだよ」
「お前も超モテるだろ」

 友達の話、とか誤魔化すのをやめて観念した様子で話し出す天に対して、雑に返しながら京介はスマホをいじってLINEを開いた。

「いやでも、俺は不必要にモテるのが嫌になって女ウケ悪いファッションしてるし話しかけんなオーラ出してるわけよ」
「ムカつくことを平然と言ってくるからすごいよお前は」
「でも晴馬は違う。あいつは女ウケも男ウケも親世代ウケもいいファッションで性格も優しくて穏やかで。それで顔もいい。こんなの、俺が晴馬のこと……その、好きってなってもライバルが多すぎというか……」
「まぁ確かに晴馬くんは好感度の塊みたいな見た目してるよな、天と違って」

 京介が肩をすくめると、天はジュースの容器を両手で持って視線を落とす。
 晴馬の性格が優しくて穏やか、かはわからないけど、と京介は思った。
 天と晴馬が仲良くなってから、京介は天に晴馬を紹介されたことがある。その後何度かこの古本屋に3人で集まったこともあったが、京介は晴馬に会うたびに感じるものがあった。
 晴馬の嫉妬だ。
 もちろん京介に対する嫉妬である。
 天と最も親しい人物は正直言って京介で、八王子とかいうアクセスの悪い土地にわざわざ京介に会うためだけに天は足を運んでいる。晴馬にとってはそういったことが丸々、すべて気に入らないのだと思う。

「晴馬って彼女いるのかな……あんまそういう話しないんだよね」
「いないだろ」
「え、聞いた?いないって言ってた?」
「聞いてないけどいないだろ、あの感じ」

 だって、晴馬はどう見ても天のことが好きだから。
 
 京介は浮かんだ言葉を続けるかちょっと迷ったが、やめた。
 晴馬の嫉妬を受けるのは面倒ではあったが、この両片想いをこじらせているふたりの気持ちを丁寧にほぐしてくっつけてあげるほど京介はキューピッド気質ではなかったので、当事者間で勝手にさっさと解決してほしかった。

「とりあえず俺に言えるのは、お前は晴馬くんのことが好きだよ。客観的に見ても」
「やっぱそうかな……え、でもどうしよ……どうしたらいいかな」

 顔を赤らめてジュースのカップを握る天は、ドラマのワンシーンのような完成度だった。芸能人にならないのが不思議だと京介が思っていると、手元のスマホが震えた。
 先ほど京介が送ったLINEに返信が来ていた。

『行こうとしてたので、もう着きます』

「天がやるべきことはさ、告白でしょ」
「は!?え、いきなり……!?」
「女ウケも男ウケもいい晴馬くんなんだろ?いつどこぞの馬の骨に先越されるかわからんぞ。いいの?晴馬くんが知らん誰かとラブラブになって」
「いや、それはイヤだけどさ……!でも告白は無理っていうか、フラれたらどうすんだって」
「お前人生でフラれたことあんの?」
「ないけど」
「ムカつくなホントに」

 ここで京介は、そろそろ当事者ご到着だろうと立ち上がった。

「俺、本の仕分けあるから仕事戻るわ」
「なんだよ、急にやる気出して──」
「こんにちは~」
「!?」

 ガラガラと引き戸が開いて、声がした。その声だけで晴馬だと認識した天が、目を見開いて立ち上がる。
 京介はすぐさま大声を上げるために息を吸い込んだ。

「晴馬くん!こっち、奥の休憩スペース来て!天が話あるって!」
「ちょ、京介!おい、これどういうこと……!?晴馬呼んだのかお前!」
「天がね、超大事な話あるってよ!!」
「やめろ!違う!まだ無理だって──」

 京介が暴れる天を押さえつけながら休憩スペースに現れた晴馬に親指をつき出すと、晴馬は「なんの騒ぎですか」と近付いてくる。慌てふためく天を横目に、京介は晴馬と入れ替わるために休憩スペースを出た。
 背後から「この裏切り者が!」という天の恨み節が聞こえると同時に「天さん、髪色変えた?超似合ってます。カッコいい」と晴馬の甘ったれた声がしたので、京介は全てを無視して仕事をしに行った。
 この後、天が晴馬に何を話したのか京介は知らない。知らないが、帰るころにはふたりの間になんだか甘酸っぱい空気が流れて、代わりに晴馬から京介への嫉妬が明らかになくなったのは事実だった。

おわり
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みんなの感想(1件)

もくれん
2024.01.13 もくれん

甘酸っぱい!!!🥰
天の可愛さは突き抜けてますね……なんか色々不器用でほっとけない感じ🤭

その後のいちゃいちゃ見てみたい✨✨✨

2024.01.13 タタミ

感想ありがとうございます…!><後日談もいつか…!

解除

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