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イリスさんの手を取って転位した先は、アクラマ魔導学院にあるダン王子の部屋の前。ノックをすると扉が開き、従者のクライドさんが出迎えて深々と頭を下げた。
「ようこそお越しくださいました。王子の皆さまもお揃いでございます」
以前より一層丁寧な所作で俺たちを中へと案内するクライドさんについて行くと、ソファにダン王子を除いた3人が座っていた。
「みなさん、お久しぶりです」
「ルカくん! 1番会いたかった。ちょっと見ない間に男前になったんじゃない?」
「クシェル王子。元気そうですね、もう体調は大丈夫なんですか」
「俺はもう元気いっぱいだよ~。呪具なんかに負けてられないからね」
ニコニコと俺の肩を抱くクシェル王子は、力こぶを作るように腕を曲げて元気をアピールしている。ディタに呪具を使われて、寝込んでいたと聞いたが回復したようで何よりだ。
「クシェル、離れなさい。ルカ様はもう軽々しく話しかけてよい方ではありません」
「も~マーティアスくんは堅物なんだから。いいじゃん、俺たち友達みたいなもんだし。マーティアスくんも肩組んであげよっか?」
「ルカ様。どうぞこちらへお掛けください」
クシェル王子を無視して、マーティアス王子が席に誘導してくれる。ラルフ王子の隣に座ると、クライドさんが給仕したであろうケーキをひとりだけパクパク食べていたラルフ王子が皿を置いて顔を上げた。
「また会えてうれしいです、ルカさん。あ、そうだ。お土産にマカロンを作ってきたのでどうぞ。おやつにでも食べてください」
ラルフ王子が柔和な王子スマイルを浮かべて、紙袋を差し出した。変わらずのキャラに癒されながらお礼を言うと、イリスさんが流れる所作で紙袋を受け取って下がる。ふと、そこで俺は見舞いの品を何も持っていないことに気が付いた。
「うわっ、俺なんにも用意してない! お見舞いってお花とか果物とかあった方が良かったですよね……!?」
俺が慌ててイリスさんを見ると、イリスさんとその他3王子もまとめてきょとんとしていた。
「お見舞いに花と果物……。魔界にそのような文化はございませんので、特に何かを持ち寄る必要はないかと存じます」
「え、そうなんですか。でも、ラルフ王子はこうしてマカロンを──」
「僕のマカロンはただのおすそ分けですよ。お見舞いは関係ないです」
「あ、そうなんですか……?」
俺がイリスさんやラルフ王子に目を向けてはきょとん顔を返していると、クシェル王子が笑い始める。
「ルカくんってやっぱ面白いね。至上様が大暴れしたって聞いてたから人格も変わってるかと思ったけど、全然ルカくんのまんまだ」
「お変わりないようで安心しました」
マーティアス王子にまで目を細められて、相変わらず自分に威厳がないことを感じて気恥しくなったところで、クライドさんが再び現れた。
「ご歓談中、失礼いたします。ご準備整いましたので、どうぞお部屋へとお進みください」
皆立ち上がり、奥の扉へと誘導を受ける。つい何か月か前まで毎日のように通っていたその部屋なのに、今では妙に緊張してしまって心臓が速まった。
「失礼いたします」
クライドさんがノックをすると、ドアがひとりでに開く。俺はすぐ、ベッドに起き上がっている姿を見て、息を吐いた。
俺だけに視線を向けたダン王子は、穏やかに表情を緩めた。
「久しいな、ルカ」
「ようこそお越しくださいました。王子の皆さまもお揃いでございます」
以前より一層丁寧な所作で俺たちを中へと案内するクライドさんについて行くと、ソファにダン王子を除いた3人が座っていた。
「みなさん、お久しぶりです」
「ルカくん! 1番会いたかった。ちょっと見ない間に男前になったんじゃない?」
「クシェル王子。元気そうですね、もう体調は大丈夫なんですか」
「俺はもう元気いっぱいだよ~。呪具なんかに負けてられないからね」
ニコニコと俺の肩を抱くクシェル王子は、力こぶを作るように腕を曲げて元気をアピールしている。ディタに呪具を使われて、寝込んでいたと聞いたが回復したようで何よりだ。
「クシェル、離れなさい。ルカ様はもう軽々しく話しかけてよい方ではありません」
「も~マーティアスくんは堅物なんだから。いいじゃん、俺たち友達みたいなもんだし。マーティアスくんも肩組んであげよっか?」
「ルカ様。どうぞこちらへお掛けください」
クシェル王子を無視して、マーティアス王子が席に誘導してくれる。ラルフ王子の隣に座ると、クライドさんが給仕したであろうケーキをひとりだけパクパク食べていたラルフ王子が皿を置いて顔を上げた。
「また会えてうれしいです、ルカさん。あ、そうだ。お土産にマカロンを作ってきたのでどうぞ。おやつにでも食べてください」
ラルフ王子が柔和な王子スマイルを浮かべて、紙袋を差し出した。変わらずのキャラに癒されながらお礼を言うと、イリスさんが流れる所作で紙袋を受け取って下がる。ふと、そこで俺は見舞いの品を何も持っていないことに気が付いた。
「うわっ、俺なんにも用意してない! お見舞いってお花とか果物とかあった方が良かったですよね……!?」
俺が慌ててイリスさんを見ると、イリスさんとその他3王子もまとめてきょとんとしていた。
「お見舞いに花と果物……。魔界にそのような文化はございませんので、特に何かを持ち寄る必要はないかと存じます」
「え、そうなんですか。でも、ラルフ王子はこうしてマカロンを──」
「僕のマカロンはただのおすそ分けですよ。お見舞いは関係ないです」
「あ、そうなんですか……?」
俺がイリスさんやラルフ王子に目を向けてはきょとん顔を返していると、クシェル王子が笑い始める。
「ルカくんってやっぱ面白いね。至上様が大暴れしたって聞いてたから人格も変わってるかと思ったけど、全然ルカくんのまんまだ」
「お変わりないようで安心しました」
マーティアス王子にまで目を細められて、相変わらず自分に威厳がないことを感じて気恥しくなったところで、クライドさんが再び現れた。
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「失礼いたします」
クライドさんがノックをすると、ドアがひとりでに開く。俺はすぐ、ベッドに起き上がっている姿を見て、息を吐いた。
俺だけに視線を向けたダン王子は、穏やかに表情を緩めた。
「久しいな、ルカ」
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