61 / 69
59
しおりを挟む
俺が何か言う前にイリスさんが挙手をして注目を集める。俺が話すより確実に要領を得るので、俺はイリスさんに一任することにした。
「ルカ様の状況でございますが、封印事件に関わった者の多くが存命のままロットに身柄が引き渡されたことで、ご存じの通りルカ様が至上様であると魔界中に流布されております。また、ルカ様は封印から解放後、以前とは比べ物にならないほど魔法を扱えるようになられたため、現在は至上様としての公務を実行していただいております」
「へえ~! もう至上様として働いてんだ、ルカくん。すごいねえ。もしかして力も至上様クラスに戻ってるの?」
「一般的な魔法はできるようにはなったんですけど、至上様としてはまだまだです。今は至上様としての生活に慣れるために、色々仕事をさせてもらってる状況で」
「目まぐるしい成長でございますよ。あの顕現をきっかけに、内なる至上様のお力を使えるようになってきたのだと推察しております」
「結局ルカさんはルカさんだけど、ルカさんの中には至上様がいるってこと?」
ラルフ王子が俺を見て首を傾げる。確証のない笑みで「たぶん」と答えると、イリスさんが俺を見て頷いてくれた。
「私はそう認識しております。おそらくルカ様の身に危険が差し迫ったことで、内なる至上様が顕現されたのかと。どうして至上様がルカ様の人格にお隠れになったのかわかりませんが、表裏一体の存在なのだと思います」
俺の中にいる至上様。
彼が表に出てきたことで、反逆者たちを封殺することができた。魔界の大混乱を防いだのはまさに至上様の力があってこそだった。
「俺、封印されてからのこと何も覚えてなくて。何が起きたのか何も。至上様には助けてもらって感謝してるんですけど……。至上様と俺が同一存在なら……俺があの場で人を殺めたってことですよね」
此度の反乱を粛清し、さすが至上様だと賞賛と畏怖を受け続ける間、ずっと心に引っ掛かっていたことを、俺は初めて吐露した。
封印された後のことは何も覚えていなかった。気づけば血塗れのダン王子が俺を抱きしめていた。それでも周囲を見れば、多数の人間が死んだ跡があるのは嫌でもわかった。具体的に何があったのかは、ダン王子もイリスさんも教えてはくれなかったけど。
俺が俯くと、ダン王子が息を吐くのが聞こえた。
「お前ではない。内なる至上様、というやつがやったことだ。罪の意識はそっちに負わせておけばいい。それに大多数は生き残った。至上様があのまま皆殺しにしていれば、王は我が国の汚点を隠そうとしただろう。生き残らせたのは正解だ」
「そう……ですかね」
「そうだ。もう気にするな、辛気臭くなるだけだ」
堂々と言い切られ、俺は思わずフッと笑ってしまった。まだダン王子ほどあっさりとは捉えられないけど、少し心が軽くなる。
「ディタも……生きて罪を償える。いつか面会に行ってやれ」
「……はい。絶対会いに行きます」
ダン王子に頷き返したところで、クシェル王子が珍しく真剣な表情で俺を見た。
「ルカくん。改めてディタのこと、生かしてくれてありがとう。あいつはどうしようもないことをやったのに、こんな礼はおかしいんだろうけど。でも俺は本当に感謝してる」
「いや、そんな……。俺も、ディタの命が助かってよかったと思ってます。どうしても……悪い人には思えないから」
俺の言葉にクシェル王子が黙ってしまって、湿っぽい空気が落ちる。気まずくなる寸前、マーティアス王子が軽く咳払いをした。
「ルカ様が至上様人格のままだったら、あの森で誰ひとりとして生き残っていなかったと思います。至上様が関わった事象としての被害は最小限ですし御の字でしょう。至上様が今まで手にかけてきた人数からすれば、ないようなものですよ」
「マーティアスくん、それフォローになってるの?」
「でも大惨事にならなかったのは、ダンとルカさんのおかげ」
ラルフ王子が笑いかけてくれて、俺も笑みを返した。
「まだまだ力不足ですけど、俺は至上様として、魔界の平和に貢献したいと思っています。誰でも生きやすい世界にしたい。だから顔を隠して畏怖の存在として君臨するんじゃなくて、みんなが知ってる至上様に……なりたいです」
「ルカ様……」
イリスさんが感極まったように目元を押さえている。王子たちも温かい眼差しを向けてくれて、じわじわと顔が熱くなってくる。
