魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ

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 俺が何か言う前にイリスさんが挙手をして注目を集める。俺が話すより確実に要領を得るので、俺はイリスさんに一任することにした。

「ルカ様の状況でございますが、封印事件に関わった者の多くが存命のままロットに身柄が引き渡されたことで、ご存じの通りルカ様が至上様であると魔界中に流布されております。また、ルカ様は封印から解放後、以前とは比べ物にならないほど魔法を扱えるようになられたため、現在は至上様としての公務を実行していただいております」
「へえ~! もう至上様として働いてんだ、ルカくん。すごいねえ。もしかして力も至上様クラスに戻ってるの?」
「一般的な魔法はできるようにはなったんですけど、至上様としてはまだまだです。今は至上様としての生活に慣れるために、色々仕事をさせてもらってる状況で」
「目まぐるしい成長でございますよ。あの顕現をきっかけに、内なる至上様のお力を使えるようになってきたのだと推察しております」
「結局ルカさんはルカさんだけど、ルカさんの中には至上様がいるってこと?」

 ラルフ王子が俺を見て首を傾げる。確証のない笑みで「たぶん」と答えると、イリスさんが俺を見て頷いてくれた。

「私はそう認識しております。おそらくルカ様の身に危険が差し迫ったことで、内なる至上様が顕現されたのかと。どうして至上様がルカ様の人格にお隠れになったのかわかりませんが、表裏一体の存在なのだと思います」

 俺の中にいる至上様。
 彼が表に出てきたことで、反逆者たちを封殺することができた。魔界の大混乱を防いだのはまさに至上様の力があってこそだった。

「俺、封印されてからのこと何も覚えてなくて。何が起きたのか何も。至上様には助けてもらって感謝してるんですけど……。至上様と俺が同一存在なら……俺があの場で人を殺めたってことですよね」

 此度の反乱を粛清し、さすが至上様だと賞賛と畏怖を受け続ける間、ずっと心に引っ掛かっていたことを、俺は初めて吐露した。
 封印された後のことは何も覚えていなかった。気づけば血塗れのダン王子が俺を抱きしめていた。それでも周囲を見れば、多数の人間が死んだ跡があるのは嫌でもわかった。具体的に何があったのかは、ダン王子もイリスさんも教えてはくれなかったけど。
 俺が俯くと、ダン王子が息を吐くのが聞こえた。

「お前ではない。内なる至上様、というやつがやったことだ。罪の意識はそっちに負わせておけばいい。それに大多数は生き残った。至上様があのまま皆殺しにしていれば、王は我が国の汚点を隠そうとしただろう。生き残らせたのは正解だ」
「そう……ですかね」
「そうだ。もう気にするな、辛気臭くなるだけだ」

 堂々と言い切られ、俺は思わずフッと笑ってしまった。まだダン王子ほどあっさりとは捉えられないけど、少し心が軽くなる。

「ディタも……生きて罪を償える。いつか面会に行ってやれ」
「……はい。絶対会いに行きます」

 ダン王子に頷き返したところで、クシェル王子が珍しく真剣な表情で俺を見た。

「ルカくん。改めてディタのこと、生かしてくれてありがとう。あいつはどうしようもないことをやったのに、こんな礼はおかしいんだろうけど。でも俺は本当に感謝してる」
「いや、そんな……。俺も、ディタの命が助かってよかったと思ってます。どうしても……悪い人には思えないから」

 俺の言葉にクシェル王子が黙ってしまって、湿っぽい空気が落ちる。気まずくなる寸前、マーティアス王子が軽く咳払いをした。

「ルカ様が至上様人格のままだったら、あの森で誰ひとりとして生き残っていなかったと思います。至上様が関わった事象としての被害は最小限ですし御の字でしょう。至上様が今まで手にかけてきた人数からすれば、ないようなものですよ」
「マーティアスくん、それフォローになってるの?」
「でも大惨事にならなかったのは、ダンとルカさんのおかげ」

 ラルフ王子が笑いかけてくれて、俺も笑みを返した。

「まだまだ力不足ですけど、俺は至上様として、魔界の平和に貢献したいと思っています。誰でも生きやすい世界にしたい。だから顔を隠して畏怖の存在として君臨するんじゃなくて、みんなが知ってる至上様に……なりたいです」
「ルカ様……」

 イリスさんが感極まったように目元を押さえている。王子たちも温かい眼差しを向けてくれて、じわじわと顔が熱くなってくる。

(宣言するの、恥ずかしいな……)
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