(宣言するの、恥ずかしいな……)
「ルカ様の状況でございますが、封印事件に関わった者の多くが存命のままロットに身柄が引き渡されたことで、ご存じの通りルカ様が至上様であると魔界中に流布されております。また、ルカ様は封印から解放後、以前とは比べ物にならないほど魔法を扱えるようになられたため、現在は至上様としての公務を実行していただいております」
「へえ~! もう至上様として働いてんだ、ルカくん。すごいねえ。もしかして力も至上様クラスに戻ってるの?」
「一般的な魔法はできるようにはなったんですけど、至上様としてはまだまだです。今は至上様としての生活に慣れるために、色々仕事をさせてもらってる状況で」
「目まぐるしい成長でございますよ。あの顕現をきっかけに、内なる至上様のお力を使えるようになってきたのだと推察しております」
「結局ルカさんはルカさんだけど、ルカさんの中には至上様がいるってこと?」
ラルフ王子が俺を見て首を傾げる。確証のない笑みで「たぶん」と答えると、イリスさんが俺を見て頷いてくれた。
「私はそう認識しております。おそらくルカ様の身に危険が差し迫ったことで、内なる至上様が顕現されたのかと。どうして至上様がルカ様の人格にお隠れになったのかわかりませんが、表裏一体の存在なのだと思います」
俺の中にいる至上様。
彼が表に出てきたことで、反逆者たちを封殺することができた。魔界の大混乱を防いだのはまさに至上様の力があってこそだった。
「俺、封印されてからのこと何も覚えてなくて。何が起きたのか何も。至上様には助けてもらって感謝してるんですけど……。至上様と俺が同一存在なら……俺があの場で人を殺めたってことですよね」
此度の反乱を粛清し、さすが至上様だと賞賛と畏怖を受け続ける間、ずっと心に引っ掛かっていたことを、俺は初めて吐露した。
封印された後のことは何も覚えていなかった。気づけば血塗れのダン王子が俺を抱きしめていた。それでも周囲を見れば、多数の人間が死んだ跡があるのは嫌でもわかった。具体的に何があったのかは、ダン王子もイリスさんも教えてはくれなかったけど。
俺が俯くと、ダン王子が息を吐くのが聞こえた。
「お前ではない。内なる至上様、というやつがやったことだ。罪の意識はそっちに負わせておけばいい。それに大多数は生き残った。至上様があのまま皆殺しにしていれば、王は我が国の汚点を隠そうとしただろう。生き残らせたのは正解だ」
「そう……ですかね」
「そうだ。もう気にするな、辛気臭くなるだけだ」
堂々と言い切られ、俺は思わずフッと笑ってしまった。まだダン王子ほどあっさりとは捉えられないけど、少し心が軽くなる。
「ディタも……生きて罪を償える。いつか面会に行ってやれ」
「……はい。絶対会いに行きます」
ダン王子に頷き返したところで、クシェル王子が珍しく真剣な表情で俺を見た。
「ルカくん。改めてディタのこと、生かしてくれてありがとう。あいつはどうしようもないことをやったのに、こんな礼はおかしいんだろうけど。でも俺は本当に感謝してる」
「いや、そんな……。俺も、ディタの命が助かってよかったと思ってます。どうしても……悪い人には思えないから」
俺の言葉にクシェル王子が黙ってしまって、湿っぽい空気が落ちる。気まずくなる寸前、マーティアス王子が軽く咳払いをした。
「ルカ様が至上様人格のままだったら、あの森で誰ひとりとして生き残っていなかったと思います。至上様が関わった事象としての被害は最小限ですし御の字でしょう。至上様が今まで手にかけてきた人数からすれば、ないようなものですよ」
「マーティアスくん、それフォローになってるの?」
「でも大惨事にならなかったのは、ダンとルカさんのおかげ」
ラルフ王子が笑いかけてくれて、俺も笑みを返した。
「まだまだ力不足ですけど、俺は至上様として、魔界の平和に貢献したいと思っています。誰でも生きやすい世界にしたい。だから顔を隠して畏怖の存在として君臨するんじゃなくて、みんなが知ってる至上様に……なりたいです」
「ルカ様……」
イリスさんが感極まったように目元を押さえている。王子たちも温かい眼差しを向けてくれて、じわじわと顔が熱くなってくる。
(宣言するの、恥ずかしいな……)
370
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる